著者
澤田 学 山本 康貴 浅野 耕太 松田 友義 丸山 敦史
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,各種の表明選好法を社会的関心の高い食品安全性問題に適用し,分析対象とした安全性・環境対応に係る属性に対する支払意志額(WTP : Willingness to Pay)の計測を通して,わが国消費者の食品安全性に対する選好の構造を実証的に明らかにした.分析対象とした具体的な属性は,(1)原産地や遺伝子組換え原料情報(地場産牛肉,生鮮野菜の原産地表示,遺伝子組換え作物の含有率),(2)牛乳製造に関するHACCP認証,(3)サルモネラ食中毒(サルモネラ・フリー卵),(4)トレーサビリティ(生鮮野菜,牛肉),(5)農業生産における環境負荷情報(家畜ふん尿処理対策,野菜の有機など特別栽培方式)である.分析の結果,HACCPラベル付加牛乳は,通常製品の価格よりも5〜10%高い評価を得ること,地場産牛肉の価値を高める第1の要因は,新鮮さで,次いで,安心,おいしさ,廉価性,安全性の順であること,ミニトマトのトレーサビリティに対するWTPは有機栽培野菜に対する評価額の4割程度であること,牛肉のトレーサビリティに対するWTPは牛肉購入価格の5%前後であること,非遺伝子組換え枝豆に対するWTPは遺伝子組換え作物含有率表示に影響を受けるが,含有率のある程度の減少幅については同一のものとみなされていること,せり実験による食品安全性に対する消費者のWTPは,新たに開発したネットワーク型のせり実験システムにおいて安定的で精度の高い結果が得られること,などが明らかにされた.表明選好分析では,被調査者からアンケート調査や実験によって食品安全性やグリーン購入に対する支払意志額を表明させるため,アンケート質問票の内容や実験環境が分析結果に大きく影響する.本研究では,分析課題にそって体系的に回答者の選好表明を引き出すように綿密・周到に設計されたアンケート質問票およびせり実験方法も公開した.
著者
松田 友義 中村 隆
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.213-220, 1993-03-25 (Released:2018-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
松田 友義
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.720-730, 2013-07

東日本大震災直後の原発事故によって,放射性物質による食品汚染が危惧され,いわゆる「風評被害」が発生,その影響が未だに残っている。残念ながら,今のところこれを避けるための有効な手立ても見つかっていない。「風評被害」のやっかいなところは,往々にして過剰反応に繋がるというところである。一人の生産者が誤って残留基準値以上の農薬に汚染された農産物を出荷すると,殆どの場合,その生産者が所属する産地の農産物が忌避されてしまう。ときにはまるで別の産地の同じ農産物まで避けられたりする。中国産冷凍餃子事件の際に,冷凍餃子ばかりか生餃子までもが忌避され,挙げ句に冷凍食品全体の需要が冷え込んだのが良い例である。「風評被害」の対象となる産地が,県を超える地方にまで拡がったり,似たような食品にまで拡がったりするのである。放射性物質による食品汚染の「風評被害」が被災県以外に,汚染の実態に関わらず広く東北・北関東全域にまで拡大したのも,そうした消費者行動の結果といえる。通常,「風評被害」は根拠のない情報,不確かな情報に踊らされた消費者,もしくは流通関連業者が悪い,と言うようにして語られる。しかし本当に消費者が悪いのだろうか?消費者には自分が購入する商品を選択する権利がある。言葉を換えると,何を買おうと非難される筋合いではないということもできる。原子力損害賠償紛争審査会が2011年8月に公表した「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」では「風評被害」は以下のように定義されている。「いわゆる風評被害については確立した定義はないものの,この中間指針で風評被害とは,報道等により広く知らされた事実によって,商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念した消費者又は取引先により当該商品又はサービスの買い控え,取引停止等をされたために生じた被害を意味するものとする」。
著者
松岡 延浩 今 久 松田 友義 木村 玲二 神近 牧男 王 秀峰 井上 京
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,砂漠化とは本来気候的に決まる「気候生産要因(Climatic Production Factor)」が,農業・牧畜業による人為的因子(農業形態,牧畜形態)などの「阻害要因(Inhibition Factor)」を上回っている場合に植生は安定しているが,「阻害要因」が「気候生産要因」上回った場合に砂漠化が発生するという仮説を立てた。それの従って,砂漠化の危険度を評価するため,地点毎の「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルを作成した。阻害要因としては「土壌水分量」,「放牧強度と土地利用」を取り上げた。研究組織を以下の3班に分けて,砂漠化ハザードマップ作成に必要な「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルの妥当性の検討とハザードマツブ作成を行った。メッシュデータ整備班(松岡,王)研究期間に整備された自然的要因に関するデータを用いて,「気候生産要因」メッシュデータの作成を行った。また,メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域現地の気象データの再収集および地表面分類のグランドトゥルースを行った。農作業調査班(今,神近,木村,松田,井上,中野)観測期間内に,「阻害要因」のモデル化とメッシュ化を行った。メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,農業形態,特に作物の種類,栽培方法,灌概水量の聞き取り調査を行った。同時に,農業形態には,農家の経営状況が大きく影響するため,経営状況のメッシュ化を松田を中心に再検討した。牧畜調査班(小林,松田,野島)上記に出作成されたメッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,砂漠化指標の1つである植生量と構成植物種に対する家畜密度の影響を,再度植生調査と聞き取り調査した。以上の結果を取りまとめ,黄河流域の10kmメッシュを作成して,現地地方政府など普及機関に配布するとおもに農牧畜民の砂漠化に対する教育普及に供試することができた。