- 著者
-
松本 良恵
神 信人
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.15-27, 2010 (Released:2010-08-19)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
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現実の社会では,社会的ジレンマはリーダーが非協力者を罰し,メンバーがそうしたリーダーを支援すると言う相互依存関係を通して解決されていると考えられる。この研究の目的は,進化ゲームシミュレーションを用いて,そうした相互依存関係がリーダーとメンバーの間に生まれる条件を明らかにすることにある。我々のシミュレーションでは,20の集団が設定されており,集団はそれぞれ20人のメンバーと1人のリーダーで構成されていた。リーダーは,自分の集団内の非協力者と,自分をサポートしない者を罰することができた。コンピュータ・シミュレーションの結果,ある条件が満たされる時に,非協力者とリーダーを支援しない者の両方を罰するリーダーが出現し,それにより多くのメンバーが協力とリーダーへの支援が強いられることで,社会的ジレンマは解決された。その条件とは,リーダーは個人的利益と集団利益の両方を高めないと,その地位を維持できないというものである。