著者
張 成年 柳本 卓 小西光一 折田 亮 駒井智幸 小松浩典
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2019, pp.AA2019-1, 2019 (Released:2019-09-30)

Two individuals of “monster larvae” belonging to the genus Cerataspis (Decapoda: Penaeoidea: Aristeidae) were collected in the western North Pacific in 2016. The smaller one (carapace length 7.3 mm) was collected by daytime plankton net operation towed at a shallow layer (25 m to the surface), and the larger one (carapace length 11.5 mm) was collected by a nighttime plankton net operation towed from 208 m to the surface. These larvae have a pair of large spines on the lateral surface of the carapace, and in this regard they agree with C. petiti Guérin-Méneville, 1844 reported from the Atlantic. However, the mitochondrial 16S rDNA sequences of these two individuals matched with those of C. monstrosus Gray, 1828, the senior synonym of the widely used name Plesiopenaeus armatus (Spence Bate, 1881), suggesting that the presence and absence of the spine might be intra-specific morphological plasticity or variations among different developmental stages.
著者
張 成年 山本 敏博 渡辺 一俊 藤浪 祐一郎 兼松 正衛 長谷川 夏樹 岡村 寛 水田 浩治 宮脇 大 秦 安史 櫻井 泉 生嶋 登 北田 修一 谷本 尚史 羽生 和弘 小林 豊 鳥羽 光晴
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.190-197, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

アサリ殻模様の非対称性は優性遺伝形質である。非対称型(A)頻度は北海道と関東周辺で高く(14.5~28.1%),東北,浜名湖以西,中国で低かった(0~9.9%)。千葉県盤州では A 型頻度が低いと考えられる地域のアサリが 2007 年まで放流されてきた。盤洲の 2005 年度標本では殻長 20 mm 未満で A 型が 22%,25 mm 以上で 0% であり大型グループで放流個体が多いことが示されたが,2011 年以降の標本ではサイズによらず A 型が 17.2~20.3% 見られ,放流個体による遺伝的攪乱が限定的であることが示された。
著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008 (Released:2008-03-23)
参考文献数
60
被引用文献数
39 37

我が国のアサリ Ruditapes phillipinarum の総漁獲量は,1960 年には 10 万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982 年には 14 万トンまで増加したが,1984 年から激減して,1994 年にはわずか 3 分の 1 程度(5 万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984 年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。
著者
七里浩志 柳本 卓 今井 正 張 成年
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2020, pp.AA2020-5, 2020 (Released:2020-05-09)

Genetic diversity of common freshwater shrimp Palaemon paucidens in the Kanto region (Tokyo, Kanagawa and Chiba) of Japan, was investigated using mitochondrial 16S rDNA sequence analysis. All 98 individuals collected at 31 localities were determined to be type A, which included 52 individuals collected at 18 localities in Inner Tokyo Bay Basin. A total of 12 haplotypes were detected, which were phylogenetically classified into 3 groups (designated by A-I, A-II and A-III). Number of individuals comprising each group was 44 for A-I, 38 for A-II and 16 for A-III. A-II was determined to be an indigenous group distributing central to northern Japan. A part of A-I group may be domestic alien probably originated from Lake Biwa. A-III was determined to be invasive group probably originated from commercially imported individuals from Korea and/or China. Although the human-mediated contact between indigenous and alien groups must threat the genetic integrity of indigenous group, nothing is known about hybridization and genetic introgression among these groups.
著者
張 成年 柳本 卓 松崎浩二 小藤一弥 星野浩一
出版者
Aquos Institute
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2019, pp.AA2019-5, 2019 (Released:2019-09-30)

チゴダラとエゾイソアイナメ間には顕著な形態差がなく同種の可能性が指摘されてきたものの本邦ではこれらを別種として扱ってきた。その根拠として、前者は東京湾以南の深海(150‒650m)に分布し、眼径が大きく体色が淡褐色であること、後者は函館以南の浅海(数10m以浅)に分布し、眼径が小さく体色が濃褐色であること、が挙げられている。本研究では北海道から神奈川県の範囲で44個体のチゴダラ類標本を採集し、上記の表現型とともにミトコンドリアDNAの3領域(COI、16S rDNA、Dloop)の塩基配列を分析した。体色は個体間変異が大きいものの浅場標本(80m以浅)では濃褐色個体が多く、深場標本(200m以深)では淡褐色個体が多かった。眼径/吻長も個体間変異が大きく深場標本と浅場標本の平均値間に有意差はなかった。個体間および浅深標本間の遺伝的差異は非常に小さく種内個体間レベルの範囲であることが示された。データベースより入手したチゴダラ属他種の配列を加えた系統樹解析においても、本研究で分析した個体は全て独立したクレードに属し同種と考えられた。以上のことからチゴダラとエゾイソアイナメは同種であり、体色や眼径の変異は種内個体間差であることが示された。
著者
張 成年 丹羽 健太郎 岡本 俊治 村内 嘉樹 平井 玲 日比野 学 涌井 邦浩 冨山 毅 小林 豊 鳥羽 光晴 狩野 泰則
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.895-902, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
37
被引用文献数
3 5

2007 年に千葉県で突如発生した寄生性のカイヤドリウミグモ Nymphonella tapetis は愛知県,福島県でも確認された。これら 3 海域で採取した 110 個体の COI 塩基配列(562 bp)を決定した。個体間の塩基置換率は低く(0.2±0.07%),3 標本間で遺伝子型頻度に有意差は無かったことから,ごく最近に少数の同祖群から派生した個体群と考えられた。18S rDNA 配列による系統解析では,本種はトックリウミグモ属 Ascorhynchus より派生した分類群であることが示された。
著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎 YASUO MATSUKAWA NARITOSHI CHO SATOSHI KATAYAMA KOICHIRO KAMIO (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (株)東京久栄 National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency Tokyo Kyuei Co. Ltd.
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008-03-15
参考文献数
60
被引用文献数
8 37

我が国のアサリRuditapes phillipinarumの総漁獲量は,1960年には10万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982年には14万トンまで増加したが,1984年から激減して,1994年にはわずか3分の1程度(5万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。The annual catch of the Manila clam Ruditapes phillipinarum in Japan increased from 100 thousand tonnes in 1960 to 140 thousand tonnes in 1982. This increase occurred despite a local decrease in coastal fishing grounds due to land reclamation and helped to balance overall production. Since 1984, however, the catch has decreased drastically to only 50 thousand tonnes and has remained at this low level. The authors reviewed published reports relevant to the ecology and resources of Manila clam and concluded that the main factor responsible for the drastic decrease in catch is over-fishing. Over-exploitation of the adults and sub-adults significantly affected and damaged reproduction and source-sink relationships among localities. Disturbance of the clam habitat throughout the year by heavy fishing gear may also be responsible for lowering the survival rate of the juveniles.
著者
張 成年 今井 正 池田 実 槇 宗市郎 大貫 貴清 武藤 文人 野原 健司 古澤 千春 七里 浩志 渾川 直子 浦垣 直子 川村 顕子 市川 竜也 潮田 健太郎 樋口 正仁 手賀 太郎 児玉 晃治 伊藤 雅浩 市村 政樹 松崎 浩二 平澤 桂 戸倉 渓太 中畑 勝見 児玉 紗希江 箱山 洋 矢田 崇 丹羽 健太郎 長井 敏 柳本 卓 斎藤 和敬 中屋 光裕 丸山 智朗
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.674-681, 2018-07-15 (Released:2018-08-31)
参考文献数
31
被引用文献数
3

スジエビには遺伝的に異なる2タイプ(AとB)が知られているが,簡便に判別できるマーカーがない。18S rDNAの塩基配列に基づき,これら2タイプを判別するマルチプレックスPCRアッセイを考案した。日本における本種の分布範囲を網羅する152地点で採集した422個体を分析したところ,各タイプ特有の断片を併せ持つ個体,すなわちヘテロ型は観察されず,AとBタイプは生殖隔離しているものと考えられた。両タイプとも全国的に分布するがAタイプは河川及び湖沼に分布する一方,Bタイプは河川のみで見られた。
著者
張 成年 柳本 卓 小西光一 Charles H. J. M. Fransen
出版者
Aquos Institute
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2019, pp.AA2019-7, 2019 (Released:2019-09-30)

スジエビ(Palaemon paucidens De Haan, 1844)には遺伝的に異なる3タイプ(A、B、C)が発見されていることから複合種であると考えられる。2世紀近く前にシーボルトが採取しオランダの国立民族学博物館に収蔵されているタイプ標本の16S rDNAを分析したところ、AタイプのうちJA1ハプロタイプであることがわかった。JA1タイプは日本中部から南部にかけて最も多く出現するタイプであり、長崎周辺に限られていたシーボルトの活動範囲とも符合する。
著者
張 成年 柳本 卓 松崎浩二 小藤一弥 星野浩一
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.AA2019-5, 2019

チゴダラとエゾイソアイナメ間には顕著な形態差がなく同種の可能性が指摘されてきたものの本邦ではこれらを別種として扱ってきた。その根拠として、前者は東京湾以南の深海(150‒650m)に分布し、眼径が大きく体色が淡褐色であること、後者は函館以南の浅海(数10m以浅)に分布し、眼径が小さく体色が濃褐色であること、が挙げられている。本研究では北海道から神奈川県の範囲で44個体のチゴダラ類標本を採集し、上記の表現型とともにミトコンドリアDNAの3領域(COI、16S rDNA、Dloop)の塩基配列を分析した。体色は個体間変異が大きいものの浅場標本(80m以浅)では濃褐色個体が多く、深場標本(200m以深)では淡褐色個体が多かった。眼径/吻長も個体間変異が大きく深場標本と浅場標本の平均値間に有意差はなかった。個体間および浅深標本間の遺伝的差異は非常に小さく種内個体間レベルの範囲であることが示された。データベースより入手したチゴダラ属他種の配列を加えた系統樹解析においても、本研究で分析した個体は全て独立したクレードに属し同種と考えられた。以上のことからチゴダラとエゾイソアイナメは同種であり、体色や眼径の変異は種内個体間差であることが示された。
著者
松本 才絵 淡路 雅彦 日向野 純也 長谷川 夏樹 山本 敏博 柴田 玲奈 秦 安史 櫻井 泉 宮脇 大 平井 玲 程川 和宏 羽生 和弘 生嶋 登 内川 純一 張 成年
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.548-560, 2014 (Released:2014-08-01)
参考文献数
14
被引用文献数
4 10

組織観察によるアサリの生殖腺の発達状況及び肥満度の季節変化に関する調査を北海道,関東,中部,九州の 6 地点で 2010 年 4 月から 2012 年 11 月に行った。アサリは 1 個体中に 2 つ以上の発達段階が観察される場合が多かったので,生殖腺の発達段階は観察された各段階の頻度で評価した。組織観察の結果北海道では産卵期は夏であり,一方他の地点では春に産卵が始まり秋まで続き,盛期は春と秋の 2 回であった。肥満度の最大と最小は北海道でそれぞれ 2010 年 8 月と 10 月,その他の地点ではそれぞれ 2011 年 4 月と 12 月であった。
著者
張 成年
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.979-981, 2008-09-15
被引用文献数
2
著者
一井 太郎 張 成年 望岡 典隆 酒井 光夫 吉村 拓 山田 陽巳 本多 仁
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

胃内容物の検討にはそのホスト生物の種判別も重要であることからDNAを用いた重要水産動物稚仔の種同定についても継続した。イカ類の種判別に基づいた研究成果を利用し、系群及びイカ類の資源変動やイカ類を利用する魚類資源の動態についての研究を行った。また、まぐろ類については新規核遺伝子マーカーを用いた系統類縁関係についても検討した.イカ類幼生、ウナギ類幼生及びイセエビ類幼生について胃内容物ゲノム解析を継続するとともに、結果の取り纏めを行った。イカ類(アカイカ)とウナギ類(ウナギ、ハモ、アナゴ)については真菌類と微細真核生物に一致するDNAが多く検出されるとともに、ホスト自体の変異型も多く検出されたが、餌生物由来と考えられるDNA分子は検出できなかった。イセエビ科(Palinuridae)、セミエビ科(Scyllaridae)幼生からも同様な生物群とホスト変異型が検出されたが、尾索動物や刺胞動物といったゼラチナスプランクトンのDNAが共通して検出され、これらが餌生物として利用されていることが示された。イセエビ(Panulius japonicus)の近縁種であるカノコイセエビ(Panulirus longipes bispinosus)と大西洋の種(Panulirus echinatus)は秋季に採集された標本であり、これらのゼラチナスプランクトンが検出されたが、春季に採集されたイセエビからはこれらの生物が検出されず、硬骨魚類のDNAが検出された。この違いが季節や海域、あるいは種によるものかどうかは今後の検討課題である。