- 著者
-
藤井 隆夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.243-250, 2016-12-30 (Released:2017-02-28)
- 参考文献数
- 33
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)の中枢神経障害(neuropychiatric SLE, NPSLE)は比較的高頻度に認められる重症病態である.その発症機序には不明な点が多いが,NPSLEでは一部の自己抗体・抗核抗体の陽性頻度が高いことが報告されている.しかし血清中自己抗体の臨床的意義は必ずしも明確でないことが多く,脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)中の自己抗体がより重要である.抗NR2抗体の場合,CSF中の抗体陽性と精神症状(認知障害あるいは急性錯乱状態)との関連が明らかであるが,その病原性を発揮するためには血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の透過性亢進が必須である.一方われわれはCSF中の抗U1RNP抗体がNPSLEの診断に有用であることを報告したが,CSF中の抗U1RNP抗体はBBBの透過性亢進に依存せず,特定のNPSLE症状との相関は判明していない.なお抗リン脂質抗体は神経障害(特に脳血管障害),抗リボゾームP抗体はループス精神病や認知障害と関連することが知られ,ともに抗体の病原性が強く示唆されている.今後,これらの自己抗体がNPSLE症状の予測因子としてのみでなく,治療選択にも活用できるようなバイオマーカーになることが期待される.