著者
新井 万里 松岡 克善 金井 隆典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.35-41, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

ヒトの腸管には数百種類,100兆個以上の腸内細菌が生息し,多彩な代謝機能による宿主へのエネルギー源供給,腸管上皮細胞や免疫細胞の分化や成熟化,腸内環境の恒常性維持,病原菌に対する感染防御などに関与している.腸内細菌叢は健康と疾患に深く関与し,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)や過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS),大腸癌などの腸疾患のみならず,生活習慣病,自己免疫性疾患,自閉症など腸管以外の疾患との関連性も指摘され,大きな注目を集めている.
著者
金井 隆典 松岡 克善 久松 理一 岩男 泰 緒方 晴彦 日比 紀文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.364-369, 2012 (Released:2012-03-05)
参考文献数
20

インフリキシマブ治療はクローン病治療に革命をもたらしたといっても過言ではない.しかし,治療経過中に効果が減弱するいわゆる二次無効について国内外で活発に議論がなされている.本邦でも,2011年,インフリキシマブの10mg/kgへの増量が承認され,二次無効症例に対して直接的な対処が可能になった.しかし,10mg/kg増量ですべての二次無効症例が再び8週間隔の維持治療で寛解を維持できるまで効果が回復するとは限らない.また,本邦では2番目に登場したアダリムマブとの治療優先に関する議論,アダリムマブ増量の議論,さらには本邦オリジナルな白血球除去療法,栄養療法との併用など,長期の寛解維持を達成させるための適切な薬剤選択,適切な増量のタイミングを明らかにすることが重要である.
著者
松岡 克善
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

腸管の慢性炎症性疾患であるクローン病の原因は未だ解明されていない。一方で、好中球NADPH oxidaseの先天性異常のために、好中球殺菌機能が障害される慢性肉芽腫症において、クローン病類似の消化管病変を発症することが知られている。このことは、好中球殺菌能の異常により、クローン病に類似した病態が発症し得ることを示している。そこで、好中球による腸内細菌に対する殺菌能の異常がクローン病の病態形成に関与している可能性を考え、クローン病患者の好中球機能異常を系統的に調べ、クローン病の病態への関与を明らかにすることを目的として下記の検討を行った。クローン病患者の末梢血好中球および腸管粘膜内好中球を用いて1) 細菌刺激によるサイトカイン産生能、2) 細菌貪食能3) 活性酸素産生能4) アポトーシス5) 抗菌ペプチド産生能について検討した。アポトーシス、細菌貪食能、活性酸素産生、抗菌ペプチド産生は健常人の好中球と差を認めなかったが、クローン病患者の好中球からのIL-6・IL-1E産生は有意に低下していた。以上より、クローン病では好中球機能が異常になっている可能性が考えられたが、今後さらにそのメカニズムや、病態への関与を検討する必要がある。