著者
東 洋 柏木 恵子
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
Japanese Psychological Research (ISSN:00215368)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-26, 1987-02-25 (Released:2009-02-24)
参考文献数
4
被引用文献数
65

The purpose of this study was to examine the concept of intelligence among Japanese. Male and female college students, and mothers of female students were asked to think of an intelligent person, and to rate each of 67 descriptors according to whether it fits that person or not. It was found out that some of the descriptors were highly general regardless of the background of the person to be described, and that some were specific to the sex and other backgrounds of the person. As compared to the results of studies in the U.S., descriptors related to the receptive social competence tended to be associated with high intelligence, especially when the person to be described was a woman. The factor structure found in Japanese subjects which showed the predominant factor of social competence differed from that for Americans reported by Sternberg. Sex stereotyping in the concept of intelligence was also observed: Descriptors for a female target, compared those of a male target, were distributed more heavily in the domain of social competence and the reading and writing. Sex-role differentiation in concept was more pronounced in the responses of male students as compared to those of female subjects.
著者
柏木 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.193-202,253, 1967-12-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
6 3

パースナリティーの発達, ないし社会的適応のひとつの重要な側面である性役割学習過程が, 男・女の性に対してそれぞれどのような役割特性を認知しているかの面から問題とされた。ことにとれが自我に目覚めて外的権威に反発する時期を経て社会的人間へと転じてゆく青年期にどのような変化をたどるか, また自身の性によって認知のしかたにどんな相違があるかが検討された。性役割特性を示す形容詞群から成る質問紙を用い, 男・女両性についてそれぞれの特性がどの程度望ましいかの比較・評定を求めた。そこから男.女両役割得点および両得点差が求められ, 男女をどのような差で役割分化させているかが検討された。その結果, 次の諸点が指摘された。(1) 全34項目中10項目については, 全被験者群によって同様な結果が得られ, 被験者の性・年令の差を問わず認知のしかたにある共通する面の存在することが示された。(2) 一方, 他のいずれの群とも共通性をもたず特定の1群だけが性役割の分化にあたって有効とする特徴的な点もいくつかみられた。(3) 一般に, 男性に対しては役割特性が明瞭であり, 多くの特性が付与されている。これに比べて女性役割特性はより少なく, ことに年少段階では明瞭に認知されがたい傾向がある。(4) 被験者の性によって, 中学生から大学生にいたる問の年令による変動のしかたには相違がみられた。すなわち,(a) 男子では, 男・女両役割の分化の程度に著しい年令差があり, 年少段階ではわずかな特性でしか性役割は区別されておらず未分化である。年長になるにつれて男・女役両割はこまかく明瞭な差をもって分化してゆく。(b) 女子では, 男・女両役割を識別するのに有効な項目特性数に関しては年令差はみられない。しかし内容的にみると, 何が基準となって識別されているか, 女性役割特性が明瞭に積極的に捉えられているか, などの点で, 年長段階と年少段階との問には相違がある。(5) 低年令段階では男子と女子との間に認知のしかたに差があるが, 年長段階になると性差は小さくなり, 男・女群間の相違は小さくなる傾向がみとめられた。(6) 男・女両役割得点差と評定の絶対値との関係から各群の特徴が吟味され, 今後とるべきいくつかの分析方向が示唆された。
著者
柏木 恵子 永久 ひさ子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.170-179, 1999-06-30
被引用文献数
8

子どもの価値は普遍・絶対のものではなく, 社会経済的状況と密接に関連している。近年の人口動態的変化-人口革命は, 女性における母親役割の縮小と生きがいの変化をもたらし, 子どもをもつことは女性の選択のひとつである状況を現出させた。子どもは"授かる"ものから"つくる"ものとなった中, 子どもの価値の変化も予想される。本研究は, 母親がなぜ子を産むかその考慮理由を検討し, 子どもの価値を明らかにするとともに, 世代, 子ども数, さらに個人化志向との関連を検討することによって, 子どもの価値の変化の様相の解明を期した。結果は, 子どもの精神的価値として社会的価値, 情緒的価値, 自分のための価値が分離され, さらに子ども・子育てに関連する条件依存, 子育て支援の因子も抽出された。子どもの価値はいずれも世代を超えて高く評価されているが, より若い世代, 有職, 子ども数の少ない層では, その価値が低下する傾向と条件依存傾向の増大が認められた。家族のなかに私的な心理的空間を求める傾向-個人化志向は, 世代を超えて強く認められたが, 若い世代, 有職, 子ども数の少ない層でより強まる傾向が認められ, さらに, 子どもを産むことへの消極的態度と関連していることも示唆された。この結果は, 人口革命と女性のライフコースと心理との必然的関連, また子産みや子育てに関わる家族および社会規範との関連で論じられた。
著者
柏木 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.205-215, 1974-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
8 7

The purpose of this paper is to study the development of the concept of sex role in female adolescence from the cognitive side, and, in particular, to clarify the relationship between an adolescent's sex role concept and social sex role norm.Subject:The middle school, high school and university female students 100 from each group and 80 male university students.Methods:A questionnaire consisted of 21 items each of which described a sex-typed behavior or characteristicsis was used. This questionnaire was developed in previous studies.As for each item, subjects are required to rate its desirability for male and for female under the following two instructions:1. Do you think how much desirable is the charactersistics of this sort for male (or female)?2. Do you think how much is the characteristics of this sort expected for male (or female) in society?Results:1. Younger girls made distinct descriminations between the male role and the female role. As the age of the subjects increases the discrimination. between two sexes decreases greatly.2. The female university students perceive that the male role and the female role are perceived accurately and contrastingly.3. The largest discrepancies are found between adolescent's sex role concept and the social sex role norm in female university students.Conclusion:In general, older female adolescents are suggested to have some cognitive conflicts and difficulties in the formation of their sex role concept.
著者
平山 順子 柏木 恵子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-100, 2004-04-20
被引用文献数
1

本稿は、核家族世帯の中年期夫婦277組を対象に,夫婦間コミュニケーション態度をもとに夫婦のコミュニケーション・パターンの特徴を明らかにし,その様態が夫・妻それぞれの心理状態とどう関係しているか,またコミュニケーション・パターンの差をもたらしている要因を夫婦の経済生活及び結婚観との関連で検討した。主な結果は次のとおりである。(1)対象夫婦は,双方がポジティブな態度でコミュニケーションをしている「共感親和群」(36.5%),平均的で中立的なコミュニケーションをしている「平均中立群」(35.7%)、双方がネガティブな態度でコミュニケーションしている「威圧回避群」(27.8%)の3群に分類された。(2)共感親和群及び威圧回避群では,妻は夫に比べて夫婦関係満足度が低く,離婚思念度が高いことが明らかにされた。特に威庄回避群では夫と妻との得点差が他の2群に比べて大きかった。(3)夫婦の経済生活はコミュニケーション・パターンの違いと関連しており,片働き夫婦では平均中立群が多いこと,一方、妻の年収100万円以上の共働き夫婦では共感親和群が多いことが見出された。(4)夫婦のコミュニケーション.パターンと結婚観との関連を検討した結果,共感親和群の夫は平均中立群・威圧回避群の先に比べて,<相思相愛>及び<夫の妻への理解・支持>が顕著に高いことが明らかにされた。
著者
柏木 恵
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.250-271, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
36

本稿の目的は,英国ブレア労働党政権の医療改革がNHS財政にどのような影響を与えたかについて,健全性・公平性の観点から検証することにある。先進諸国は福祉国家として財政を維持するのが難しくなってきており,医療政策は重要課題であることと,橋本・小泉政権は英国保守党政権を参考にした部分が多く,ブレア政権をみることで,これからの日本がみえるのではないかと考えるからである。英国は2003年度に医療費を拡大したが,2004年度から赤字に転落し,2006年度にV字回復した。その原因は人件費の増大と予算配分の変更である。政権公約のうち職員増については目標以上に達成しており,これが財政赤字の原因でもあった。しかし一方で,医療費拡大で1人当たりの医療水準が上がり,低所得者が受けられる医療範囲が増え,公平性を高めていた。保守党政権は現金給付に力を入れていたが,ブレア政権は医療を含めた現物給付に力を入れていたことも明らかとなった。
著者
柏木 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.48-59, 1972-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
8 6

青年期における性役割の認知構造とその発達過程を明らかにすることを目的として, 質問紙法によって得られた資料について因子分析的手法による処理, 分析を行なった。その結果, 次の諸点が明らかにされた。1. 性役割識別の次元として男性役割に関する次元の第I因子 (知性), 第III因子 (行動力), 女性役割に関する次元の第II因子 (美・従順) が抽出された。2. 次元ごとの因子得点につきグループ間の差の検討を行なった結果, 行動力の次元がもっとも高く, 逆に美・従順の次元はもっとも低いことが見出された。3. 因子得点の平均および分布型から, 各次元の性役割識別性についての発達的変化が検討された。その結果, 行動力, 美・従順の2次元については有意な発達的変動はみられないが, 知的次元は, とくに男子において年齢段階による有意な変化が認められた。4. 性役割の認知パターンとその発達の仕方には, 男女により異なる特徴が見出された。すなわち, 男子は中学生では女性にも美・従順とともに知性も期待する複合的なものが, 高校以上になると, 男性には行動力と知性, 女性には美・従順という風に男女に対して分化した認知パターンが成立する。他方, 女子は, 男性に対しては行動力, 知性を期待するが, 女性に対する役割特性の認知は消極的で, 美・従順次元の性役割識別性は男子に比べて有意に低い。
著者
柏木 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.230-245, 1966-12-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
141
被引用文献数
1 1