- 著者
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林 奈津子
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.83, no.4, pp.418-427, 2010-07-01 (Released:2012-01-31)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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静岡県西部の太田川下流低地において,1944年の東南海地震の際に生じた,噴砂地点と微地形・浅層堆積物との関係を考察した.液状化現象は一般的に,砂質の堆積物で構成される地表の微地形に対応して発生するとされるが,対象地域では局所的に後背湿地に集中して発生する場合がみられた.調査地における表層堆積物について検討したところ,後背湿地を構成する粘土-シルトの細粒堆積物の下位に,砂質シルト-砂の粗粒堆積物が検出され,噴砂地点の分布と対応することが明らかになった.さらに,この粗粒堆積物は遺跡で検出された埋没旧河道の両岸に認められ,地表の自然堤防構成層と同様の層相であるという特徴をもつことから,埋没した自然堤防構成砂層である可能性が高い.また,この自然堤防構成砂層が母材となった噴砂痕が弥生後期の考古遺跡から検出されており,1944年の地震時には,地表の微地形を構成する堆積物に加えて,このような埋没自然堤防構成砂層が液状化したと考えられる.