著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 鈴木 哲 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-94, 2010 (Released:2015-02-20)
参考文献数
18

電波防護指針に準拠した小電力24 GHzマイクロ波レーダーを使用して,高齢者を対象とした非接触の呼吸・心拍見守りシステムを開発した.寝具用マットレスの下部にレーダー装置を設置し,呼吸・心拍に伴う体表面の微振動を計測するシステムであり,精度を向上するため2つのレーダー出力信号を組み合わせる特徴をもつ.最大の課題は,目的とする微弱な呼吸・心拍信号を四肢などの不規則な体動信号から分離抽出することであった.呼吸信号最大値および心拍信号最大値を事前に設定し,その最大値より大きい信号を体動ノイズと判定し振幅減少するAutomatic Gain Control方式をFFT周波数解析の前処理として導入した.また,レーダー信号の出力電力強度から体動の継続を判定し,体動が継続していない時間帯の呼吸・心拍数をより信頼性の高い情報として区別することにより,全体として体動に強い高精度計測が可能となった.本システムを実際に特別養護老人ホームで評価し,非接触見守りシステムの有用性を確認した.高齢者の介護では,在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められており,本システムは高齢者安否確認システムの新しい方法として期待される.
著者
渡井 康之 松井 岳巳
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.54Annual, no.Proc, pp.3T5-3-6-1-3T5-3-6-2, 2016 (Released:2016-11-19)
参考文献数
4

To prevent heat stroke, we will develop a system to determine presence or absence of a rise in deep body temperature using physiological indices, i.e., heart rate, respiratory rate and body surface temperature. Prior to development, we conducted tests using ergometer for 15 min. with nine male students. We measured three physiological indices and deep body temperature for 15 min. with one-minute intervals after the exercise and conducted linear discriminant analysis by leave-one-out cross-validation. 37.5 degrees of deep body temperature was set as boundary and we classified heat stroke preliminary group from normal one. The sensitivity was 90.5% and the positive predictive value was 47.5%.
著者
佐々木 紀幸 香川 正幸 鈴村 和季 松井 岳巳
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.209-216, 2015-08-10 (Released:2015-12-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Disturbed sleep has become more common in recent years. To improve the quality of sleep, undergoing sleep observation has gained interest in an attempt to resolve possible problems. Additionally, the classification of real-time sleep states without interference is needed in nursing and medical settings. In this paper, we discuss a non-restrictive and non-contact method for estimating real-time sleep stages and report its potential applications and problems. The system we used measured body movements and respiratory signals of a person while sleeping using dual 24-GHz microwave radars placed underneath the mattress. We first determined a body movement index to identify wake and sleep, and fluctuation indices of respiratory intervals to indicate sleep stages. The data of movements and respiratory signals derived from 11 healthy university students were used for feature selection and training of the classification model parameters. For identifying wake and sleep, the rate of agreement between the body movement index and the result using the R & K method as reference was 83.5±6.3%. Five-minute standard deviation, a fluctuation index of respiratory intervals, had a high degree of contribution and showed a significant difference (p<0.001) among three sleep stages (REM, LIGHT, DEEP). Th e degree of contribution of the 5-min fractal dimension of respiratory intervals, a fluctuation index, was not as high as expected but showed a significant difference (p<0.05) between REM and DEEP. For validation, we applied canonical discriminant analysis to classify wake or sleep and to estimate the three sleep stages in two additional university students. The accuracy was 79.3% and 59.5% for classification of wake/sleep and 71.9% and 64.0% for estimation of three sleep stages. The novelty of this study includes measurements of body movements and respiration-induced body surface movements withh ighsensitivities using microwave radars, and systematic analysis of the indices of body movement and respiratory interval. The method allows easy measurement of sleep stages in nursing care and home settings and may be employed to increase the quality of sleep. Although we successfully estimated three sleep stages, the method requires further study to determine the five stages of sleep.
著者
吉田 悠鳥 香川 正幸 後藤 眞二 鈴木 哲 栗田 明 小谷 英太郎 新 博次 高瀬 凡平 松井 岳巳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.1, pp.S1_4-S1_10, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

人体にやさしい小電力のマイクロ波レーダーを使用して, 高齢者を対象とした非接触かつ非拘束な呼吸·心拍数モニタリングシステムを開発した. このシステムを実際に特別養護老人ホームで評価し, 高精度の呼吸·心拍数モニタリングシステムの実現とその有用性を確認した. 本論分では, 特に心拍信号の実時間上での迅速抽出について述べる. 寝具用マットレスの下部に周波数の異なる2つのレーダー装置を設置し, 呼吸·心拍に伴う体表面の微振動をドプラレーダーにより計測する. 得られる生体信号には, 呼吸動, 心拍動, 雑音が混在している. この中で安静時に, 最も振幅の大きな信号として現れる呼吸信号に着目し, 実時間上における信号平滑化の移動平均法を用いて呼吸信号を推定し, 原信号からその呼吸信号を減算することにより心拍信号, 心拍数を高精度に抽出した. 一方で, 高齢者の介護では, 在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められている. 高齢者にとって拘束感, 違和感がない本システムは, 新しい高齢者見守り支援システムとして期待される.
著者
鈴木 哲 松井 岳巳 安斉 俊久 孫 光鎬 菅野 康夫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,マイクロ波を用いた完全な非接触での生体計測手法を応用し,血圧変動を推定する手法の確立を目指すことを目的とした.手法の有効性の確認のための,①推定法の理論的検討,②システムの試作,③実験室内における試作したシステムの評価実験,を実施した.さらに,臨床的知見の蓄積とシステムの問題点の確認のため,④医療現場における心不全患者へ適用した実証実験,の4点の実施を目標とした.結果として,理論構築およびシステム試作,さらに評価実験を行い,ある程度良好な結果を得た.一方で,臨床的知見の蓄積のための調査については,安全性と精度に課題があったため十分な実施が出来ず見送る結果となった.
著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 鈴木 哲 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-94, 2010

電波防護指針に準拠した小電力24 GHzマイクロ波レーダーを使用して,高齢者を対象とした非接触の呼吸・心拍見守りシステムを開発した.寝具用マットレスの下部にレーダー装置を設置し,呼吸・心拍に伴う体表面の微振動を計測するシステムであり,精度を向上するため2つのレーダー出力信号を組み合わせる特徴をもつ.最大の課題は,目的とする微弱な呼吸・心拍信号を四肢などの不規則な体動信号から分離抽出することであった.呼吸信号最大値および心拍信号最大値を事前に設定し,その最大値より大きい信号を体動ノイズと判定し振幅減少するAutomatic Gain Control方式をFFT周波数解析の前処理として導入した.また,レーダー信号の出力電力強度から体動の継続を判定し,体動が継続していない時間帯の呼吸・心拍数をより信頼性の高い情報として区別することにより,全体として体動に強い高精度計測が可能となった.本システムを実際に特別養護老人ホームで評価し,非接触見守りシステムの有用性を確認した.高齢者の介護では,在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められており,本システムは高齢者安否確認システムの新しい方法として期待される.
著者
鈴木 哲 菅原 慶太郎 松井 岳巳 朝尾 隆文 小谷 賢太郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.25-31, 2013-02-15 (Released:2013-06-19)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本研究では呼吸と覚醒度の関係性を調査し,その応用の可能性を検討した.実験は睡眠時間や食事を統制した環境下で,自動車の運転を想定しステアリング操作を40分間行わせた.その間の脳波のα波帯域変化と呼吸数の経時的変化や,TimingとDrivingといった呼吸に関する指標,さらに呼吸波形の振幅面積や吸気の速度変化が最大となる時間などを調査した.その結果,一般的に関係性が指摘されている呼吸数などの変化だけでなく,吸気の変曲点位置変動の間(r=0.65)にも関係性があることを確認した.一般的な覚醒度に関する調査において付随的な指標として扱われることの多い呼吸にも覚醒度変化の影響があることを示すとともに,覚醒度推定精度を向上させるために,呼吸は重要な情報となりうることを示した.
著者
木戸 秀和 橋爪 絢子 馬場 哲晃 榛葉 俊一 松井 岳巳
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.1-8, 2015-12-23 (Released:2017-08-17)

自律神経の活動度を表す心拍変動指標(HRV)から,ストレス状態などの推定ができるといわれている.本研究は日常的なストレス管理を目的に,普及率の高いスマートフォンのカメラ機能を使って脈波計測ができ,HRVを算出できるシステムを開発した.本論では,2つの検証実験から,その実用性を評価した.まず,室内照明条件下(600lx)で,開発したシステムを用いた脈波の計測,およびHRVの算出を行い,心電図計測によって算出したHRVと比較した.次に,室内照明以外の光条件(0.2lx, 15000lx, 50000lx)で脈波を計測し,HRVを算出できるかを検証した.検証実験の結果,50000lx以外の光条件では,システムと心電図でのHRVの算出結果に強い相関が認められた(LF:r=1.0, HF:r=0.99, p<0.05).
著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 久保田 将之 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-36, 2011 (Released:2015-02-13)
参考文献数
23

2台の24 GHzマイクロ波レーダーを寝具用マットレスの下部に設置し,就寝中高齢者の呼吸・心拍を非接触に計測するシステムにおいて,被験者体位が絶えず変化する環境下で定常的に精度高く計測することを目的とする.レーダー計測における3つの課題,すなわちNull detection point問題,高調波・相互変調波による干渉,そして脈波振動面とアンテナの対向性問題に対処するため,2台のレーダー装置のそれぞれが有する直交I/Qチャネルにより構成される合計4チャネル出力から,ターゲット信号を最も的確に捕らえているチャネルを動的に選択する新方式を提案する.この際,チャネル選択の指標には各出力のFFTスペクトル形状,すなわち突出ピーク数とピーク値間比率との組み合わせからなるSpectrum Shape Analysis(SSA)の考えを導入した.試作システムを特別養護老人ホームにおいて高齢者を対象に評価し,頻繁な体位変更にも係わらず,就寝中8時間のホルター心電図との比較で高い相関係数(r=0.61~0.73)を確認した.また,従来方式と比較して有意な改善効果が認められた.本システムは,介護要員の需給ギャップが今後ますます大きくなる高齢社会において就寝中高齢者に負荷の少ない新しい呼吸心拍計測システムとして期待される.