著者
内山 巌雄 吉川 敏一 高野 裕久 谷川 真理 東 賢一 村山 留美子 東 実千代 萬羽 郁子
出版者
財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療法人社団医聖会百万遍クリニック・シックハウス外来の化学物質過敏症患者を対象に、居住環境調査、免疫機能評価、臭い物質による嗅覚負荷評価を実施した。その結果、症例群では自然免疫系の機能が高めであるにも関わらず、Th2優位の傾向はみられなかった。居住環境調査の結果、症例群では室内空気中の化学物質濃度が抑制されており、清浄な室内環境で日常生活を行うよう心掛けていることがうかがえた。嗅覚負荷評価では、症例群は前頭前皮質において臭い刺激に対して脳の活動が活発化した。化学物質過敏症患者では、臭い刺激に対して嗅神経系が過剰に反応しやすくなっていること、免疫機能に変化がみられることなどの特徴を明らかにした。
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013 (Released:2013-10-31)
被引用文献数
1

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した. 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した. 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった. 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.
著者
大野木 宏 内藤 裕二 東村 泰希 宇野 賀津子 吉川 敏一
出版者
The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-93, 2015-09-30 (Released:2015-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

フコイダンは褐藻類に含まれる硫酸化多糖である.われわれは,これまでに北海道函館近海に生育するガゴメ昆布のフコイダンに注目して,その化学構造を決定するとともに,動物試験やin vitro試験において免疫賦活作用を明らかにしてきた.本研究では,健常成人の免疫機能に対する有効性や安全性を評価した.30名の被験者に4週間,ガゴメ昆布フコイダンを含む食品(1日あたりフコイダンとして200 mg)またはプラセボ食品を摂取してもらい,全血液細胞におけるサイトカイン産生能の評価を行った.その結果,プラセボ食品摂取群においては摂取前後で多くのサイトカイン産生能の低下が認められたが,ガゴメ昆布フコイダン摂取群ではその低下が抑えられ,特にIFN-γやIL-2などのTh1型のサイトカインにおいてその作用が顕著であった.また,血液検査,尿検査においては臨床上問題となる症状は認められず,有害事象も認められなかった.以上の結果から,ガゴメ昆布由来フコイダンは健常者の免疫機能の低下予防や維持に有効な,安全な食品であることが示唆された.
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013
被引用文献数
1

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した.<br> 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した.<br> 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった.<br> 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.<br>
著者
吉川 敏一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.1870-1875, 2006-09-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
吉川 敏一 吉田 憲正 近藤 元治
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.413-421, 1993-09-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

Oxygen-derived free radicals are mainly produced by phagocytic cells and hypoxanthine-xanthine oxidase system at inflammatory site. These oxygen metabolites and lipid peroxidation have been implicated in cell damage, interactions with other inflammatory mediators and modulation of vascular response. It is very important to modulate free radical-induced inflammatory reaction in various organs by administration of radical scavengers and antioxidants.
著者
吉川 敏一 古倉 聡
出版者
医歯薬出版
雑誌
医学のあゆみ (ISSN:00392359)
巻号頁・発行日
vol.204, no.1, pp.20-23, 2003-01-04
被引用文献数
1
著者
高木 智久 吉川 敏一 内藤 裕二 吉田 憲正 古倉 聡
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ヒト炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎・クローン病)をはじめとした炎症性疾患に対する革新的な新規治療法の開発の試みとして一酸化炭素ガス(Carbon monoxide:CO)吸入曝露装置の開発、ならびに同装置を用いたCOガス吸入療法の効果の検討をマウス実験腸炎モデルに対して行った。1,CO曝露装置は研究協力者の森田亨(東京高圧株式会社)とともに行った。その概ねの構造は1000ppmのCOガスを純空気により分割希釈することによる濃度調節法を選択し、マウスゲージを収納できるアクリル製の大型の閉鎖飼育容器に曝露する方法をとった。ガスの排気は安全性を高めるため開放系の外気に希釈廃棄することとした。この装置を用いて検討したところ持続的に安定した一定濃度のCOガス曝露が可能になり、以降の検討に耐えうるものが完成した。2,マウス実験腸炎モデルとしてTrinitrobenzesulfonic acid(TNBS)腸炎モデルを用いた。その結果、COガス曝露群では非曝露群に対して有意に病変の形成が抑制されていた。また、大腸粘膜内の好中球浸潤や炎症性サイトカイン産生もCOガス曝露群にて有意に改善を認めており、COガス曝露による抗炎症効果が確認された。3,他部位の炎症病態におけるCOガスの効果を検証するために、代表的な関節炎症モデルであるマウス関節炎モデルを用いてCOガス吸入の効果を検証した。その結果、COガスの吸入により有意に関節炎の発症が抑制された。このことより、COは腸管炎症だけでなく関節炎においても充分に抗炎症効果を発揮するものと考えられた。以上の検討から、COガスによる腸管炎症を含めた炎症病態における炎症性御効果が明らかとなった。
著者
那須 裕子 岡垣 雅美 小林 ゆき子 馬引 美香 重村 智栄子 練谷 弘子 中野 貴美子 市川 寛 吉川 敏一 東 あかね
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.919-926, 2010 (Released:2011-04-22)
参考文献数
23

[目的]透析未導入の慢性腎不全患者に対する減塩指導を効果的に実施するために、塩分味覚障害の頻度と食習慣や服薬状況との関連を明らかにすることを目的とした。[方法]集団食事指導に参加した透析未導入の慢性腎不全患者のうち、有効回答を得た50名を対象者とした。濾紙法による味覚検査と食習慣など46項目にわたる自記式アンケートを実施し、身体状況および血液生化学検査値に関してはカルテを参照した。[結果]対象者の味覚障害の頻度は36%であり、味覚障害と食べる速さ、降圧剤であるアンギオテンシンII受容体拮抗剤の服用が有意に多かった。[結論]慢性腎不全患者に対して、食べる速さや降圧剤内服に関連する味覚障害に配慮して減塩指導する必要性が示唆された。
著者
内藤 裕二 落合 淳 吉川 敏一
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1233-1238, 2000-09-25

要旨 食道アカラシアは食道体部一次蠕動波の消失,下部食道括約筋の弛緩障害を特徴とする機能的疾患である.末梢神経には抑制性の非アドレナリン非コリン(NANC)作動性神経が存在し,一酸化窒素(NO),血管作動性腸管ペプチド(VIP),カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)がNANC作動性神経のneurotransmitterとして筋弛緩や蠕動運動に関わっている.L-arginineからnNOS(神経型NO合成酵素)により合成されたNOは,直接平滑筋細胞に作用してcGMPを産生し平滑筋弛緩させ,VIPはVIPレセプターと結合してNOSを活性化し,あるいはcAMPを産生し筋弛緩を起こす.CGRPの作用機序についてはいまだ不明である.食道アカラシア症例において,nNOS含有神経細胞の減少が観察されており,NO pathwayの解明は新規治療法につながる可能性がある.
著者
田中 治 西村 恒彦 山上 卓士 一条 祐輔 大内 宏之 大野 浩司 光本 保英 森 敬弘 吉川 敏一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.703-711, 2010-05-05
参考文献数
33

画像診断装置の性能向上および造影剤の進歩により,肝細胞癌の画像診断は近年飛躍的に進歩した.2008年1月に肝細胞特異性造影剤であるGod-EOB-DTPA(gadolinium ethoxybenzyl diethlenetriamine pentaacetic acid,ガドキセト酸ナトリウム;EOB・プリモビスト<sup>&reg;</sup>)が本邦で発売され,約2年が経過した.肝細胞機能評価のみならず,これまでの細胞外液性MRI造影剤の性能を併せ持っているために1回の検査で血流評価と肝細胞機能評価が同時に可能となり,肝細胞癌の診断,特に境界・前癌病変と癌との鑑別においてその有用性が期待される.<br>
著者
吉川 敏一 内藤 裕二 近藤 元治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1186-1191, 1995-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11

活性酸素は脂質,蛋白,核酸など生体の多くの分子を標的とし反応する.それゆえ多彩な活性を有し,組織障害性因子として炎症,虚血,癌といった病態生理に関与し,また,バイオシグナルとして種々の生理機能の調節も行っている.活性酸素は,環境因子のみならず多くの生体内酵素系,ミトコンドリアなどより生じるが,炎症,虚血疾患においては好中球の関与が極めて重要である.スーパーオキシドとnitric oxide(NO)との相互反応も重要であり,それらが同時に生じるような場では,その微小循環系への影響,細胞障害性の二面より検討する必要がある,このような活性酸素の動態を生体における抗酸化防御機構との関連で検討することは,疾患の病態解明,治療につながる可能性がある.