著者
河野 篤子 桐村 ます美 坂本 裕子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.88, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】平成21年、22年度日本調理科学会特別研究において行事食・通過儀礼の全国調査をおこなった。昨年の行事食と同様に、京都府出身の学生世代(10~20代)と親世代(40~50代)における通過儀礼と儀礼食の認知状況、経験等の差を明らかにすることを目的とした。 【方法】日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を使用し、近畿の大学・短期大学に在学する学生、その家族ならびに地域住民にアンケート調査をおこなった。そのうち、10年以上京都に在住している学生世代191名、親世代115名を対象とし、通過儀礼の認知・経験および儀礼食の喫食経験の世代間比較をおこなった。 【結果】通過儀礼の認知度を世代間で比較すると、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いは学生世代で低かった。次に認知に対し、経験している者の割合を比較すると、七五三、誕生日は両世代で9割以上であり、それ以外は葬儀、法事を除き、学生世代で低かった。儀礼食は、餅類の喫食は両世代ともに低かったが、赤飯、小豆飯等は世代間で差はみられたものの、両世代ともに喫食されていた。法事の料理は、両世代で精進料理より精進料理以外を喫食する機会が多いことがうかがえた。七五三、誕生日は両世代ともに9割が千歳あめ、ケーキを喫食していた。人生の初期から成年にかけての儀礼の多くは、学生自身が体験していても記憶していない、未体験である、または親戚との関わりの減少が考えられたが、葬儀、法事は現在も親族の重要な通過儀礼であり、赤飯、小豆飯等は主要な儀礼食であることが確認できた。
著者
桐村 ます美
出版者
福知山公立大学
雑誌
京都短期大学紀要 (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.41-50, 2007-03

島国に住む我われ日本人は、昔から幾種もの海藻を食用としてきた。海藻は現在の食生活にとって欠かすことのできない食品となっている。中でもノリ、コンブ、ワカメ、ヒジキ等は古くから利用され消費量も多い。近年では健康食品としても再認識され、以前にない新種も次々と市場に出回り全国的に流通し始め、店舗における海藻類の売り場も様変わりしてきた。本研究においては、京都府北部を含む日本海沿岸に生育する海藻(ホンダワラ:Sargassum Fulvellum)の食用利用の拡大を図るためその特性を調べ検討した。栄養成分としては、海藻特有の食物繊維及び無機質が豊富に含まれること、味にクセがなく各種料理に応用できることから今後幅広く食用として利用できることを確認した。
著者
桐村 ます美 山名 美奈子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<sup>【目的】わが国の女性の「平均寿命」は昭和60年から今日まで世界一の水準を保ち、男性は幾分下回るものの、男女の平均寿命は現在でも世界一を誇っている。また「健康寿命」も世界一ではあるが、この二者間で男性9.13年、女性12.68年と大きな差が生じている。健康寿命の延伸が求められる中、ロコモティブシンドロームを認知している国民の割合は平成24年において17.3%と低く、国は平成34年度にはこれを80%とすることを目標としている。地域住民に対して認知させることが喫緊の課題とされている「ロコモ予防」を、様々な観点から身近な課題として理解できるように示す事を目的に健康教室を開催した。<br>【方法】「知識・運動・食事」の3部構成で実施した。1部では、まず「ロコモを知ること」とし、ロコモについての概要を説明し、食事との関係についての「講演会」を行った。第2部「運動」では、実際に身体を動かすロコモ予防の体操を行った。3部では、学生の手作りのロコモ予防のお弁当を作成し、実際の食生活に活用できるように「食事会」を催した。<br>【結果】参加者は30歳代から80歳代の幅広い年齢層の地域住民であった。教室終了後の参加者のアンケート結果から、「ロコモを理解した人」93.1%、「今後食事改善を心がけようと思った人」96.6%、「今後運動を取り入れようと思った人」93.1%を占めた。「学び・運動・食事」と組み合わせることで、日頃の生活習慣や食習慣を改善するための動機づけが成功し今後の行動変容が期待できる事で、本健康教室の開催は成果があったことを確認できた。</sup>
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 豊原 容子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】平成24・25年度特別研究として京都府下の昭和30〜40年代の家庭の食について行った聞き取り調査から,副菜の地域別特徴を探った。</p><p>【方法】京都府下の北部(丹後,舞鶴,丹波),京都市内,南部(京田辺,宇治田原)の地域において,64歳から84歳の計22名を対象として平成25年12月〜平成26年2月に聞き取り調査を行った。これより地域別に副菜の特徴を比較検討した。</p><p>【結果および考察】各地域とも季節ごとに地元で採れる野菜や山菜,芋,豆を中心に,日々の副菜を作っていた。北部や南部では野菜や豆は自給自足,市内では店での購入が多かった。調理法としてはお揚げと炊く煮物,和え物,汁物が多く,大根をはじめ野菜はさらに多様な漬物や干し物にして保存性を高め料理に利用していた。古漬け沢庵はひと手間をかけ,「ぜいたく煮」として府下それぞれで食べられていた。野菜や芋の煮物は全域で「○○の炊いたん」と呼んでいたが,わかめ等の海産物利用は北部の海寄りで多くみられた(料理例「わかめのパ−」)。</p><p>地域別に料理をみると,汁物は北部で「けんちゃん」,京都市内,南部で「粕汁や若竹汁」が,和え物は北部で「白なます」,市内で「ずいきのごま酢和え」,南部で「古老柿なます」が,常備菜は北部で「ふき味噌や黒豆味噌」,市内で「きごしょうの炊いたんや山椒とちりめんじゃこの炊いたん」が作られていた。漬物は「糠漬」が多いが,市内の北では「すぐき漬やしば漬」も作られていた。保存性を増すとともに,多く収穫した時は南部では「きゅうりとお揚げの炊いたん」を作るなど食材の有効利用が図られていた。福知山では豆,京田辺では田辺ナスを利用した料理が多く見られ,京野菜や地域の特産野菜の利用が進められた。</p>
著者
湯川 夏子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.190, 2010

【目的】行事食の現状を明らかにするため、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として近畿2府4県において、行事食の認知状況および摂取状況等の調査を行った。本報では、京都府出身学生家庭における年末年始の行事食の現状と、学生とその親世代の食経験の比較を行った結果を報告する。<BR>【方法】2009年12月~2010年4月、近畿2府4県の大学に在籍する学生およびその家族を対象として質問紙調査を行った。日本調理科学特別研究の全国統一様式の質問紙を使用し、集合自記法および留置法にて行った。京都出身者の学生182名とその家族(親世代)90名を解析対象とし、「正月」「人日」「大みそか」の行事食に関して集計・解析した。<BR>【結果】正月料理の食経験は学生・親世代ともに全体的に高かった。しかし、屠蘇、数の子、田作り、昆布巻き、煮しめ、なますについて、有意に学生の食経験率が低かった。親世代は、お節料理9品目のうち、8品目は「毎年食べる」と回答した人が6割以上いたが、なますは「食べなくなった」と回答した人が多かった。その他に、棒だら、たたきごぼう、くわいがよく食べられていた。お節料理は全体的に、家庭で作る割合が減少し、購入する割合が増加していた。雑煮は、約6割が白味噌、約3割がすましであり、ほかに赤味噌や小豆の雑煮が見られた。七草は、行事の認知度は高いものの、七草粥の食経験は学生で約6割であり、親世代との有意差がみられた。年越しそばは多くの家庭で喫食率が高かった。<BR> 以上の結果より、年末年始の行事食は、親子の世代間において食経験の較差がみられると共に、家庭で作る行事食が減少しつつある現状が明らかとなった。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 河野 篤子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>平成21,22年度日本調理科学会特別研究で「行事食・通過儀礼食」の全国調査をおこない、京都府において行事や儀礼の認知度や経験度、またそれらに関わる食の喫食状況について世代間や地域差の検討をおこない報告した。またハレの食事にかかせない赤飯・餅・寿司・団子について調べ、行事食・通過儀礼食における米の利用状況の違いを明らかにした。今回はこれまでの結果をふまえ、行事や通過儀礼における家庭での食の調理状況や入手方法の解析から、行事食・通過儀礼食の伝承について比較検討することを目的とした。<br><b>【方法】</b>平成21年12月~22年3月に日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を用い留置法で調査を実施した。10年以上京都府に在住する者を調査対象とし、行事食では調理状況や食べ方について以前と現在の状況、子世代(10・20歳代)191名と親世代(40・50歳代)115名について世代間の比較をおこなった。また京都市内とその南北で地域差がみられるため地域の状況も比較検討した。<br><b>【結果】</b>両世代で「家庭で作る」と答えた者の割合が高いものは、雑煮、七草粥、上巳の寿司、冬至のかぼちゃ、年越しそばであった。以前と現在の入手方法をみると、「家庭で作る」から「買う」への増加がみられるものがある一方で、差がないもの、減少する割合に比べ「買う」の増加がわずかのものがみられ、全体に喫食自体が減る中、調理技術の伝承が難しい傾向がうかがわれた。行事食、通過儀礼食ともに最も「家庭で作る」割合が高い傾向にあるのは北部地域であったが、3地域ともに現在は「家庭で作る」割合が減少傾向にある。三世代同居家庭の方が認知度、経験度が高い結果にあったが、核家族化の進行もありさらに次世代へ伝承されにくい状況が進むと考えられる。
著者
吉田 千秋 桐村 ます美 C. Yoshida M. Kirimura 京都短期大学 京都短期大学 Kyoto Junior College Kyoto Junior College
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学紀要 = Bulletin of Kyoto Junior College (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-41, 2003-03-15

小麦グルテンタンパク質の製パン過程における重合および脱重合をラウリル硫酸ナトリウム (SDS) に不溶の高分子グルテンタンパク質 (SDS-ISG) を定量することによって調べた。ドウ中のSDS-ISGはヨウ素酸カリ (KIO_3) レベルの増加とともに直線的に増加した。ドウを30℃でねかすと9ppm付近にピークが現れ、このピークはドウを180℃で焼成すると3ppmに移行した。これらの結果からグルテンタンパク質は低レベルの酸化剤により重合するが、高レベルでは脱重合し、高温で促進されることが示唆された。臭素酸カリ (KBrO_3) およびアスコルビン酸 (AsA) でも同様の結果が得られた。パン容積は焼成したドウ中のSDS-ISG量と正の相関性を示すが混ねつやねかしたドウ中のSDS-ISG量とは相関性はなかった。したがって、焼成時における脱重合が製パン性を決定すると考えられる。これまで酸化剤による脱重合は混ねつ時におけるSH/SS交換反応や shear force によるSS結合の切断、分子内SS結合の形成などで説明されてきたが、著者らはグルテンタンパク質の特異な性質にその原因があると考え混ねつせずに調製したグルテニンタンパク質を用いて酸化剤とその塩の効果を調べた。その結果、グルテニンタンパク質は低濃度のKIO_3またはKBrO_3でわずかに溶解度が減少するのみであるが、粘度はグルテニンタンパク質を2-メルカプトエタノールで還元したときの値まで著しく低下することが判明した。同様の結果は酸化剤だけではなくヨウ化カリ (KI) および臭化カリ (KBr) のような塩でも得られた。このことからグルテンタンパク質の脱重合は主に塩析による溶解性の減少によることが示唆された。以上の結果から製パソ性過程における酸化剤の効果を考察した。
著者
豊原 容子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の一環として、京都府下の昭和30年~40年代の家庭の食についての聞き取り調査を行った。この調査結果から、京都府全体に共通する家庭料理の特徴について明らかにすることを目的とした。 【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、北部海岸沿いの丹後地区と舞鶴地区、中部の丹波地区、京都市内、南部平野部の京田辺地区、南部山間部の宇治田原地区の6地区の64歳から84歳の計22名を対象として、平成25年12月~平成26年2月に聞き取り調査を行った。この調査内容から、京都の家庭料理の特徴について検討した。 【結果】京都の家庭料理において、「倹約(しまつ)」を旨として材料を活かし使い切る工夫がさまざまになされていた。日常は、自家製の味噌を使った味噌汁、野菜や豆の炊いたん、切り漬けやどぼ漬けなどの漬物といった、季節の野菜、採集した野生の動植物、また自家製の乾物や加工品などを主材料とした料理を組み合わせて食べていた。これらの料理には、高価な昆布や鰹節のだしは使わず、煮干しが使われた。さらに野菜の炊いたんには、じゃこや油揚げなどを取り合わせおいしく食べる工夫がなされていた。油揚げは肉の代用として使われることも多かった。一方、魚や肉などを主材料とする料理は、野菜や乾物を主材料とするものに比べ非常に少ない。この中で、全域であげられた鯖寿司や自家で絞めた鶏のすき焼きは、行事やもてなしの折に作られる特別なごちそうであった。バラ寿司も行事に欠かせない特別な料理であるが、具については地域や家庭によって違い、常備した素材を用いる質素なものもあった。