著者
松原 秀也 丸田 頼一 近江 慶光 長友 大幸 柳井 重人
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.355-360, 1994-03-31
被引用文献数
6 9

本研究では,都市における巨樹の保全のあり方を探ることを目的とした。調査は住居系の土地利用が大半を占める東京都足立区花畑地域に残存する巨樹を取り上げ,所有者への意見聴取,住民へのアンケート,行政からの助直に係わる資料調査および意見聴取を行い,調査対象とした巨樹に対するそれぞれの意見や意識を調査した。その結果,所有者は周辺住民への落葉の影響を気兼ねはしているが,今後も調査対象木を保全していきたいと考えていることがわかった。管理に関しては,行政と所有者との意見や意識の差異が生じていた。また,調査対象木の近くの住民ほど,調査対象木との係わり合いが深くなり,関心も高まることが把握された。
著者
柳井 重人 保田 圭一 丸田 頼一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.273-276, 1995-03-31
被引用文献数
3 4

本研究では,住宅地における生垣等の囲障分布の実態と囲障に係わる住民意識との関連性等を明らかにし,生垣化推進に際しての問題点や課題を探ることを目的とした。調査対象地区は東京都大田区内の住宅地とし,現地踏査による囲障分布実態調査およびアンケートによる住民意識調査を行った。その結果,生垣の出現率は人口密度等の地域特性の相違によって異なること,ごく身近な接道部の緑の量は,住民の身近な緑の多少感や満足感に影響を及ぼし,それには生垣の存在が深く係わっていること等が把握された。さらに,生垣の所有者は,街並みとの調和等の美観の面での効果を生垣の利点として評価する一方,剪定等の維持管理を負担に感じていること等が把握された。
著者
柳井 重人
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究で,千葉市を対象に,(1)地区の環境特性に対応させた個別的なヒートアイランド対策のあり方,(2)ヒートアイランドが住民の屋外活動での快適感や健康に及ぼす影響,(3)ヒートアイランドが環境意識や生活行動に及ぼす影響を把握することを目的に実施した。第一に,土地利用や緑地分布等の環境特性と移動観測による気温分布に係わるデータをGIS上でデータベース化し,多変量解析の手法を用いて地区の類型化を行った。その結果,調査対象地域は7つに類型化され,それぞれの類型の地理的な分布はもとより,環境特性と気温分布との関連性に基づいた,地区スケールでのヒートアイランドの個別対策の方向性が示唆された。第二に,住宅地の街路や公園内の温熱環境を,不快指数(DI),SET*,WBGTの3種の指標に基づいて検討した。その結果,夏季日中の屋外空間は,総じて不快であり,熱中症予防の観点からは運動にも適していないこと,公園内の樹林地についてのみ夏服で胡座安静の状態であれば,不快のレベルには達しないという状況にあることなどが把握され,地域住民の野外活動において,蒸し暑さのような不快感や熱中症予防の面でのリスクが存在すること,緑陰の配置によりそれらが緩和される可能性があることが示唆された。第三に,臨海部よりの市街地中心部に位置し日中から夜間にかけてヒートアイランドが形成される地区と,郊外部に位置し夜間や早朝に低温域が形成される地区で住民意識調査を実施した。その結果,両地区間で,夏季の気象に係わる認識の程度,クーラーの使用時間,屋外行動の頻度などの差異が把握されたほか,ヒートアイランド対策に関しては,一般に,公園や街路樹の整備,木陰の創出,郊外部の樹林地の保全など,緑地の整備や保全を中心に認識が強いことが把握された。
著者
田代 順孝 木下 剛 赤坂 信 小林 達明 柳井 重人 古谷 勝則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度である平成18年度は,地区スケールの緑の配置計画の可能性について検討を行うとともに,これまでの研究成果をとりまとめて研究の総括とした。住宅地と街路空間を対象として放射エネルギー分布図を作成することにより,夏季の高温化を促進する土地被覆と冷却効果を持つ土地被覆を特定し,その効果を定量的に把握することができた。さらに,放射エネルギー分布図を利用して,温熱環境(または温熱景)制御のために,緑の配置によって蓄熱する景観要素をコントロールすることの可能性についての知見が得られた。中高木を植栽して緑陰を確保するとともに,土地被覆を芝生や裸地とすることで,地中への蓄熱を軽減することが予測された。また,表面温度と周囲の気温との温度差が大きく,放射熱伝達が大きい場合は発生源(各要素)から出る放射エネルギーに対して,適切な緑を配することで軽減できることが明らかとなった。さらに,熱帯地方における日影変化・樹木形態(樹種や植栽密度の違いによる)・緑陰効果からみた緑陰地の特性について検証し,温熱景制御に資する緑の配置パターン(植栽デザイン)について明らかにした。具体的には,緑陰エリアは日中,樹冠と同程度の最小限の日影をつくり出すことから,人々の活動をサポートするための緑陰空間は日中において特に考慮されるべきである。緑陰地の空間形態は樹木のサイズ(樹高と樹冠により中規模,大規模,極大規模)によって規定される。全緑陰(Full Shade)は密植(暗い緑陰と樹冠の重層)により形成され,非全緑陰(Not Full Shade)は疎林(やや暗い緑陰と樹冠の接触)によって形成される。また,分離植栽は緑陰を形成しない(樹冠が離れており地表は明るい)。葉と枝張りの密度の濃い緑陰樹は緑陰地のデザインにおいて特に適している。緑陰空間の特性は,熱帯地方の特に日中,太陽が南中した際に重要な役割を果たす日影に重要な影響を及ぼす。日影の継続は人々の活動に高い快適性をもたらすことができた。以上の結果から,温熱景制御に資する地区スケールでの緑の計画の在り方について有用な知見を得た。
著者
長友 大幸 丸田 頼一 近江 慶光 柳井 重人 松原 秀也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.265-268, 1995-03-31
被引用文献数
7 3

都市における巨樹の保護のあり方を検討することを目的に,個人所有の巨樹を取り上げ,研究を行った。調査地は,東京都区部にあり,住居系の土地利用が多く,個人所有の巨樹が残存する民有地数が多いということから,世田谷,杉並,練馬および板橋区を選定した。巨樹の所有者にアンケートにより,その意識を調べた結果,所有者は落葉による季節感や木陰を巨樹の利点としてとらえ,先祖代々受け継がれてきた地域の共有財産として保護していきたいと考えていた。しかし,落葉の処理および枝の剪定などの維持管理上の負担が問題点となっており,これらの問題点に対する実際的な労力の提供を,区が積極的に行っていく必要があるものと考えられた。