著者
梶浦 一郎 鈴木 茂
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.p309-328, 1980-12
被引用文献数
3 3

ニホンナシ在来品種と育成品種ならびにチュウゴクナシの白梨系統,秋子梨系統,合わせて432品種の果形図を52の文献から集め,果形を表現する9形質を測定して,ニホンナシ在来品種の果形の変異の範囲,分布の様相,果形から見た在来品種の地理的分布の偏りを明らかにするとともに,品種改良に伴う果形の変遷を調べた。9形質の頻度分布図より,秋子梨系統には肩と帯端部の丸みおよび肩幅が大きく,しかも両窪が浅い品種が多かった。白梨系統は各形質とも変動が大きかったが,肩幅が狭く,肩の丸みが小さい品種が多かった。ニホンナシは各形質とも変動が大きくて,扁円形から倒卵形,卵形まで種々の果形が見られたが,円形でやや重心が低く,両窪もやや深い品種が多かった。一般に特定形質で特異な値を示した品種は地理的に局在する傾向が見られ,特に果形の細長い品種は九州および日本海岸地方に多く分布した。江戸末期から明治時代に発見された品種群中には,江戸時代の品種に比べ,円形,扁円形の品種および両窪の深い品種が多く,重心の低い品種や帯端幅の狭い品種は少なかった。これに反し,近年の育成品種には,円形または扁円形で重心が果実の中心にあり,しかも,帯端幅の広い品種が多く,一部には著しく扁円で両窪の深い品種も含まれた。9形質の主成分分析による第1一第2主成分の品種散布図から,9つの果形群に分け,品種由来地の地方別,種類別ごとに,各果形群の出現率を比較した。九州在来品種群は他の地方よりも果形が長く,重心が下がった果形群の比率が高く,その出現率は白梨系統と似ていた。また,関東在来品種群は扁円で肩幅が広く,梗塞の深い果形群の比率が高かった。第2一策3主成分の散布図から,9つの果形群に分けると,東北地方は他の地方に比べ,帯窪が浅くて重心が低く,帯端幅の狭い果形群の比率が大きく,その出現率は秋子梨と似ていた。一方,北陸地方には帯窪の浅い品種の分布が見られなかった。
著者
梶浦 一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.31-33, 1972-01-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

The low temperature injuries were studied in white peach "Okubo" fruits, in relation to temperatures and the delayed storage. Fruits ripened in 7-9 days at 20°C, 17-21 days at 10°C and the ripening was suppressed at 2.8°C. More injuries developed at 2.8°C than at 1°, and 10°C, and the development of injuries was reduced by the delayed storage. Fruits seemed to be more susceptible to low temperature injuries at 3-5°C than at 0-1°C. The best storage conditions seemed to be in the delayed storage at 0-1°C.
著者
梶浦 一郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.301-311, 1972
被引用文献数
1

リンゴ紅玉と国光果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響を4&deg;C下と20&deg;C下とで調査した. 炭酸ガス0,1,3,5, 10ならびに20%, 酸素16.8~21%を含む混合ガスを常時通気し, 各炭酸ガス濃度区とも紅玉では15個, 国光では10個ずつ調査した.<br><b>紅玉</b><br>1. 4&deg;C下では果皮地色の黄色化が炭酸ガス10%以. 上で抑制され, 果肉の軟化は5%以上で抑制されたが, 果肉かつ変果では軟化が著しかつた. 滴定酸度は処理中減少し, 20%区で顕著だつた. また酸素吸収量も20%区でやや抑制された. 食味は3%以下では淡白になり, 10%区はフレーバーが脱け, 20%区は異臭が生じ, 5%区が良好であつた.<br>2. 20&deg;C下では黄色化が3%以上, 軟化と減酸ならびに酸素吸収量は5%以上で抑制された. また食味も5%以上でフレーバーが脱け, 20%区では異臭が生じた.<br>3. 4&deg;C下では20%区で2種のかつ変が生じ, 5, 10%区の一部の果実にも軽い症状が見られた. (1) 濃かつ変が心皮組織中央より発生し, 果肉に拡大する. (2) 果実の肩がかつ変し, 上述のかつ変と併発する場合が多かつた. 20&deg;C下では20%区で一部の果実のほう線上に乾燥して空胴のある淡かつ斑が生じた.<br><b>国光</b><br>1. 4&deg;C下では黄色化が1%以上, 軟化が3%以上で抑制されたが, 20%区のかつ変部は著しく軟化した. 滴定酸度は減少し, 10, 20%区で顕著だつた. 食味は0, 1%区では粉状質になり, 20%区では異臭が生じ, エタノール蓄積も見られた. また3~10%区ではフレーバーが脱け, 高濃度下ほど著しかつた.<br>2. 20&deg;C下では黄色化は1%以上, 軟化は3%以上で抑制され, 20%区のかつ変部は軟化した. 滴定酸度の減少は20%区のかつ変部で著しかつた. 食味は0~3%区で粉状質になり, 10%以上で異臭が生じた.<br>3. 4&deg;C下では1%以上の区で心皮組織中央より淡かつ変が生じ, 果肉に拡大し, 高炭酸ガス下ほど顕著だつた. 20&deg;C下では果心内背管束付近が淡かつ変し, 果肉に拡大するとともに空胴が生じた. 5%以上の区で見られ, 高濃度下ほど著しかつた.<br>4&deg;C下の本実験より貯蔵に適した炭酸ガス濃度は紅玉では5%付近と思われたが, 国光ではかつ変発生のため不明確だつた. より明確な貯蔵効果を得るにはかつ変を防止するとともに低酸素との組み合わせが必要と思われた. 温度とかつ変, 最適炭酸ガス濃度, 炭酸ガス感受性の品種間差について考察した.
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-146, 1986-06-01
被引用文献数
3

カラタチはカンキツ類の台木として広く利用されているが,今までほとんど系統選抜されることなく用いられてきた.またカラタチは多胚性であり,通常珠心胚によって無性生殖するとされており,無性胚によって得られる遺伝的に均一な実生は台木としての優れた性質のひとつである.しかし,古くからその実生の中に生育の不均一なものがある程度存在することが知られており,その一部,葉の大きいものは4倍体実生であるとされている.しかしその他のものについては原因が解明されていない.本研究ではアイソザイム分析により,カラタチ実生中の交雑実生を識別し,また既存のいくつかの系統について,由来を検討した. カラタチのグルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)のアイソザイムをアクリルアミドスラブゲル電気泳動で調べた.ほとんどのカラタチ個体はGot-1およびGot-2の遺伝子座についてそれぞれ3本のバンドを示し,それぞれMPとSMの遺伝子型を示した.しかしその実生の一部ではGot-1,またはGot-2のいずれか一方または両方がホモにたっていた.これらの実生はカラタチ間の交雑により生じた個体であると考えられた.当支場に栽植されている,遺伝子型MP,SMの樹より採取された種子から生じた8ケ月の実生で調査すると,これらアイソザイムで識別できる交雑された実生の平均樹高は19.3cmであったが,その他の実生のそれは23.8cmであった.GOTアイソザイムで識別できたい交雑実生を考慮すると全実生中の交雑実生の割合は19.9%にのぼると推定された.また,苗木商から購入した8ケ月の実生についてもほぼ同様にカラタチ同士の交雑した実生が見いだされた.しかし一方,農家に植栽されている成木のカラタチを調査ではこのようた交雑実生が発見できなかった.以上の結果より普通に見られるGOT遺伝子型がMP,SMのカラタチはその他の遺伝子組み合わせより強勢た組み合わせを持っていて,自然のあるいは人為的た選択により残ってきたと考えられる,交雑実生の一部は他のカラタチよりも早く,3年目の春に開花した.これまで知られている形態的に特異な系統のうち,大花系のWebber-Fawcett,PomeroyおよびU.S.D.A.ならびに小葉系Bだとの系統はこのようた交雑に由来するものと推定された.花粉の形態においても交雑実生のものは無性胚由来のものと比べて若干の差がみられた・
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.377-389, 1986-12-01
被引用文献数
2

カンキツ類のアイソザイムによる遺伝子分析についてはT0RRESらによって行なわれているが,我が国に栽培されている多くのマンダリン類およびナツミカン,ハッサクなどについては未だ十分に分析がされていない.これらのカンキツのグルタミン酸-オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)およびリンゴ酸脱水素酵素(MDH)について分析した. 果樹試,興津支場などで保存されているもの105点,交雑あるいは自殖実生31点の計136点のカンキツを分析した.GOTについては粗抽出物を脱塩した後,またMDHについてはBlue Sepharose CL-6Bを用いて酵素を部分精製した後,アクリルアミドスラブゲル電気泳動で分析した.本研究ではGot-1の遺伝子座に関してS,A,M,FおよびP,Go-2の座ではS,M,BおよびA,Mdh-1ではA,T,B,DおよびGの対立遺伝子が識別された.このうち,Got-1のA,Got-2のA,Bは新たに発見されたものであった.