著者
江木 盛時 西村 匡司 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-32, 2011-01-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

【背景】重症患者の発熱は頻繁に生じ,外表クーリングや薬物による解熱処置が日々行われている。しかし,発熱を解熱すべきか否かに関する治療指針は存在しない。【方法】発熱と解熱処置が患者予後に与える影響に関してsystematic reviewを行った。【結果】発熱あるいは解熱処置が患者予後に与える影響を検討した研究は,27文献存在した。これらの文献から,以下のような見解を得た。(1)発熱の発生は,重症患者の死亡率増加に関与する。(2)感染症合併患者では,発熱が死亡率低下に関与する可能性がある。(3)発熱に関する観察研究で解熱処置の情報を含めて解析したものはない。(4)積極的に解熱処置を行うことで,患者予後が悪化する可能性がある。【結語】重症患者の発熱を解熱すべきであることを示す根拠は乏しく,一概に解熱処置を行うことは推奨されない。この分野の知見を深めるために,十分なpowerの大規模多施設前向き観察研究を実施する必要がある。
著者
江木 盛時 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.17-25, 2012-01-01 (Released:2012-07-10)
参考文献数
30

【背景】重症患者に施行される解熱処置について,その有益性は明らかでない。【方法】解熱処置が重症患者に与える影響に関して系統的レビューを行う。【結果】解熱処置が重症患者に与える影響を検討した研究は16文献あった。これらの文献から以下の見解を得た。(1)解熱効果は大きくばらついている。(2)解熱処置開始体温は統一されていないが, 半数の文献で38.5℃としている。(3)解熱処置で体温が低下すれば,心拍数・分時換気量・酸素消費量が減少する。(4)薬物を使用した解熱処置により血圧が低下する。(5)解熱薬による生理学的パラメータの改善が,患者予後の改善をもたらすかを十分な検出力で検討した介入試験は存在しない。【結語】解熱処置により呼吸・循環・代謝負荷が軽減されるが,解熱処置の臨床的予後改善効果を示した研究は存在しない。解熱処置の有益性・有害性について結論を出すためには,異なる解熱戦略を比較した無作為化比較試験が必要である。
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007-10-01
被引用文献数
9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.<br>
著者
森田 潔
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.130-132, 1963-06-25 (Released:2008-05-16)
参考文献数
31

朝鮮に栽培されている作物名としての莞草(ワングル)に含まれる種は,C.IwasakiiM、と,C.glomeratusL.との2種にして,大多数の品種がC.IwasakiiM.に属し,極少数の品種がC.glomeratusに属することが明らかになった。
著者
森田 潔
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.299-303, 1968-10-31 (Released:2008-05-16)
参考文献数
14

Yield tests were made for fresh and air-dried stems, leaves and heads in 385 varieties of "Wangul" which contalns two specres Cyperus Iwasakii M. and C. glomeratus L. collected from all the parts in Korea. Then the examination was carried out to know how much the air-dried fiber and pith could be produced from the green stems of several varieties. As the result, the yielding differences between the two species and among the varieties in them were shown clearly.
著者
鈴木 聡 森松 博史 江木 盛時 清水 一好 松崎 孝 佐藤 哲文 片山 浩 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.215-220, 2011-04-01 (Released:2011-10-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

術後の発作性心房細動の発生は,ICUや病院滞在日数,医療費の増加につながることが報告されており,その管理は重要である。我々は,食道癌術後に難治性の発作性心房細動を合併し,短時間作用型β1選択的遮断薬である塩酸ランジオロールを使用した7例を経験した。症例は51~87歳で,いずれも男性であった。複数の抗不整脈薬が無効であり,塩酸ランジオロール投与を開始した。初期の急速投与は行わず,4.3~33.5μg/kg/minと低用量の範囲で開始し,投与前と投与1時間後の心拍数は平均153[140, 167][95%信頼区間] /minから101[88, 116] /min(P<0.0001)と有意な低下を認めた。平均血圧は88[78, 94] mmHgから82[74, 89] mmHg(P=0.37)と有意な変化を認めず,重症な低血圧に陥る症例もなかった。6例では投与開始24時間以内に洞調律に回復した。複数の抗不整脈薬に抵抗性の食道癌術後発作性心房細動に対する低用量の塩酸ランジオロール投与は,大きな血圧の低下なく心拍数の安定をもたらした。
著者
佐藤 健治 森田 潔
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.185-191, 2013 (Released:2013-05-16)
参考文献数
6

岡山大学病院では1996年に麻酔科の院内急性痛対策をPOPS(Postoperative Pain Service)と命名し,実践的マニュアルを作成した.術後早期の良好な疼痛管理が可能となった.近年注目が集まるERAS(Enhanced Recovery after Surgery)では,離床を促進し経口摂取を妨げない疼痛管理が必要となる.手術室で開始された硬膜外PCAや静脈PCAの漸減や終了,経口鎮痛薬へのステップダウンや嘔気・嘔吐対策などが課題となる.岡山大学病院では手術が決まった外来時点より,多職種連携の医療チームが手術患者にかかわり,快適・安全・安心な手術と周術期環境を効率的に提供する周術期管理センター(ペリオ)を2008年に開設した.われわれはPERIOの取り組みの中でPOPSの課題解決を模索している.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
38
被引用文献数
6 9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.