著者
清水 裕子 井上 一由 森松 博史 高橋 徹 山岡 正和 大森 恵美子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヘム代謝の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)は横紋筋融解症性急性腎傷害に対して保護効果を示すと報告されている。BTB and CNC homology 1 (Bach1)はヘム依存性の転写因子で、HO-1の発現を制御している。今回我々は、横紋筋融解症ラットモデルの急性傷害腎においてHO-1 mRNAとHO-1タンパクが有意に増加し、ヘム合成の律速酵素であるALAS1のmRNAの発現が抑制されることを確認し、さらに横紋筋融解症性急性傷害腎において、細胞内遊離ヘムの増加に伴い核内Bach1タンパクが核外へ移行し、本研究は腎臓のBach1発現の動態をin vivoで初めて明らかにした。
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007-10-01
被引用文献数
9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.<br>
著者
藤原 由紀子 町田 治彦 田中 功 福井 利佳 平林 望 白石 くみ子 岸田 弘美 森 恵美子 増川 愛 上野 惠子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1166-1172, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
10

背景および目的: 64列multidetector-row CT(MDCT) 心臓検査は, 非侵襲的に冠動脈の詳細な形態評価が可能であるが, 放射線被曝による発癌リスクの増加が問題視されている. これに対し, 被曝低減技術の活用と画質劣化の回避のため, しばしば, β遮断薬経口投与による心拍数の低減が図られる. 今回, われわれは, 本検査の安全性の評価と合理的なワークフロー確立のため, β遮断薬投与後の心拍数の経時的変化と検査前後の血圧変動について検討した.方法: 対象は, β遮断薬経口投与下に64列MDCT心臓検査前を施行した連続551例. 投与前, 投与後15~90分, 撮影直前の心拍数と投与前と撮影直後の血圧を測定し, 投与前心拍数に応じた最低心拍数到達時間, 心拍数, および血圧低減率, ならびに心拍数40bpm以下の高度徐脈, 急激な血圧低下に伴うショックなどの重篤合併症の出現頻度を検討した.結果: β遮断薬投与後, 心拍数は経時的に低下し, 最低心拍数到達時間は, 投与前心拍数80bpm未満で60分, 80~89bpmで75分, 90bpm以上で90分であり, 心拍数低減率(最低心拍数)は, 投与前心拍数70bpm未満で16.4%(54.9bpm) , 70~79bpmで20.3%(58.2bpm), 80~89bpmで24.4%(62.9bpm), 90bpm以上で27.7%(69.5bpm)であった. 血圧低減率は, 収縮期血圧において, 80bpm未満で4.3%, 80~89bpmで5.0%, 90bpm以上で4.8%, 拡張期血圧においては70bpm未満で0.7%, 70~79bpmで1.5%, 80~89bpmで1.0%, 90bpm以上で2.8%であった. また, 本剤投与による重篤な合併症はなかった.結論: β遮断薬経口投与下MDCT心臓検査は安全に遂行可能であった. また, 投与前心拍数に応じた心拍数の経時的低減効果が判明し, 検査の流れの予測が可能となった. 今後, これらを踏まえ患者の不安の軽減や待機時間の短縮などに生かしていきたい.
著者
重松 英朗 中村 吉昭 古閑 知奈美 森 恵美子 大野 真司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.3069-3073, 2008 (Released:2009-06-11)
参考文献数
10
被引用文献数
8 8

Corynebacterium kroppenstedtii感染により発症し乳癌との鑑別を要したgranulomatous mastitisの1例を経験したので報告する.症例は47歳,女性.1カ月前より右乳房腫瘤を自覚し当科受診.右乳房A領域に3cm大の腫瘤を認めた.理学的所見,画像所見より右乳癌が疑われたが針生検組織診で確定診断が得られなかったため外科的生検術を行った.病理組織所見では肉芽腫の形成と多核巨細胞を含む炎症細胞浸潤を認め悪性所見は認められなかった.細菌培養にてCorynebacterium kroppenstedtiiを認め,Corynebacterium kroppenstedtii感染により発症したgranulomatous mastitisと診断した.治療として排膿ドレナージ後,塩酸ミノサイクリン内服治療を3週間施行し治癒を認めた.Granulomatous mastitisの診療においてCorynebacterium kroppenstedtii感染の可能性を考慮することが必要と考えられた.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
38
被引用文献数
6 9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.