- 著者
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棚田 梓
岡田 勇
- 出版者
- 一般社団法人 社会情報学会
- 雑誌
- 社会情報学 (ISSN:21872775)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.2, pp.33-47, 2013
インターネットメディアの発展により,いわゆる放送と通信の境界があいまいになるにつれ,地上デジタルテレビ放送の地位が急速に低下してきている。しかし,多メディア化が進むにつれ,テレビ局の持っているノウハウや高度な編集能力に基づく高品質な番組を提供しうるポテンシャルは,引き続きメディアとしての差別化された価値を維持する可能性を持っている。視聴者がメディアを選択する時代に,地上デジタルテレビ放送が番組の品質を維持することは,重要な政策課題となるはずである。本稿では,地上デジタルテレビ放送のこのような差別的価値を強化するための方策として,放送倫理・番組向上機構(BPO)に着目し,事例分析を行いBPOの機能と役割について考察した。はじめにBPOは3つの事件を契機として,公権力の介入を阻止することを主目的として役割強化が図られてきたことを明らかにした。次に,BPOは視聴者の苦情処理という側面に加え,番組の品質向上への期待や業界への提言といった積極的役割を行っている一方,BPOの決定を放送局が遵守するというのは申し合わせに過ぎず,BPOが有効に機能しない事例もあることを示した。BPOで討議された事例を分析した結果,BPOは地上デジタルテレビ放送の差別化要因になりうることを指摘した。また,そのために放送業界がBPOの決定を遵守したり,社員教育の徹底を行ったりする必要があることを示した。現在のBPOには客観性についていくつかの批判が存在しているが,その是正には時間がかかることであり現在のBPOの自由度に配慮しつつ活動を見守るべきであることを主張した。