著者
村松 容一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.398-401, 2011-08-20 (Released:2017-06-30)

環太平洋造山帯に位置する日本に火山性温泉が多いことはよく知られているが,近年温泉ブームを反映して,関東平野等の非火山地域で温泉開発が盛んに行われている。温泉水の多くは天水や化石海水起源であり,温泉水に含まれる溶存成分は起源となる水に由来するほか,地下を流動する過程で火山ガスを溶かし込み,また周辺の岩石と反応して,岩石中の各種物質を溶かし込んでいる。ここでは,地球科学的観点から,温泉に含まれる主要成分及び特殊成分の特徴を,起源と併せて概観する。
著者
谷口 無我 村松 容一 千葉 仁 大場 武 奥村 文章 山室 真澄
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.69, 2013 (Released:2013-08-31)

甲府盆地北東部の花崗岩体周辺では、近年、深部掘削による温泉開発が盛んに行われてきた。温泉の新規掘削や既存源泉の保護には、温泉水の起源や泉質形成機構を解明することが不可欠である。本研究では、当該地域に分布する非火山性温泉水を採取し分析するとともに、水-鉱物相互作用の化学平衡論による検証を実施し、温泉水の起源と泉質形成機構を考察した。温泉水のδD, δ18O値の特徴はいずれの温泉水も天水が起源であること示唆した。温泉水の泉質は、花崗岩地域では曹長石の風化に起因したNa-HCO3型であり、火山岩類の分布地域では曹長石の風化のほかに硬石膏の溶解、およびモンモリロナイトによるイオン交換作用が寄与し、Na-HCO3型、Na-SO4型、Na-HCO3・SO4・Cl型、Ca-SO4型と多様な泉質を示すと考えられた。
著者
村松 容一 岡崎 公美 大城 恵理 安諸 政俊
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.145-162, 2008-08-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
39
被引用文献数
2 2

関東平野中央部の非火山地域に分布する39本の深部温泉井を対象に,主要化学成分を分析するとともに,温泉井の掘削時に回収された岩片の構成鉱物をX線回折法で同定した.さらに,深部流体温度の推定法としてのシリカ地化学温度計の適用可能性を泉温と併せて検討した結果を踏まえて,水一鉱物相互作用の化学平衡論を用いて広域流動機構および水質形成機構を検討した.深部流体温度の推定には,カルセドニー地化学温度計よりも泉温を用いるのが適当である.難透水性の先新第三系基盤岩類(三波川帯,秩父帯,四万十帯)に賦存する断層規制型温泉の泉質はNa-Cl型とNa-HCO3型に属する.一方,上総層群および三浦層群相当層(新第三系と第四系)に賦存する岩相規制型温泉の泉質はNa-Cl型を主とし,一部にはNa-HCO3型も存在する.海水混合比および泉温の二次元分布は,深部流体が関東山地,利根川上流方面ないし足尾山地および八溝山地から地下に酒養された降水と40℃程度に加熱された化石海水の様々な割合の混合によって形成されたことを示唆する.深部流体はNa-モンモリロナイトとカオリナイトに対して過飽和状態にある.水質組成はNa-モンモリロナイトのMgイオン交換反応および斜長石の風化作用によるカオリナイト化に大きく影響されている.