著者
村上 孝作 吉藤 元 小林 志緒 川端 大介 田中 真生 臼井 崇 藤井 隆夫 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第33回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-10-18)

【目的】 抗Ku抗体は日本人の強皮症(SSc)+多発性筋炎(PM)の重複症候群に見出される自己抗体として報告された.しかし,米国ではSLEに最も多く検出されると報告され,人種ごとの遺伝的背景の違いによると考察されてきた.そこで我々は抗Ku抗体陽性の自験例について臨床的特徴を検討した.【方法】 2001年から2004年までに当院で診療した膠原病とその疑い例1185例の保存血清についてRNA免疫沈降法を施行し,高分子核酸スメアを沈降した血清をさらに35S‐メチオニン標識HeLa細胞を用いた蛋白免疫沈降法を行って抗Ku抗体を同定した.【結果】 70kDa / 80kDa蛋白へテロ2量体を免疫沈降する抗Ku抗体は6例(0.51%)に陽性であり,SLEとPMの重複例2例,SLE 2例(1例はCK値上昇あり),PM 1例,未分類膠原病(レイノー現象・手指硬化症・クリオグロブリン血症・CK値上昇)1例であった.抗Ku抗体陽性6例中,PMないし筋病変は5例に,SLEないしSLE様症状は4例に,両者の重複は3例に認められた.また,多発関節炎が5例に,レイノー現象が4例に,手指硬化などの強皮症様症状が2例に認められた.【結語】 少数例の解析ではあるが,抗Ku抗体は筋炎重複症候群と関連し,特徴的な臨床像を示す可能性が示唆された.
著者
藤井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.243-250, 2016-12-30 (Released:2017-02-28)
参考文献数
33

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)の中枢神経障害(neuropychiatric SLE, NPSLE)は比較的高頻度に認められる重症病態である.その発症機序には不明な点が多いが,NPSLEでは一部の自己抗体・抗核抗体の陽性頻度が高いことが報告されている.しかし血清中自己抗体の臨床的意義は必ずしも明確でないことが多く,脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)中の自己抗体がより重要である.抗NR2抗体の場合,CSF中の抗体陽性と精神症状(認知障害あるいは急性錯乱状態)との関連が明らかであるが,その病原性を発揮するためには血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の透過性亢進が必須である.一方われわれはCSF中の抗U1RNP抗体がNPSLEの診断に有用であることを報告したが,CSF中の抗U1RNP抗体はBBBの透過性亢進に依存せず,特定のNPSLE症状との相関は判明していない.なお抗リン脂質抗体は神経障害(特に脳血管障害),抗リボゾームP抗体はループス精神病や認知障害と関連することが知られ,ともに抗体の病原性が強く示唆されている.今後,これらの自己抗体がNPSLE症状の予測因子としてのみでなく,治療選択にも活用できるようなバイオマーカーになることが期待される.
著者
岡本 裕行 内橋 康充 ルォン ゴォク カーン 宮原 照夫 川面 克行 西山 孝 藤井 隆夫 古川 憲治
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.318-327, 2009-07-20
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

anammox処理を応用してビール工場排水の窒素量を効率良く削減することを目指し,アサヒビールの工場において実際の排水を用いて,anammox処理に適用させるための前処理実験を実施した.供試排水のTOC値の18.5%は酢酸とプロピオン酸から成り曝気処理で容易に分解した.有機物分解後にアンモニア態窒素酸化が起こる事象が確認され,前処理工程としてはアクリル繊維担体で微生物を固定化した曝気槽(有効容積360 L)で有機物の除去(活性汚泥処理)を行った後,同型の曝気槽にて部分亜硝酸化処理を行うプロセスが構築できた.<br>半年間の連続実証運転において,有機物除去能力1.5–2.4[kg-TOC/m<sup>3</sup>/d]程度,部分亜硝酸化処理能力は1.5–2.5[kg-NH<sub>4</sub>/m<sup>3</sup>/d]程度であった.供試排水への急激な高濃度排水あるいは浮遊性懸濁物質(Suspended Solid : SS)の流入や運転ミスがない限りは,有機物を80%除去した上,亜硝酸化率が50%付近で維持できる前処理が可能であることを連続1ヶ月間確認することができた.

1 0 0 0 OA 1.自己抗体

著者
藤井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.2395-2400, 2014-10-10 (Released:2015-10-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

膠原病において臨床的意義を有する自己抗体は多く報告されてきた.多発性筋炎/皮膚筋炎では自己抗体により予後推定が可能で,しばしば致命的となる急性~亜急性間質性肺炎と抗MDA5抗体,癌合併皮膚筋炎と抗TIF1-γ抗体との関連が明確に示され,治療方針に強く影響を与えるマーカーとなっている.また,中枢神経ループスでは脳脊髄液中の自己抗体(抗NR2抗体,抗U1RNP抗体)が重要であり,病因的意義が示唆されている.
著者
大村 浩一郎 山本 奈つき 寺尾 知可史 中嶋 蘭 井村 嘉孝 吉藤 元 湯川 尚一郎 橋本 求 藤井 隆夫 松田 文彦 三森 経世
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.310a-310a, 2012

Myelin basic protein(MBP)は神経ミエリン鞘を形成する主要なタンパクであるが,関節リウマチ(RA)において,myelin basic proteinに対する自己抗体が高率に認められることを我々は以前報告した(PLoS One 2011; 6: e20457).ヒト脳由来抽出タンパクを抗原として用いた場合,抗MBP抗体はRAの約65%に認められ,特異度は膠原病患者を対照として83%であり,またその対応抗原は主にMBPタンパク自身ではなく,シトルリン化MBPに対する抗体であることも明らかにした.一方,MBPは神経系に発現するclassic MBPと神経系のみならず血球系にも発現するGolli-MBPのアイソフォームがあり,それぞれにまたいくつかのアイソフォームが存在する.RAで認められる抗MBP抗体の対応抗原がclassic MBPなのかGolli-MBPなのかは不明であったことから,classic MBPおよびGolli-MBPのrecombinantタンパクを作成しin vitroでシトルリン化し,ELISAで抗MBP抗体を検出したところ,その感度,特異度に差は認められなかった.現在Golli-MBPのアミノ酸配列(304アミノ酸)を15種類の25アミノ酸ペプチドでカバーし,それぞれのペプチドをシトルリン化して抗原とし,12人の抗MBP抗体陽性RA患者血清を用いてELISAにてエピトープマッピングを行っている.<br>