著者
巖城 隆 佐田 直也 長谷川 英男 松尾 加代子 中野 隆文 古島 拓哉
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.129-134, 2020-12-24 (Released:2021-02-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

2011年から2019年に西日本各地で捕獲された4種のヘビ類(シマヘビ,アオダイショウ,ヤマカガシ,ニホンマムシ)の口腔から吸虫を採取した。これらは形態観察と分子遺伝子解析によりOchetosoma kansenseと同定した。この種は北アメリカのヘビ類への寄生が以前から知られているが,日本に生息するヘビ類での確認は初であり,今回の結果は新宿主・新分布報告となる。
著者
松尾 加代子 上津 ひろな 高島 康弘 阿部 仁一郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.35-40, 2016-06-30 (Released:2016-08-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2 13

岐阜県内で捕獲されたホンシュウジカ63頭およびニホンイノシシ30頭の筋肉について住肉胞子虫の調査を行ったところ,シスト保有率はそれぞれ95.2%および50.0%であった。ホンシュウジカおよびニホンイノシシから得られた住肉胞子虫のブラディゾイトは,いずれも馬肉の生食による住肉胞子虫性食中毒の原因とされる毒性タンパク質に対する免疫染色で陽性を示した。ニホンイノシシの筋肉からはHepatozoon sp.も検出された。分離株の18S rDNAの系統樹解析により,ホンシュウジカ由来住肉胞子虫株は遺伝的に多様で主に5つのグループに分類され,ニホンイノシシ由来のHepatozoon sp.はタイの野生イノシシ寄生マダニ由来のHepatozoon sp.と最も近縁であった。
著者
佐藤 宏 松尾 加代子
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-11, 2016 (Released:2017-07-28)

近年,野生鳥獣肉がジビエとして広く流通し利活用が進められてきている。地方自治体ならびに厚生労働省の下で衛生管理のあり方が議論され,ガイドラインやマニュアルが作成されて安心・安全な食としての流通態勢が整いつつある。野生鳥獣は自然からの恵みであるが故に感染症に関わる実態がよく分かっておらず,突発的な食中毒問題が消費段階で起こり得ることが懸念される。ここでは寄生虫症に焦点を当てて,いくつかの起こり得る問題を概説してみたい。取り上げる話題はトキソプラズマ症,住肉胞子虫症,顎口虫症,トキソカラ症,旋毛虫症,肺吸虫症,肝蛭症,槍形吸虫症,マンソン孤虫症,疥癬である。これら寄生虫症予防は家畜肉の消費と基本的に同様で,野生鳥獣肉の保存と取り扱いに注意を払い,加熱食品の喫食を心懸けることに尽きる。
著者
松尾 加代子 後藤 判友
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.638-640, 2013-09-20
参考文献数
8
被引用文献数
1

乳廃用牛ホルスタイン種30頭を用いて,心筋及びかた,リブロース,ばら,ももの5つの各部位に含まれる住肉胞子虫シスト保有数を比較した.検査した組織切片において,枝肉各部位のシスト陽性率は,心筋の100%に比べ,かた43.3%,リブロース33.3%,ばら33.3%,もも36.7%と枝肉各部位では低かった(<i>P</i><0.01).検出されたシスト数も枝肉では心筋に比べ有意に少なく(いずれの部位も<i>P</i><0.01),心筋で平均8.7個(範囲1~58)に対し,かた2個(1~5),リブロース1.1個(1~2),ばら1.9個(1~5),もも1.8個(1~5)であった.次に,県内の食肉処理施設の協力を得て,市販用にカットされた交雑種26頭及び黒毛和種30頭のもも肉部位について,シストの有無を検査した.その結果,交雑種ではシストは検出されなかったが,黒毛和種では5検体からシストが検出された(16.7%).切片当たりのシスト数は1個が2検体,その他はそれぞれ3個,8個,11個であった.本調査で検出されたシストはいずれも形態学的に<i>Sarcocystis cruzi</i>と同定された.