著者
東村 泰希
出版者
石川県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

低亜鉛血症は大腸がん発症のリスクとされているが、その分子機序は明らかでない。大腸がんの発症には慢性的な腸管炎症が関与する。申請者が施行した先行研究より、macrophage(Mph)において、細胞内亜鉛濃度の変化に伴い、インターフェロン応答型転写因子であるIRF5の細胞内局在が変化することを見出している。しかし、腸管炎症や大腸発がん過程におけるIRF5 の機能に関しては不明であった。申請者は本課題において、Mphが亜鉛欠乏状態に陥ることで、①IRF5の核内移行が促進→②炎症性サイトカインIL23p19の発現亢進→③炎症性リンパ球であるTh17の活性化→④大腸炎の増悪、という現象を明らかにした。
著者
大野木 宏 内藤 裕二 東村 泰希 宇野 賀津子 吉川 敏一
出版者
The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-93, 2015-09-30 (Released:2015-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

フコイダンは褐藻類に含まれる硫酸化多糖である.われわれは,これまでに北海道函館近海に生育するガゴメ昆布のフコイダンに注目して,その化学構造を決定するとともに,動物試験やin vitro試験において免疫賦活作用を明らかにしてきた.本研究では,健常成人の免疫機能に対する有効性や安全性を評価した.30名の被験者に4週間,ガゴメ昆布フコイダンを含む食品(1日あたりフコイダンとして200 mg)またはプラセボ食品を摂取してもらい,全血液細胞におけるサイトカイン産生能の評価を行った.その結果,プラセボ食品摂取群においては摂取前後で多くのサイトカイン産生能の低下が認められたが,ガゴメ昆布フコイダン摂取群ではその低下が抑えられ,特にIFN-γやIL-2などのTh1型のサイトカインにおいてその作用が顕著であった.また,血液検査,尿検査においては臨床上問題となる症状は認められず,有害事象も認められなかった.以上の結果から,ガゴメ昆布由来フコイダンは健常者の免疫機能の低下予防や維持に有効な,安全な食品であることが示唆された.
著者
東村 泰希
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.237-241, 2018 (Released:2018-10-19)
参考文献数
19

大腸がんや炎症性腸疾患をはじめとする大腸疾患群は, 大腸粘膜における酸化ストレスの蓄積や, それに起因した炎症病態を素地とすることから, 抗酸化経路の活性化に基づく炎症制御が肝要とされている。本研究では, 生体の持つ酸化ストレス防御機構と大腸炎発症に関する基礎的な研究を施行した結果, 大腸粘膜固有層に存在するマクロファージにおいて抗酸化経路の一つであるヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) を介した応答系を活性化させることが大腸疾患の抑制に効果的であることを動物実験により明らかにした。さらに, 食品由来因子を用いた応用的研究に関しては, アガロオリゴ糖がHO-1発現誘導を介して大腸炎を抑制することを明らかにした。また, マクロファージはHO-1の高発現により炎症抑制型であるM2型マクロファージへと形質分化することを見出した。以上より, マクロファージの形質分化制御に関する食品機能学的研究は, 食品因子を用いた大腸疾患予防を目指すうえでの新たな標的と考えられる。