ニシキゴイには色彩や斑紋など外部形態に幅広い変異が認められ、数多くの系統に分けられている。そこで、ミトコンドリアDNA(mtDNA)調節領域の塩基配列分析により、これらの系統の遺伝的特徴を把握し、ニシキゴイの起源に関する考察を行った。日本産ニシキゴイの8系統15個体を分析した結果、mtDNA調節領域長は926または925塩基対であった。そのうち、25サイトで変異が確認され(変異サイト率:2.7 %)、3種のハプロタイプが検出された。これらのハプロタイプとデータベースに登録されているコイの塩基配列を比較した結果、本研究で6系統から検出された最頻ハプロタイプは、中国産の食用の色コイ(Oujiang color carp)でも見られ、台湾や中国産コイのハプロタイプと遺伝的類縁関係が高かった。残りの2系統(浅黄、プラチナ黄金)からは2種のハプロタイプが観察された。これらのハプロタイプは、最頻のハプロタイプとは遺伝的分化を遂げ、日本産の野生型マゴイのハプロタイプと遺伝的に極めて近い関係にあった。これらのことから、ニシキゴイには、日本に生息する野生型マゴイと遺伝的に近い系統を含む複数のコイの母系統が存在し、現在生産されているニシキゴイの起源は多系統であると推測された。