著者
小林 克也 北野 博司
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-21, 2013 (Released:2021-03-17)

山形県高畠町に所在する高安窯跡群では,7 世紀後半~ 8 世紀初頭に操業されていた須恵器窯跡が5 基と,9 世紀後半~ 10 世紀前半の炭窯跡が1 基確認され,出土燃料材と窯体構築材の樹種と復元直径,年輪数の分析を行なった。須恵器窯跡では,最も谷奥に位置し古相を示すC1 号窯跡では復元直径10 cm 以下のイヌシデ節やカエデ属などが多くみられ,群内で新相を示すB1・B2 号窯跡では,復元直径10 cm 以上のマツ属複維管束亜属が多くみられた。これは,一見すると窯業活動に起因するマツ属複維管束亜属の増大にみえたが,年輪数では,マツ属複維管束亜属は樹齢を重ねているものが多く,古くから生育していた樹木であった。よって高安窯跡群では,燃料材として復元直径10 cm 以内の広葉樹を伐採していたが,広葉樹がなくなると,丘陵尾根部などに生育する復元直径10 cm 以上のマツ属複維管束亜属を伐採利用していたと推測される。そのため最後に操業が行われたB2 号窯跡の操業終焉時には,燃料材に適した太さの樹木は無くなり,燃料材の枯渇が須恵器窯跡終焉の契機となった可能性がある。炭窯跡では,コナラ属コナラ節のみを窯跡周辺の自然植生から伐採利用していた。復元直径や年輪数の計測では,炭窯跡には利用木材に対して一種の規格のようなものがあった可能性があり,須恵器窯跡終焉から約200 年後には,周辺植生から良質の木材を選択できるほどに植生が回復し,炭窯跡の操業が行われていたと考えられる。
著者
角嶋 直美 矢作 直久 藤城 光弘 井口 幹崇 岡 政志 小林 克也 橋本 拓平 小俣 政男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1266-1271, 2005-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【背景と目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の登場により,従来では考えられなかった大型病変も内視鏡的に治療されるようになってきた.しかし,ESDによって生じた大型人工潰瘍の治癒過程についての詳細は明らでかはない.そこで,ESD後の治癒過程を明らかにするため,経時的な内視鏡像の検討を行った.【方法】当科においてESDによって治療された胃粘膜内腫瘍70症例を対象として,ESD後潰瘍の治癒過程および瘢痕形態を,切除サイズ,部位,胃壁の断面区分別に検討した.内視鏡観察は,原則としてESD後1,4,8,12週目に行い,抗潰瘍治療として,プロトンポンプ阻害薬(PPI)及びスクラルファート通常量を投与した.【結果】ESDの切除サイズは平均34.7mm(20.0~90.0mm)であった.ESD後潰瘍は切除サイズや部位・周在によらず,全例において8週までにS1-2stageに治癒・瘢痕化した.【結論】ESD後潰瘍は大型のものでも,消化性潰瘍と同様の治療で術後8週以内に治癒・瘢痕化する.これらは,ESD後のフォローアップや治療計画の立案に非常に有用な知見と考えられた.
著者
田中 智大 橋本 直明 関川 憲一郎 大久保 政雄 小林 克也 松浦 広 光井 洋 鈴木 丈夫 岸田 由起子 山崎 一人 薬丸 一洋 田村 浩一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.574-580, 2008 (Released:2009-01-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は75歳,女性.65歳時に胃癌にて幽門側胃切除術を受けた.微熱と肝機能障害で近医より紹介受診.来院時,肝胆道系酵素の上昇を認めた.ウイルス性肝炎および自己免疫性肝炎は否定的だった.単純CTで肝および脾のCT値が著明に上昇し,MRIでT1W, T2Wともに著明な低信号を認め,鉄沈着症を疑った.他臓器への鉄沈着を示唆する所見はなかった.血清鉄は210 μg/dlと高値,血清フェリチン値も6600 ng/mlまで上昇していた.生検した肝組織では,Kupffer細胞のみならず肝細胞内にも著明な鉄の沈着を認めた.患者に輸血歴は無かったが,胃癌術後の鉄欠乏性貧血に対し,鉄剤を断続的に約30カ月間静注された既往があり,その前後でのCT所見に変化を認めた.二次性鉄過剰症(続発性ヘモクロマトーシス)と診断し,デフェロキサミン500 mgの筋肉注射を開始,その後瀉血療法を併用し血清フェリチン値は1199 ng/mlまで改善した.鉄剤静注継続の際に注意すべき病態である.