- 著者
-
櫛田 達矢
中島 敦司
永田 洋
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.1, pp.57-64, 1999-02-16
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
-
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アカマツの冬芽内の葉原基の形成経過と日長反応性の関連から, 土用芽の発生要因を検討した。1年生苗を2月20日, 3月7,22日の各日からガラス室で加温処理した後, 5月22日に野外に搬出し, 主軸の先端に形成された冬芽の土用芽の発生状況を調査した。その結果, 早い時期から加温した個体ほど, より早い時期に冬芽内の節間が伸長し始め, 土用芽の発生率も高く, 二次伸長量も大きくなった。また, 3月6日から6月4日まで加温した処理区(加温区)と無加温区の冬芽を定期的に採取し, 冬芽内に形成された葉原基の数を解剖学的な方法で調べたところ, 加温区では冬芽内の節間で急激な伸長の認められた8月中に, 90以上の葉原基の形成が確認された。一方, 無加温区で90以上の葉原基が確認されたのは9月上旬の短日条件になってからであり, 節間の急激な伸長はみられなかった。以上の結果, アカマツの土用芽とは, 90〜100程度まで葉原基を形成した冬芽において, その内部の節間が野外の14時間以上の長日条件で伸長成長したものと考えられた。