著者
米地 敦 樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-198, 2002-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
著者
平野 尭将 小林 達明 高橋 輝昌 鈴木 弘行 恩田 裕一 高橋 純子 山本 理恵 斎藤 翔
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第126回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.858, 2015 (Released:2015-07-23)

里山生態系内での放射性セシウム(以下Cs)の動態を明らかにするため、川俣町山木屋地区の農家所有の里山と山木屋小学校の森林において樹体各部位と土壌のCsを調査した。農家所有の里山ではA0層の除去処理を行い、土壌中のCsの低下が里山生態系内にどのような影響を及ぼすのか調べた。コナラ・ミズナラは対照区で幹木部や葉のCs濃度が高かったのに対し、Cs除去処理区ではCs濃度が低いという関係が見られた。また、コナラとミズナラの全調査木の幹木部と樹皮の関係は見られなかったのに対し、幹木部と葉の間には明瞭な正の相関関係が見られた。そのため、Csの吸収は経皮吸収によらず、主に根から吸収され、樹液流によって幹木部から葉に運ばれていると考えられる。一方、アカマツの葉のCs濃度は、コナラやミズナラに比べると低く,幹木部のCs濃度は著しく低かった。コナラの葉は展葉前の葉のCs濃度が最も高い傾向が見られたがアカマツには季節変化は見られなかった。また、コナラでは辺材、心材でCs濃度に大きな差が見られたのに対し、アカマツではCs濃度に大きな差が見られなかった。
著者
樋口 光徳 郡司 崇志 鈴木 弘行 櫛田 正男 矢内 康一 管野 隆三 大石 明雄 薄場 彰 井上 仁 元木 良一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.34-39, 1997-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2

検診で胸部異常陰影を指摘され原発性結節性肺アミロイドーシスと診断された48歳の男性を経験したので報告する。胸部X線写真およびCT上, 両側肺に石灰化を伴う多発性の結節影 (2~20mm) を認めた.術前, 気管支鏡下検査で確定診断が得られず, 胸腔鏡下に最も大きな左肺S9の腫瘍 (20×18×15mm) を切除した.組織学的検索でAA型アミロイドーシスであることが判明した。術後の全身検索では他臓器にアミロイドの沈着を認めず, 原発性肺アミロイドーシスと診断した.退院後16ヵ月の現在も特記すべき症状の変化もなく経過良好である.原発性肺アミロイドーシスは術前に診断を確定することは困難であるが肺癌との鑑別および確定診断のため胸腔鏡検査は有用である.また, AA型アミロイドーシスは, 結合織疾患や原発性マクログロブリン血症, あるいは悪性リンパ腫などを併発することがあり, 長期にわたる経過観察が必要である.
著者
小林 達明 高橋 輝昌 保高 徹生 近藤 昭彦 鈴木 弘行
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島第一原発事故による放射性Cs汚染に対する除染作業による里山森林生態系の反応を3年間継続測定した。137Csの初期沈着量は500kBq/m2だった。137Csの林冠から林床への供給は、2013年7kBq/m2だったのが2014年4.4kBq/m2に減少したが、2015年には4.7 kBq/m2に増加した。これは137Cs動態が平衡状態に移行しつつあることを示す。林床の137Cs蓄積量は有機物層除去で79%、リター除去で43%減少した。林冠から林床への137Cs供給はそれぞれ38%と33%減少した。処理効果は見られたが、有機物層下層の除去は可給態Csの減少にあまり貢献しなかったと考えられる。
著者
樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-39, 2003-02-20

背景.野口の分類A,B型の微小肺腺癌の予後は良好であり,この型の肺癌に悪性胸水を認めたとする報告はない.症例.42歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院受診.胸部CTにて左S^<1+2>に径4mm大のGGO(ground glass opacity)を認めた.全身検索では他病巣を認めなかった.2000年8月11日,術直前にCTガイド下に腫瘍近傍にマーキングを行った後,左上大区区域切除術(ND0)を施行した.この際,胸腔内に漿液性の胸水を少量認め,細胞診にてclass V (高分化型腺癌)と診断された.主病巣はlocalized bronchioloalveolar carcinoma (野口の分類A型)と診断された.術後補助化学療法を施行し,1年9ヶ月経過した現在,局所再発・遠隔転移の兆候なく生存中である.野口A,B型では悪性胸水を認めたとする報告はなく,本症例ではその発生機序に疑問が残る.検体の再評価では上皮性マーカーに陽性であり,悪性所見は否定できなかった.結論.整合性のない病理所見に対しては検体の再評価を行い,臨床経過も考慮して総合的に診断する必要があると思われた.(肺癌.2003 ; 43 : 35-39)