著者
佐野 友美 吉川 徹 中嶋 義文 木戸 道子 小川 真規 槇本 宏子 松本 吉郎 相澤 好治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.115-126, 2020-05-20 (Released:2020-05-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

目的:医療機関における産業保健活動について,現場での事例をもとに産業保健活動の傾向や実施主体別の分類を試み,現場レベルでの今後の産業保健活動を進めていくための方向性について検討した.対象と方法:日本医師会産業保健委員会が各医療機関を対象に実施した「医療機関における産業保健活動に関するアンケート調査」調査結果を活用した.自由記載欄に記載された現在取り組んでいる産業保健活動の記述内容を対象とし,複数名の専門家により各施設の産業保健活動の分類を試みた.特に,1.個別対策事例(具体的な取り組み事例・産業保健活動の主体)2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類の2点に基づき分類を行い,各特徴について検討した.結果:有効回答数1,920件のうち,581件の自由記載があり,1,044件の個別の産業保健活動が整理された.1.個別対策事例のうち,具体的な取り組み事例については,個別対策毎の分類では「B労務管理・過重労働対策・働き方改革(35.7%)」,「Cメンタルヘルス対策関連(21.0%)」,「A労働安全衛生管理体制強化・見直し(19.3%)」等が上位となった.また,施設毎に実施した取り組みに着目した場合,「B労務管理・過重労働対策・働き方改革関連」と「Cメンタルヘルス対策関連等」を併せて実施している施設が施設全体の13.2%に認められた.産業保健活動の主体による分類では,「a:産業保健専門職・安全衛生管理担当者(71.7%)」が最も多く,「b:現場全体(18.4%)」,「c:外部委託(2.4%)の順となった.2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類では①包括的管理(42.0%)が最も多く,②問題別管理(23.8%),③事例管理(16.5%)の順となった.考察と結論:医療機関における産業保健活動として,過重労働対策を含む労務管理・働き方改革,メンタルヘルス対策への取り組みが多く実践されていた.特に,メンタルヘルスにおける一次予防対策と過重労働における一次予防対策を併せて実施している点,外部の産業保健機関,院内の各種委員会,産業保健専門職とが連携し産業保健活動が進められている点が認められた.厳しい労働環境にある医療機関においても,当面の課題に対処しつつ,医療従事者の健康と安全に関する課題を包括的に解決できる具体的な実践が進められつつある.また,各院内委員会や外部専門家との連携によりチームとして行う産業保健活動の進展が,益々期待される.
著者
松本 吉郎
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.344-351, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
8

近年、職場での強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者が5割を超える状況がある。仕事によるストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者がその後も増加傾向にあり、メンタルへルス不調の防止が益々重要な課題となってきた。 こういった背景を踏まえ、平成27年12月より、「ストレスチェック」及びその結果に基づく面接指導を実施する制度が導入された。 日本医師会では、ストレスチェックの導入に伴う産業医の契約や活動の影響について把握することを目的として、平成29年3月1日から3月31日までアンケート調査を実施した。認定産業医(63,879人、2017年1月24日現在)から無作為に抽出した5,000人(抽出率7.8%)を対象に実施した。その4割を超える医師から回答を得、本調査結果から、ストレスチェックの導入に伴う現在の認定産業医が置かれている状況、ストレスチェック制度について考察する。 ストレスチェックはすでに法令で規定されたものではあるが、その有効性については多くの認定産業医から依然として疑問があるとする意見が本調査で示されている。今後、この制度を活用して職場でストレスを感じている労働者のうつ状態をはじめとする健康障害や就業困難な状況の防止や改善に役立つものにするためには、科学的な調査研究を実施して効果を検証し、この制度に必要な改善を行う必要があると思われる。その際には、実質的に関与している多くの産業医にとって、ストレスチェックに積極的に取り組むことが医師としての責任や時間的拘束を増大させるだけではなく、応分の報酬ややりがいにつながるような改善が図られることが望ましい。 現在、日本医師会産業保健委員会で検討を行っており、委員会からの提言については、将来厚生労働省に要望していきたい。
著者
吉国 好道 田上 八朗 松本 吉郎 井上 邦雄 山田 瑞穂 佐野 勉
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.289-295, 1985 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

角層へ水分をいかに効果的に補うかを目的として, 種々の外用剤が開発されている。私たちは基剤の性質によって角層の水分含有量はどのように影響されるか, それはどのような機序によって水分含有量を増しているかについて検討した。単純に角層へ水分を与えることを目的とした場合, 白色ワセリンのような皮表に油膜を作る基剤が下方へ水分を貯留せしめることにより最も優れていること,/W型乳剤性軟膏の場合, 時によっては逆に皮表角層の乾燥を生じる可能性があることを示したO 。ストリッピングにより角層の水分含有量を立体的に解析したが, これは角層水負荷試験とともに, 外用剤の評価や病的角層の分析に役立つものと考えた。
著者
佐野 友美 吉川 徹 中嶋 義文 木戸 道子 小川 真規 槇本 宏子 松本 吉郎 相澤 好治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2019-010-B, (Released:2019-10-26)
被引用文献数
2

目的:医療機関における産業保健活動について,現場での事例をもとに産業保健活動の傾向や実施主体別の分類を試み,現場レベルでの今後の産業保健活動を進めていくための方向性について検討した.対象と方法:日本医師会産業保健委員会が各医療機関を対象に実施した「医療機関における産業保健活動に関するアンケート調査」調査結果を活用した.自由記載欄に記載された現在取り組んでいる産業保健活動の記述内容を対象とし,複数名の専門家により各施設の産業保健活動の分類を試みた.特に,1.個別対策事例(具体的な取り組み事例・産業保健活動の主体)2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類の2点に基づき分類を行い,各特徴について検討した.結果:有効回答数1,920件のうち,581件の自由記載があり,1,044件の個別の産業保健活動が整理された.1.個別対策事例のうち,具体的な取り組み事例については,個別対策毎の分類では「B労務管理・過重労働対策・働き方改革(35.7%)」,「Cメンタルヘルス対策関連(21.0%)」,「A 労働安全衛生管理体制強化・見直し(19.3%)」等が上位となった.また,施設毎に実施した取り組みに着目した場合,「B労務管理・過重労働対策・働き方改革関連」と「Cメンタルヘルス対策関連等」を併せて実施している施設が施設全体の13.2%に認められた.産業保健活動の主体による分類では,「a:産業保健専門職・安全衛生管理担当者(71.7%)」が最も多く,「b:現場全体(18.4%)」,「c:外部委託(2.4%)の順となった.2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類では①包括的管理(42.0%)が最も多く,②問題別管理(23.8%),③事例管理(16.5%)の順となった.考察と結論:医療機関における産業保健活動として,過重労働対策を含む労務管理・働き方改革,メンタルヘルス対策への取り組みが多く実践されていた.特に,メンタルヘルスにおける一次予防対策と過重労働における一次予防対策を併せて実施している点,外部の産業保健機関,院内の各種委員会,産業保健専門職とが連携し産業保健活動が進められている点が認められた.厳しい労働環境にある医療機関においても,当面の課題に対処しつつ,医療従事者の健康と安全に関する課題を包括的に解決できる具体的な実践が進められつつある.また,各院内委員会や外部専門家との連携によりチームとして行う産業保健活動の進展が,益々期待される.