著者
橘 健一 渡辺 和之
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ネパールの諸民族・カースト集団における動物認識を調査し、それらに見られる人間/動物の分割線や接点のあり方を明らかにすることを目指した。先住民チェパンにおいてはシカやトラが他者として排除される一方、人間自身にもそれらの力が結びつけられていることを確認した。グルンにおいては昆虫のナナフシが祖先霊として恐れられ、山地ヒンドゥー教徒のあいだではカマキリが死をもたらす存在として忌み嫌われることがわかった。ネワールにおいては虫の様な小さな存在が排除されつつ自己に結びつけられることを、タルーにおいては動物を呼ぶ媒介者が恐怖されていることがわかった。こうした動物認識から、動物の排除と包摂の状況が確認された。
著者
渡辺 和之 橘 健一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、自動車道路の開通した現在でも、ヒマラヤ交易が形を変えて継続していることを、ネパール国内での現地調査によって実証した。特に畜産物に注目し、その生産から消費に至る流通経路を調べることで、交易を支える諸条件を明らかにした。この結果、交易が山地住民の農業・牧畜・森林利用の複合経済を基盤とし、他地域や都市や海外とも関わる交易ネットワークに支えられることが示した。また、とかく一方向的に都市の商品が流通すると見られていた山地経済を見直し、出稼ぎ経済の浸透で過疎化する山地経済を支え、存続する基盤は何か考察した。
著者
南 真木人 安野 早己 マハラジャン ケシャブラル 藤倉 達郎 佐藤 斉華 名和 克郎 谷川 昌幸 橘 健一 渡辺 和之 幅崎 麻紀子 小倉 清子 上杉 妙子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2008年、マオイストことネパール共産党(毛派)が政権を担い、王制から共和制に変革したネパールにおいて、人民戦争をはじめとするマオイスト運動が地域社会や民族/カースト諸団体に与えた影響を現地調査に基づいて研究した。マオイストが主張する共和制、世俗国家、包摂・参加の政治、連邦制の実現という新生ネパールの構想が、大勢では変化と平和を求める人びとから支持されたが、事例研究からその実態は一様ではないことが明らかになった。