著者
田岡 洋子 村岡 洋子 H. TAOKA Y. MURAOKA
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学論集 (ISSN:02866390)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-60, 2001-03

学生による高齢者へのインタビューを通して,その生活の現状とこれまでの生活の歴史と考え方を調査した。インタビューをした高齢者は比較的健康で,現在の生活に満足している。約30%の人が現在でも仕事をしている。これまでの仕事歴は男性が専業,女性がパートとはっきり分かれているが,80%の人は女性が仕事をもつことはよいことだと考えている。介護の体験は女性が多いが,男性も28%は介護経験者である。介護して心に残った印象は,ただ辛いばかりでなく,介護・生・死についてさまざまな感慨を得ている。自分の老後に関しては男性がつれあい,女性が娘とはっきりと別れており,介護をしてもらう場所としては男女とも自宅がよいと回答している。この点ではともに全国的調査と同様の典型的なパターンではあるが,病院より老人ホームの方が高くなったり,家族以外の社会的介護が望ましいと思う人はともに19%前後とかなり高い値を示すなど,新しい傾向も垣間見られる。老人ホームはあまり好ましいとは思っていないが,それでも30%の人が見学に行ったり,行きたいと思っている。質問をした学生達には大切な仕事だから頑張ってとか,君なら大丈夫と温かい励ましをいただいており,高齢者とじっくり話し合うのは初めての経験という学生達はそれぞれに感銘を受けている。
著者
田岡 洋子 近藤 信子 中川 早苗 H. Taoka 京都短期大学 中国短期大学 広島国際学院大学
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学紀要 (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-32, 2004-03

高齢社会から超高齢社会になろうとじている日本にとって、介護は注目すべき問題である。介護環境を考えるときに介護者の着装姿が身近な介護雰囲気を形成している。介護する側、される側にとって望ましい介護服が重要と考えた。介護現場でよく見かけるジャジー姿が本当によいものなのか現状を踏まえて、どのようなことを満たせばよいのか? を実際に介護施設で働いている介護者から意見を求めた。望ましい介護服の条件として重要なのは機能性・好感度・清潔感・着心地・取り扱いの簡便さ・美感の順で、イメージは「明るい」「親しみやすい」「暖かい」「シンプルな」イメージである。色はピンク、水色、白色の淡い色がよく、柄は無地に胸のワンポイントは着装者の名前の刺繍を大きくするのがよく、アイテムとしてはポロシャツにズボン、エプロンなどがよいことがわかった。
著者
田岡 洋子 近藤 信子 中川 早苗 H. Taoka 京都短期大学 中国短期大学 広島国際学院大学 Kyoto Junior College /
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学紀要 (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-27, 2005-03

施設介護に携わる介護者のための被服について検討するため、京都府・岡山県・大分県内の施設で介護に携わっている人を対象に配票留置法による質問紙調査を1999年および2000年の8~10月に実施した。施設への配布数は314票で、回収率82%である。介護服の評価に関する23項目への評定尺度得点を基に因子分析を行って主要な因子が抽出され、介護療養型医療施設(療養)では「素材特性」「標識性」、介護老人福祉施設(特養)では「審美性」「デザイン性」、介護老人保健施設(老健)では「活動性」の因子得点が高い値を示した。望ましい介護服のイメージについては、形容詞対18組のSD尺度への評定を基に因子分析を行い、特養は「落ち着き」と「容儀性」、老健は「カジュアル性」と「ファッション性」、療養は「親しみやすさ」「ファッション性」「カジュアル性」の因子得点が高い値を示した。望ましい介護服の色では、ピンク・水色・白などの明るく淡い色。望ましい介護服の柄は無地と回答する割合が多かった。望ましい介護服のアイテムとして、特養では、冬はトレーナー・夏はTシャツ・春秋はポロシャツなどの上衣に、下衣はジャージと回答する割合が大きかった。療養では、トレーナー、Tシャツ、ジャージの下衣、ハーフパンツの着用希望が多かった。以上のように三施設における成り立ちや歴史、施設の機能、役割が異なり、介護服に対する考え方も異なることが分かった。
著者
吉田 千秋 桐村 ます美 C. Yoshida M. Kirimura 京都短期大学 京都短期大学 Kyoto Junior College Kyoto Junior College
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学紀要 = Bulletin of Kyoto Junior College (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-41, 2003-03-15

小麦グルテンタンパク質の製パン過程における重合および脱重合をラウリル硫酸ナトリウム (SDS) に不溶の高分子グルテンタンパク質 (SDS-ISG) を定量することによって調べた。ドウ中のSDS-ISGはヨウ素酸カリ (KIO_3) レベルの増加とともに直線的に増加した。ドウを30℃でねかすと9ppm付近にピークが現れ、このピークはドウを180℃で焼成すると3ppmに移行した。これらの結果からグルテンタンパク質は低レベルの酸化剤により重合するが、高レベルでは脱重合し、高温で促進されることが示唆された。臭素酸カリ (KBrO_3) およびアスコルビン酸 (AsA) でも同様の結果が得られた。パン容積は焼成したドウ中のSDS-ISG量と正の相関性を示すが混ねつやねかしたドウ中のSDS-ISG量とは相関性はなかった。したがって、焼成時における脱重合が製パン性を決定すると考えられる。これまで酸化剤による脱重合は混ねつ時におけるSH/SS交換反応や shear force によるSS結合の切断、分子内SS結合の形成などで説明されてきたが、著者らはグルテンタンパク質の特異な性質にその原因があると考え混ねつせずに調製したグルテニンタンパク質を用いて酸化剤とその塩の効果を調べた。その結果、グルテニンタンパク質は低濃度のKIO_3またはKBrO_3でわずかに溶解度が減少するのみであるが、粘度はグルテニンタンパク質を2-メルカプトエタノールで還元したときの値まで著しく低下することが判明した。同様の結果は酸化剤だけではなくヨウ化カリ (KI) および臭化カリ (KBr) のような塩でも得られた。このことからグルテンタンパク質の脱重合は主に塩析による溶解性の減少によることが示唆された。以上の結果から製パソ性過程における酸化剤の効果を考察した。