著者
張 成年 今井 正 池田 実 槇 宗市郎 大貫 貴清 武藤 文人 野原 健司 古澤 千春 七里 浩志 渾川 直子 浦垣 直子 川村 顕子 市川 竜也 潮田 健太郎 樋口 正仁 手賀 太郎 児玉 晃治 伊藤 雅浩 市村 政樹 松崎 浩二 平澤 桂 戸倉 渓太 中畑 勝見 児玉 紗希江 箱山 洋 矢田 崇 丹羽 健太郎 長井 敏 柳本 卓 斎藤 和敬 中屋 光裕 丸山 智朗
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.674-681, 2018-07-15 (Released:2018-08-31)
参考文献数
31
被引用文献数
3

スジエビには遺伝的に異なる2タイプ(AとB)が知られているが,簡便に判別できるマーカーがない。18S rDNAの塩基配列に基づき,これら2タイプを判別するマルチプレックスPCRアッセイを考案した。日本における本種の分布範囲を網羅する152地点で採集した422個体を分析したところ,各タイプ特有の断片を併せ持つ個体,すなわちヘテロ型は観察されず,AとBタイプは生殖隔離しているものと考えられた。両タイプとも全国的に分布するがAタイプは河川及び湖沼に分布する一方,Bタイプは河川のみで見られた。
著者
箱山 洋
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.197-202, 2015-07-30

特集:生態学におけるモデル選択の総括として、3つの論点を議論した。第一に、予測において問題とする自然現象(確率変数)を明確にすることの重要性について論じた。第二に、自然の構造の科学的証拠を得るためのモデル選択の規準を論じた。サンプルサイズが小さい場合、AICは真のモデルの構造から遠いモデルを選ぶ傾向があり、科学的証拠としては弱点がある。近似による不一致は、サンプルサイズによらない真の分布と近似分布の乖離であることから、その推定量を科学的証拠のための規準として提案した。第三に、豊かなモデル構築の方法論と適切なモデル選択の規準が、データから有益な情報を引き出すことを、まとめとして論じた。
著者
箱山 洋
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.157-167, 2015-07-30

データにモデルを当てはめるとは、観察した自然現象を確率変数で表現し、その確率分布を推定することである。頻度論的な立場からは、自然、もしくは、そのメカニズムを確率モデルとして正しく表現した「真のモデル」が、データを発生させたと考える。未知の真のモデルの確率分布をデータと近似モデルから精度よく推定できれば、結果としてよい予測につながる。本質的に、近似モデルのパラメータ数とデータに含まれる情報量が、確率分布の推定精度を決定する。また、一般に利用できるデータの量は限られている。したがって、与えられたデータに対してパラメータ数の異なる複数のモデルを用意し、最善のモデルを選択すること、すなわち、モデル選択が一つの統計学的な問題となる。ここでは、このようなモデル選択と予測に関する基本的な考え方を、ヒストグラム・モデル、線形回帰モデルを例としながら説明する。
著者
箱山 洋
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

無性型・有性型からなるフナ類の集団は同所的に共存している。この共存のメカニズムを理解することを目的とした。(1)野外個体群動態から、共存を可能にする3つの仮説(病気、中立、メタ個体群)を棄却した。(2)実験個体群で、有性生殖のオスを作るコストの個体群への影響を初めて実証した。(3)発育段階ごとに、有性・無性型の成長率の違いを明らかにした。結論として、共存メカニズムは出生率の差に関する何らかの要因によることが示唆された。