著者
村上 覚史 金澤 美緒 村田 亮 関口 真樹 大場 剛実
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.65-69, 2013-01-20

廃用牛における腸管内細菌の生体内移行(bacterial translocation:BT)を解明するため,廃用牛12 頭の臓器を細菌学的,病理学的及び免疫組織化学的手法を用いて調べた.その結果,腸間膜リンパ節(MLN)の91.7 %,肝臓の100 %及び脾臓の66.7%から腸管内細菌が分離された.グラム陰性菌では,Escherichia coliがMLN の16.7%及び肝臓の8.3%から,Klebsiella pneumoniae とPseudomonas aeruginosa が肝臓の8.3%から分離された.グラム陽性菌では,Bacillus 属,Enterococcus 属あるいはStreptococcus 属及びStaphylococcus 属が分離された.S. aureusの分離率はMLN で8.3%,肝臓で25 %,脾臓で8.3%であった.抗E. coliポリクローナル及び抗S. aureus抗体陽性抗原は両菌種が分離された臓器から免疫組織化学的手法で検出された.病理組織学的所見では,多くの検査牛の脾臓濾胞周縁帯に好中球集積層が出現し,MLN 及び脾臓の濾胞にセロイド顆粒の蓄積が目立った.これらの成績から検査した肝臓に異常がみられた廃用牛でBT 及び消耗状態が確認された.
著者
村上 覚 末松 信彦 中村 新市 杉浦 俊彦
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.184-192, 2008-09-01
被引用文献数
1 1

2001年度から2004年度の4年間,南伊豆地域8か所で調査した開花日(2分咲き日)と気温29 組に基づき,気温を説明変数とする単回帰による方法,温度変換日数法,オウトウの自発休眠覚醒予測式を利用して休眠を考慮に入れた方法により南伊豆地域の'カワヅザクラ'の開花予測を試みた.それぞれの方法で算出した推定開花日と実際の開花日との差を二乗した平均値の平方根(RMSE)を計算した結果,単回帰による方法では7.36,温度変換日数法では7.94,休眠を考慮に入れた方法では12.22という結果となり',カワヅザクラ'の自発休眠覚醒期をオウトウの予測式を用いて推定することは困難であった.単回帰による方法では「カワヅザクラまつり」の主会場である河津町田中では約5日,「みなみの桜と菜の花まつり」の主会場である南伊豆町青野川堤防では約4日であった.'カワヅザクラ'の開花期間が比較的長いことを考慮に入れると,現場での活用が期待される.しかし,誤差は大きいので,今後も開花予測法については検討することが必要と考えられた.
著者
村上 覚 神谷 健太 鎌田 憲昭 山田 晋也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.315-320, 2012-07 (Released:2013-10-08)

ニホンスモモとウメの種間雑種'李梅'の安定生産に向けた知見を得るため,'李梅'のS-haplotypeおよび受粉品種について検討した。'李梅'のS-haplotypeを分析した結果,'李梅'のS-RNase遺伝子はサイモンスモモおよびウメからそれぞれ由来している可能性が高いと考えられた。サイモンスモモはニホンスモモの近縁種で,ニホンスモモと交雑和合性がある。これらのことから,'李梅'はウメだけではなくニホンスモモに対しても,S-haplotypeに関わらず,交雑和合性がある可能性が示唆された。実際にウメ,ニホンスモモ,アンズおよびモモ花粉を用い,'李梅'に人工受粉を行うとウメ,ニホンスモモおよびアンズ花粉では交雑和合性が確認された。特にウメ'宮口小梅',アンズ'平和'は花粉量が多く,花粉稔性が高いうえに,'李梅'と高い交雑和合性を示したので,人工受粉の花粉親として優れていると考えられた。このため,'李梅'においてはこれらの花粉を用いて人工受粉を行うことで,安定的に収量が確保できる可能性が示唆された。
著者
村上 覚 種石 始弘 鈴木 公威 佐々木 俊之 橋本 望
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.117-125, 2019 (Released:2019-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

開花期が早い ‘レインボーレッド’ においても自然受粉を可能とする雄品種として ‘にじ太郎’ を育成した.‘にじ太郎’ は ‘レインボーレッド’ の偶発実生から選抜した二倍体品種である.花粉品質は,酢酸カーミン染色率はやや低いものの,発芽率は他品種と同程度であった.一方で,‘トムリ’ と比べると,採葯量および採取純花粉量は少ないため,花粉採取用としては適さないと考えられた.‘にじ太郎’ の花粉で受粉した ‘レインボーレッド’ 果実は,‘トムリ’ 花粉で受粉した果実と比べて,結実率や果実品質に差はみられなかったものの,黒色の充実した種子が増えた.開花期は ‘レインボーレッド’ と重なるため,‘レインボーレッド’ を自然受粉させることができる.3年間の自然受粉栽培について検討した結果,1.0~1.5 mの1年生側枝を ‘レインボーレッド’ に高接ぎして配置した場合,枝から2 mの範囲内では概ね80%の結実率を確保でき,果実品質も比較的良好であったが,それよりも離れると結実不良や果実の肥大不良が懸念された.このことから,4 m間隔で ‘にじ太郎’ の枝を高接ぎし配置することが望ましいと考えられた.以上のことから ‘にじ太郎’ は ‘レインボーレッド’ の自然受粉に有効であると考えられ,‘レインボーレッド’ の安定生産に寄与することが期待できる.
著者
村上 覚 神谷 健太 鎌田 憲昭 山田 晋也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.315-320, 2012

ニホンスモモとウメの種間雑種'李梅'の安定生産に向けた知見を得るため,'李梅'の<i>S</i>-haplotypeおよび受粉品種について検討した.'李梅'の<i>S</i>-haplotypeを分析した結果,'李梅'の<i>S</i>-RNase遺伝子はサイモンスモモおよびウメからそれぞれ由来している可能性が高いと考えられた.サイモンスモモはニホンスモモの近縁種で,ニホンスモモと交雑和合性がある.これらのことから,'李梅'はウメだけではなくニホンスモモに対しても,<i>S</i>-haplotypeに関わらず,交雑和合性がある可能性が示唆された.実際にウメ,ニホンスモモ,アンズおよびモモ花粉を用い,'李梅'に人工受粉を行うとウメ,ニホンスモモおよびアンズ花粉では交雑和合性が確認された.特にウメ'宮口小梅',アンズ'平和'は花粉量が多く,花粉稔性が高いうえに,'李梅'と高い交雑和合性を示したので,人工受粉の花粉親として優れていると考えられた.このため,'李梅'においてはこれらの花粉を用いて人工受粉を行うことで,安定的に収量が確保できる可能性が示唆された.<br>
著者
村上 覚 末松 信彦 水戸 喜平 中村 新市
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.331-336, 2006 (Released:2006-09-25)
参考文献数
20
被引用文献数
11 10

伊豆半島を代表する早咲きザクラである‘カワヅザクラ’の南伊豆地域における開花期を調査し,開花日と気温との関係について検討した. 4年間の平均開花日(2分咲き日)は,気温が高く推移していた地点では早く,気温が低くする地点では遅くなる傾向を示し,南伊豆地域内においても約1か月の差が確認された.年次間差では4年間の調査で約2週間の違いがあった.開花期間は2分咲きから満開までが平均18日と比較的観賞期間は長かった.開花日(2分咲き日)と気温との相関は,11月下旬から12月上旬にあたる開花前51~70日以降の気温との相関が高かった.河津町田中と南伊豆町青野川堤防における‘カワヅザクラ’の開花状況には個体差 が確認され,地域内で長期間連続して開花を続ける性質が認められた.
著者
村上 覚 加藤 智恵美 稲葉 善太郎 中村 新市
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.132-136, 2007-09-01
被引用文献数
3 7

早咲きザクラである'カワヅザクラ'の自発休眠覚醒期と休眠解除に必要な低温要求量を調査した. 2003年度と2004年度のそれぞれ10月20日, 11月5日, 11月26日, 12月5日, 12月26日に河津町田中に植栽されている'カワヅザクラ'から切り枝し, 最低気温15℃の温室内に搬入して水挿しした. 花芽の開花率は10月下旬から12月上旬まで, 葉芽の展葉率は, 10月下旬から12月下旬まで, 温室への搬入が遅くなるほど上昇した. 開花率については11月5日処理と11月26日処理の間で明らかな差がみられ, 展葉率については11月5日処理と12月5日処理との間で明らかな差がみられた. このことから, 花芽の自発休眠は12月上旬には既に覚醒しており, 葉芽についてはそれ以降であることが明らかになった. また, 自発休眠覚醒に影響を及ぼす気温は他のサクラと比較して高いことが示唆され, これらのことが早咲きの一因と推察された.