- 著者
-
神田 忠仁
柊元 巌
- 出版者
- 日本ウイルス学会
- 雑誌
- ウイルス (ISSN:00426857)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.219-230, 2006 (Released:2007-04-20)
- 参考文献数
- 66
- 被引用文献数
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HPVは8000塩基対の環状2本鎖DNAをゲノムとする小型のウイルスで,エンヴェロープは無い.表皮基底細胞に侵入し,核内エピゾームとして潜伏持続感染する.感染細胞が表皮形成の分化を始めると,HPVゲノムの複製に利用するため,E6蛋白質がp53を分解し,E7蛋白質がpRbの機能を阻害して細胞のDNA合成系を再活性化する.通常ウイルス増殖後に感染細胞は死滅する.ごく稀に細胞DNAにE6,E7遺伝子が組み込まれ,ウイルス増殖ができないにもかかわらずE6及びE7蛋白質が継続的に高発現することがある.このような細胞は不死化し,さらに変異が蓄積して癌化する.100以上の遺伝子型のうち,このような機構で子宮頚癌に関わるものは16型や18型等の13の型(高リスク型)である.主要キャプシド蛋白質のみを細胞で高発現させると,自律的に集合してウイルス様粒子ができる.6,11,16,18型のウイルス様粒子を抗原とするワクチンの臨床試験が行われ,これまでの成績は型特異的な感染予防効果を示している.