- 著者
-
武内 ゆかり
森 裕司
- 出版者
- 社団法人日本獣医学会
- 雑誌
- The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.8, pp.789-796, 2006-08-25
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
3
51
日本で飼育されている純血種犬56品種の行動特性を明らかにする目的で,96名の小動物臨床獣医師に村してアンケート調査を行った.方法は米英国における先行研究に準じた.その結果,米国と同じく,13項目全ての行動特性について有意な品種差が検出された.また,他犬に対する攻撃性,縄張防衛,興奮性,一般的な活動性,飼い主に村する攻撃性,破壊性,警戒咆哮,子供に対する攻撃性については雄の方が,また服従性とトイレのしつけについては雌の方が高いと有意に多くの獣医師が感じていることが明らかとなった.遊び好き,無駄吠え,愛情要求については,性差がないと考えている獣医師が有意に多かった.この結果についても米英国での調査と比較すると傾向はほぼ一致した.さらに調査データを因子分析により解析した結果,米英国のデータより1つ少ないものの,共通する3つの因子(攻撃性,反応性,訓練能)が抽出された.また米国のデータと比較するために,これら3つの因子得点をもとにクラスター分析を行い,全犬種を7クラスターに分類したところ,米国と共通して調査された38犬種のうち22犬種が同一クラスターに分類された.これらの結果より,地域的・文化的背景が異なるにもかかわらず,日本においても米英国と同じように純血犬種や性別によって行動特性の異なることが示唆され,多くの犬種についてその行動特性が類似していることが明らかとなった.