著者
和田 博美 村田 和香
出版者
北海道高齢者問題研究協会
雑誌
高齢者問題研究 (ISSN:09111859)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-85, 2001-03

50,60,70,80歳代の入院中の高齢者群と20歳代の若年者群を対象に,時間作成法を用いて時間判断の調査を行った。対象者は3,6,30,60秒の時間間隔を,ブザーを鳴らすことによって作成するよう求められた。若年者群は3,6,30,60秒の時間間隔を正確に作成することが出来た。しかし高齢者群は30秒と60秒の作成時間が減少した。50,70,80歳代の作成時間は,20歳代の作成時間より有意に短かった。3秒と6秒に対する高齢者群の作成時間は増大したが,年代間に有意差はなかった。時間判断の加速率(客観的時間に対する主観的時間の比率)は,加齢が進むほど,求めた作成時間が長いほど増加した。しかも70歳代と80歳代の加速率は,これまでの報告よりもはるかに高かった。入院という体験によって身体,心理,社会面での主観的幸福感が低下し,時間判断に影響を与えていた可能性が示唆された。結論として高齢者群の主観的な時間経過は若年者群よりも速まり,主観的時間の加速化が起こっていることが明らかになった。主観的時間の加速化が生じた結果,高齢者は周囲の時間や出来事がゆっくり経過するように感じるのかもしれない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点は,高齢者群で有意に低かったが,いずれも正常範囲であった。
著者
和田 博美 村田 和香
出版者
北海道高齢者問題研究協会
雑誌
高齢者問題研究 (ISSN:09111859)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-85, 2001-03

50,60,70,80歳代の入院中の高齢者群と20歳代の若年者群を対象に,時間作成法を用いて時間判断の調査を行った。対象者は3,6,30,60秒の時間間隔を,ブザーを鳴らすことによって作成するよう求められた。若年者群は3,6,30,60秒の時間間隔を正確に作成することが出来た。しかし高齢者群は30秒と60秒の作成時間が減少した。50,70,80歳代の作成時間は,20歳代の作成時間より有意に短かった。3秒と6秒に対する高齢者群の作成時間は増大したが,年代間に有意差はなかった。時間判断の加速率(客観的時間に対する主観的時間の比率)は,加齢が進むほど,求めた作成時間が長いほど増加した。しかも70歳代と80歳代の加速率は,これまでの報告よりもはるかに高かった。入院という体験によって身体,心理,社会面での主観的幸福感が低下し,時間判断に影響を与えていた可能性が示唆された。結論として高齢者群の主観的な時間経過は若年者群よりも速まり,主観的時間の加速化が起こっていることが明らかになった。主観的時間の加速化が生じた結果,高齢者は周囲の時間や出来事がゆっくり経過するように感じるのかもしれない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点は,高齢者群で有意に低かったが,いずれも正常範囲であった。Four elderly-hospitalized groups in their 50s, 60s, 70s, and 80s, and a younger group, in their 20s, were examined on duration judgments using the production method. They were required to produce durations of 3, 6, 30, and 60 seconds by sounding a buzzer. The younger group judged accurate durations of 3, 6, 30, and 60 seconds. However, the elderly groups judged shorter durations in 30 seconds and 60 seconds, and significant decreases were found between the younger group and the 50s-, 70s-, and 80s-groups, respectively. The produced durations in 3 seconds and 6 seconds were longer for the elderly groups but they were not significant between ages. The duration judgment ratios (ratios of subjective durations to objective durations; DJR) became greater as a function of aging and the durations that were required to be produced. Moreover, the DJRs for the 70s-and 80s-groups were much higher than those of previous reports. It was suggested that hospitalization decreased subjective well-being physically, psychologically, and socially, and it affected duration judgments. Thus, subjective time passages for the elderly groups were faster than those for the younger one and the acceleration of subjective time clearly occurred for the elderly groups. As a result of the acceleration of subjective time, elderly persons might feel that objective time or events elapse slowly. The revised version of Hasegawa's Dementia Scale (HDS-R) scores were significantly lower for the elderly groups but they were all within normal levels.
著者
杉田 千秋 髙島 理沙 坂上 真理 村田 和香
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.32-39, 2019 (Released:2019-05-31)
参考文献数
9

介護老人保健施設は病院と在宅の中間施設だが,在宅復帰率は低い現状がある.本研究は在宅復帰困難な入所者が生活する中で抱く思いを明らかにすることを目的に,女性5名に半構成的面接を行い,質的記述的に分析した.その結果,【そばに人がいる施設生活への充実】,【緩やかなリハによる体の維持】,【在宅生活への見切り】,【家とは違った施設生活への歯痒さ】,【やっぱり家に帰りたいという願い】,【より快適な居場所探し】,【今後への漠然とした不安】の7つのメインテーマが生成された.全ての研究参加者は【今後への漠然とした不安】を抱いていた.セラピストは本人と共に‘今後’に向き合うことで,不安に対処できる可能性がある.
著者
工藤 梨紗 沼田 士嗣 村田 和香
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.473-480, 2015-08-15

要旨:養護老人ホームへの入所によって役割を喪失し,身体機能およびADLの低下が認められた脳出血後遺症をもつ70歳代女性に,本人が重要と感じている作業に従事することを支援した.提供された作業の成功体験を基に,その他の作業へも挑戦し役割を獲得することで,介助を受ける生活から積極的な生活を送るといった習慣の変化が生じた.この背景には,入院している「夫への報告」という意味のある作業が大きな影響を与えていた.作業療法の経過を振り返り,回数制限のある外来作業療法において,役割を獲得し習慣変化に影響を与える,意味のある作業への支援の重要性を考察した.
著者
田中 志信 村田 和香 山越 憲一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 生体情報の宅宅収集壮置の試作: 既に開発済みの心拍出量と血圧の無拘束同時計測システムに被測定者の姿勢状態を記録する簡易行動シナリオ計測を組み合わせたシステム(生体情報の在宅収集装置)を試作した。姿勢計測の角度分解能は約3゜、測定間隔は0.1,0.2,0.5秒で静止画表示・アニメーション表示・ヒストグラム解析などのが可能である。循環生理情報に関しては血圧・心拍出量と共に末梢循環抵抗、心拍数、一回拍出量が演算処理され24時間分のデータがトレンド表示される。健常成人を対象としたフィールド試用の結果、無拘束下で得られた循環動態の24時間計測値と被験者の各種行動・姿勢変化との詳細な対応付が可能であることが確認された。2. スペクトル析による循環生理機能の日内変動の解析: 健常成人を対象に1日目は通常の日常生活、2日目は終日ベッド安静という条件下で連続48時間の無拘束循環生理機能計測実験を行い、日常生活における行動様式が各パラメータに及ぼす影響を検討した。その結果、各パラメータともに概ね12時間及び24時間を主な周期とする日内変動が存在し、行動様式の違いは12時間周期に対してはあまり影響を及ぼさないものの概日周期に対しては大きく影響することが確認された。3. 高齢者を対象とした日常生活下における姿勢解析: 生活環境の異なる高齢者を対象とし日中約10時間の無拘束姿勢計測を行った。対象者は年齢71〜83歳の女性8名で、日常生活下における行動や活動性というものが客観的に評価可能であることが確認されるとともに、生活環境の違い、すなわち在宅か施設や病院で生活しているか、さらには同じ在宅でも単身か家族と同居かといった違いで、日常取る姿勢の種類や頻度、活動性に大きな差が見られることが客観的に示された。これらの結果から、何らかの障害を持つ高齢者の治療に際して「寝たきり」状態を惹起させないためには、障害の快復状況に応じて患者の生活環境をも考慮すべきであることが確認され、機能面の評価に加え、生活スタイル、生活信条をも把握したリハビリテーションプログラムの必要性が示された。