著者
増田 宏司 橋爪 千恵 菊水 健史 武内 ゆかり 森 裕司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.183-187, 2004-02-25
参考文献数
19
被引用文献数
7

人においてカテコールO-メチル基転移酵素(COMT)遺伝子の第4エクソンに存在する一塩基多型(G322A)はバリンからメチオニンヘのアミノ酸置換を伴い,酵素の活性を変化させるとともに"固執"や"統合失調症"といった性格や精神疾患との関連が示唆されている.そこで,犬における同様な多型を検索する目的で,まず犬のCOMT遺伝子断片のPCR増幅を試みた.得られた663 bp の遺伝子は人やラット,マウスのCOMT遺伝子と82%以上の相同性を有しており,犬COMT遺伝子である可能性が示された.続いて10頭のビーグル犬より得られたcDNAをもとに同遺伝子の多型部位を検索したところ,翻訳領域39,216,482番目に一塩基多型(G39A, G216A, G482A)が認められ,そのうちG482Aはアルギニンからグルタミンヘのアミノ酸置換を伴うものであった.さらに5犬種(ゴールデンレトリバー,ラブラドールレトリバー,マルチーズ,ミニチュアシュナウザー,シバ)から成る計266頭の血液より得られたゲノムDNAを用いてこれらの一塩基多型の発現頻度を犬種別に比較したところ,遺伝子型およびアレル頻度ともにG216AおよびG482Aについて有意な犬種差が認められた.これらの結果より,得られた遺伝子多型が犬の性格特性の遺伝的背景を探る上で有用な手掛かりとなる可能性が示された.
著者
橋爪 千恵 大友 理宣 高倉 はるか 高嶋 亜希子 畠 恵司
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.72-79, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
14

米糠発酵粉末は、米糠を植物性乳酸菌により乳酸発酵させて作出したものである。これまでにラットに継続的に経口投与した結果、米糠発酵粉末には内臓脂肪重量および血中中性脂肪値の減少作用が認められることが明らかになっている。本研究では、年齢、性別、体重の異なる様々な犬種の家庭犬を対象として、イヌそれぞれの体重に従った量の米糠発酵粉末をサプリメントとして8週間継続的に摂取させ、その変化を飼い主へのアンケート形式により調査した。投与開始直前、投与2、4、6および8週間後における腹囲と体重の計測、行動学的変化、生理学的変化、およびサプリメントの印象に関するアンケート設問の回答を集積し、解析に用いた。サプリメントを8週間継続投与できた個体はモニター全体の81.5%であった。個体の腹囲および体重の変動率を比較したところ、開始前に比べ4週間後、6週間後、および8週間後において、腹囲が有意に減少した。また、8週間後のサプリメントの嗜好性についてのアンケート設問では、「ほかのおやつやフードより好んで口にした」あるいは「ほかのおやつやフードと同等の嗜好性が見られた」とした回答が、モニター全体の70.4%となっていた。これらのことから、本サプリメントには継続投与によって腹囲の減少効果が認められ、補助栄養食でありながら、その嗜好性はイヌのおやつやフードとして許容される高さを持つと思われた。