- 著者
-
吉藤 元
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
カルパインは,Ca依存性システインプロテイナーゼの1つだが,皮膚筋炎・多発性筋炎(PM/DM)の病変部位で過剰発現していることが知られ,筋炎病態への関与が示唆される.ミオシン誘発筋炎(MIM)は,マウス・ラットを異種動物ミオシンで免疫して筋炎を誘発する実験動物モデルで,病理学的検討からPM/DMの実験動物モデルと考えられている.昨年度,カルパイン阻害薬E-64-dによるMIMの治療を試み,E-64-d治療MIMマウス群で病理所見と小島分類による点数が対照群に比べ有意に改善したことを報告した.今年度は,MIM誘発マウスにおけるミオシン反応性Tリンパ球の分離・解析を試みた.ウサギミオシン0.2mgをCFAと懸濁乳化し,SJL/Jマウス(5週齢,雌)の尾根部に皮下注射し免疫した.9日後,マウス脾臓および鼠径リンパ節を採取し,MACSビーズ処理にてCD4陽性Tリンパ球のみを選別した.これらを刺激培養するため、ウサギミオシン15μg/mLを添加,別にマウス脾臓より得た放射線照射済みのAPCとともに培養した.培養32日後,それらTリンパ球を解析する目的で,0.0,0.63,1.3,2.5,5.0μg/mLのウサギミオシンとWST-8試薬を添加して,APCとともに培養した.WST-8添加8日後に吸光度を測定したところ,ミオシン濃度依存性にTリンパ球の増殖が促進された.ミオシン誘発筋炎におけるCD4陽性リンパ球の病態への関与が示唆された.カルパイン阻害によるマウス実験的筋炎モデルへの治療効果が示されており,カルパインがCD4陽性リンパ球によるサイトカイン産生などのヘルパー作用を阻害して薬理活性を発揮している可能性が考えられた.