著者
安井 幸則 橋本 義武 坂口 真
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンパクトなEinstein多様体および特殊ホロノミー群を持つRiemann多様体の幾何学をブラックホールの視点から研究することを目標とした.このような幾何学は物理的には,高次元のゲージインスタントンそして重力インスタントンと捕らえられるものであり,超弦理論やM理論の最近の進展から予想される幾何学の新しい方向を探ろうとする問題意識と深く関わっている.特に,コンパクトなSasaki-Einstein多様体に関しては,重力理論/ゲージ理論対応を使って超対称ゲージ理論の強結合領域を調べることができるため,最近大きな注目を集めている.主な研究成果は以下のとおりである.1.Lorentz解を正定置Einstein計量に解析接続する方法と,ある種の極限操作を組み合わせて5次元de SitterKerrブラックホールから球面東上に無限個の非等質な新しいEinstein計量を構成した.2,トーリックSasaki-Einstein多様体上のラプラシアンのスペクトラムを解析した.特に,基底状態のスペクトラムはゲージ理論側のカイラル・プライマリー演算子を再現することを示した,この結果は,重力理論/ゲージ理論対応の1つの検証を与えるものである.3.4次元Tod-Hitchinオービフォルド空間を底空間とするSU(2)束に3-Sasakian計量を構成した.底空間のオービフォルド特異点は全空間では解消されスムーズな7次元Einstein多様体を得ることができた.4.6次元de Sitter NUTブラックホールのBPS極限から新しいCalabi-Yau計量を複素線東上に構成した.この計量は4次元の重力インスタントンの自然な高次元拡張とみなすことができる.5.Sasaki-Einstein計量を持つ5次元多様体が与えられると,ブレーンタイリングと呼ばれる手法を用いて双対な超対称ゲージ理論を構成することができる,我々はこの手法を使って,新しい無限シリーズのクイバー・ゲージ理論を構成した.
著者
橋本 義武 阪口 真 大場 清 安井 幸則 中井 洋史
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

グロタンディークの双二十面体に基づいて,通信理論における誤り訂正符号に用いられるゴレイ・コード,ウィット・デザインの構成を見直した.C2有限頂点代数の共形場理論において,量子場の相互作用を記述するフュージョン積と因子化の定式化をおこなった.
著者
大仁田 義裕 加藤 信 小森 洋平 酒井 高司 橋本 義武 小池 直之 田中 真紀子 入江 博 宇田川 誠一 谷口 哲也 GUEST Martin 田丸 博士 江尻 典雄 安藤 直也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

微分幾何学における部分多様体論は,ガウス以来の歴史の長い学問分野で,常に他の諸分野と関わりながら発展してきた.本研究課題は,有限次元および無限次元リー理論,幾何学的変分問題,可積分系理論,幾何解析等の分野と関わり,伝統的な方法を踏まえ無限次元的手法まで視点を広げて,部分多様体論の研究を広範かつ集中的に組織・推進した.有限次元および無限次元等径部分多様体,ラグランジュ部分多様体のハミルトン変分問題,調和写像と可積分系等を研究推進,新しい方法と結果を与えた.また,この研究領域における国際的な協力体制を整備し,若手研究者たちの活動も大いに促進した.
著者
大場 清 横川 光司 橋本 義武
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

我々は,複素平面上のある種の図形である稲妻対というものを考え,その稲妻対からdipoleを持つリーマン面を構成する方法を利用して,リーマン面のモジュライ空間の位相的な性質を明らかにしていくことを目的として研究を進めた.稲妻対は,深度と呼ばれる非負整数と複素数のあるある条件を満たす列と対称群の対という組み合わせ的データにより与えられるものであり,そのデータからリーマン面の種数が如何に決まるかを決定した.また,リーマン面上の2次微分に關するStrebelの研究を通して,我々の研究がdipoleのみの状況から一般の第2種アーベル微分を持つリーマン面へと拡張できることがわかった.リーマン面は標数0の代数曲線であるが,正標数の代数曲線に関しても,前丹後構造という概念を導入して,小平の消滅定理が成立しない代数曲面をモジュライ空間の中で正の次元をもつほど多く構成することができた.数理物理的側面からは,最も基本的なリーマン面である2次元球面に関連して,5次元Ads Kerrブラックホールの2つの地平線を近づけrescaleして極限をとることにより,2次元球面上の3次元球面束上に可算無限個の新しいEinstein計量を構成することに成功した.また,Killingベクトル場のツイストにより,Gauntlettたちにより構成されたコンパクトな佐々木-Einstein多様体を再構成することも行った.一方,稲妻対のある種の高次元化として,6次元球面にsmoothに埋め込まれた3次元球面たちを考えた.これはHaefliger結び目と呼ばれる高次元結び目であり,我々は(6,3)-型のHaefliger結び目の結び目解消数を定義して,そのすべてを決定した.
著者
安井 幸則 橋本 義武 大田 武志 阪口 真 阪口 真
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年の超弦理論の発展は高次元のEinstein方程式を解析する大きな動機づけを与えた. このような流れの中で高次元ブラックホールに存在する隠れた対称性を発見した.この結果をさらに発展させ「高次元ブラックホール解の一意性定理」を証明した. また,高次元ブラックホール解をコンパクト化することにより得られる佐々木Einstein計量を使ってゲージ・重力理論対応の検証を行った