著者
柳川 洋一 杉浦 崇夫 阪本 敏久 岡田 芳明
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.62-66, 2006-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

症例は33歳の男性。重症破傷風に罹患し,筋弛緩剤と併用でデクスメデトミジンやプロポフォールで治療を行っていたが,副作用や強直抑制効果が乏しかったなどの理由で,21日間のマグネシウム大量投与療法を行った。同療法を施行中はある程度意思疎通を保つことができ,適当な筋弛緩作用と交感神経抑制作用も得ることができた。リハビリテーション後,第88日に退院となった。マグネシウム大量投与療法による破傷風の治療報告は本邦では初めてであるが,廉価で意思疎通がある程度保て,筋弛緩,交感神経抑制作用を有し,破傷風治療に有用と考えられた。
著者
柳川 洋一 後藤 清 越阪部 幸男 阪本 敏久 岡田 芳明
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.587-592, 2004-11-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
26

背景:排泄行為は循環動態に影響を与える。目的:トイレでの疾患発生状況を明らかにすること。方法:平成15年5月から1年間で,所沢市内のトイレで発症し,救急車の要請があった全症例(n=74)を対象とした。対象の性別,年齢,気温,トイレの様式,使用目的,搬送先の診断名に関して検討を行った。結果:性別は男性40例,女性34例,平均年齢は68±16歳であった。トイレの様式は洋式62例,和式2例,小便器2例,不明8例であった。使用目的は排便38例,排尿28例,不明8例であった。診断名に関しては中枢神経疾患23例,失神12例,消化管疾患11例,心疾患9例,ショック6例,心肺機能停止4例,その他9例であった。心疾患は失神と比較して,低温環境での発症が多かった。結語:中枢神経疾患を発症する危険性のある患者には円滑な排泄行為が行えるような対策,失神を生じやすい人には高温環境での排泄を回避する対策,心疾患に罹患している患者には低温環境での排泄を回避する対策をとる必要がある。
著者
柳川 洋一 柳田 茂樹 石川 浩史 大村 浩之 岡田 芳明
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.669-672, 1996-10-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

A 7-year-old boy accidentally swallowed a round fishing sinker (φ15mm). The sinker lead content was 99% or more. We could not introduce the sinker into his duodenum. The sinker was removed endoscopically 6 hours after the ingestion. The blood concentration of lead increased to 38.0μg/dl. This is the first report in which only 6hr retention of solid lead in the stomach elevated the blood lead concentration. Therefore, lead is a harmful metal even with only short term exposure. We recommend early evacuation or induction into the small intestine.

1 0 0 0 OA 雷撃症

著者
柳川 洋一 射場 敏明
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.395-402, 2011-08-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
50
被引用文献数
1

雷撃症は, 電撃症と比較して高エネルギーではあるが一瞬で, 人体の通過方法も異なる. したがってたとえ心肺機能停止症例でも適切な蘇生術を施すことにより転帰良好な経過を辿る可能性が高い. しかし, より重要なことは被雷を避けることである. 予見性に関しては, 従来は否定的見解が主流であったが, その認識は変わりつつある. すでに一部の組織からは避雷の指針が出されており, 屋外でのレクレーション続行可能か否かの参考となる. 雷光の視認や雷鳴が聴取可能な場合は被雷する可能性を考えて, 車内などの安全な場所へ避難すべきである.
著者
柳川 洋一 萩原 章嘉 西 紘一郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.168-173, 2008-03-15 (Released:2009-07-19)
参考文献数
13

42歳の女性が歯痛,発熱,下顎~頸部腫脹で近医を受診し,感冒と診断されたが症状が悪化し,当院に搬送された。来院時,敗血症性ショック状態であり,頸部と胸部の造影CTで頸部及び縦隔膿瘍,膿胸を示唆する所見を得たため,頸部皮膚切開,気管切開と両側に胸腔ドレナージを施行した。口腔内を観察すると顎下腺開口部の拡大を認めた。以上の所見から,唾石症によると思われる顎下腺の炎症によりLudwig's anginaが生じて,降下性縦隔炎,膿胸,敗血症性ショックを合併したものと判断した。抗菌薬,人口呼吸管理と多房性膿胸に対するCTガイド下の外科的ドレナージの追加により全身状態は徐々に改善し,第58病日独歩退院となった。Ludwig's anginaは顎下部間隙膿瘍のことであり,主に齲歯から発生する。これが疎の口腔咽頭組織間隙を通じて感染が他に波及すると髄膜炎や降下性縦隔炎や膿胸を合併することもある。Ludwig's anginaは稀な疾患ではあるが死亡に至る可能性があるため,炎症所見を伴った下顎部腫脹の患者を診察した場合は,Ludwig's anginaを考慮する必要がある。