著者
橋本 求 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.463-469, 2012 (Released:2012-12-31)
参考文献数
39
被引用文献数
2 2

IL-17を産生するヘルパーCD4 T細胞(Th17細胞)は関節リウマチ(RA)などの様々な自己免疫性疾患の病態に重要な役割を果たす.IL-17は,好中球やマクロファージ,線維芽細胞,破骨細胞などに作用し,慢性炎症を惹起し,骨破壊を促進することで関節炎に寄与する.近年の自然発症のRAモデルマウスを用いた研究により,TLRやC-type lectin receptor,補体,ATPなど様々な自然免疫の活性化が,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に作用しIL-6やIL-23などのサイトカイン産生を介して,Th17細胞分化誘導を促し,自己免疫性関節炎を惹起するメカニズムが明らかとなってきた.ヒトRAにおけるTh17細胞の役割については未だ定まっていないが,自然免疫の活性化とTh17細胞の分化誘導は,少なくとも一部のRA患者において関節炎の発症にかかわっていると考えられる.これらの研究は,RAの発症メカニズムの解明やRA発症の予防,早期治療につながると考えられる.
著者
渡部 龍 山田 真介 橋本 求
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.2160-2165, 2021-10-10 (Released:2022-10-10)
参考文献数
8

JAK(Janus kinase)阻害薬は,経口投与可能な低分子化合物であり,生物学的製剤と異なり,複数のサイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害することにより,関節リウマチに対して有効性を示す.現在,我が国では5剤のJAK阻害薬が投与可能である.生物学的製剤と同等またはそれ以上の有効性を示すが,帯状疱疹等の副作用に注意を要する.今後,本邦における長期安全性の検証が重要である.
著者
大村 浩一郎 山本 奈つき 寺尾 知可史 中嶋 蘭 井村 嘉孝 吉藤 元 湯川 尚一郎 橋本 求 藤井 隆夫 松田 文彦 三森 経世
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.310a-310a, 2012

Myelin basic protein(MBP)は神経ミエリン鞘を形成する主要なタンパクであるが,関節リウマチ(RA)において,myelin basic proteinに対する自己抗体が高率に認められることを我々は以前報告した(PLoS One 2011; 6: e20457).ヒト脳由来抽出タンパクを抗原として用いた場合,抗MBP抗体はRAの約65%に認められ,特異度は膠原病患者を対照として83%であり,またその対応抗原は主にMBPタンパク自身ではなく,シトルリン化MBPに対する抗体であることも明らかにした.一方,MBPは神経系に発現するclassic MBPと神経系のみならず血球系にも発現するGolli-MBPのアイソフォームがあり,それぞれにまたいくつかのアイソフォームが存在する.RAで認められる抗MBP抗体の対応抗原がclassic MBPなのかGolli-MBPなのかは不明であったことから,classic MBPおよびGolli-MBPのrecombinantタンパクを作成しin vitroでシトルリン化し,ELISAで抗MBP抗体を検出したところ,その感度,特異度に差は認められなかった.現在Golli-MBPのアミノ酸配列(304アミノ酸)を15種類の25アミノ酸ペプチドでカバーし,それぞれのペプチドをシトルリン化して抗原とし,12人の抗MBP抗体陽性RA患者血清を用いてELISAにてエピトープマッピングを行っている.<br>