著者
岩崎 貢三 康 峪梅 田中 壮太 櫻井 克年 金 哲史 相川 良雄 加藤 伸一郎 NGUYEN VAN Noi LE THANH Son BANG NGUYEN Dinh VENECIO ULTRA Jr. Uy. TRAN KHANH Van ZONGHUI Chen NGUYEN MINH Phuong CHU NGOC Kien 小郷 みつ子 福井 貴博 中山 敦 濱田 朋江 杉原 幸 瀬田川 正之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, (1)ハノイ近郊の鉱山周辺土壌における重金属汚染, (2)紅河流域畑土壌における有害金属・農薬残留に関する調査を実施し, 特に有害金属に関し, 工場・鉱山を点源とする汚染と地質に由来する広域汚染が存在することを明らかにした. また, これら金属汚染土壌の植物を用いた浄化技術について検討するため, 現地鉱山周辺で集積植物の探索を行ない, Blechnum orientale L.やBidens pilosa L.を候補植物として見出した.
著者
康 峪梅 大谷 真菜美 櫻井 克年
出版者
環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.329-335, 2009-09-30
参考文献数
16
被引用文献数
1

クロム(Cr),銅(Cu)およびヒ素(As)を主成分とした木材防腐剤CCAは日本で40年ほど前から使用されてきた。現在その廃材の大量排出が問題となっている。しかし,CCA廃材の非適切な扱いによって土壌に混入したCCAの挙動や周辺環境への影響についてはほとんど報告されていない。本研究では,CCAが混入した土壌のCr,CuおよびAs含量と形態,さらにその土壌に生育していた植物を分析し,CCAの土壌環境中での挙動について検討した。<BR>高知県内にあるビニールハウス解体後のCCA処理廃材置き場で土壌と植物を,またこの地点から約20 m離れた自然林で対照試料の土壌と植物を採取した。土壌の全Cr,Cu,As含量,塩酸可溶性含量を測定し,さらに逐次抽出法を用いて三元素を分画し定量した。植物については全Cr,Cu,As含有率を測定した。<BR>廃材置き場内で採取したすべての土壌は対照試料より高いCr,CuおよびAs含量を示した。その内廃材焼却跡地で採取した土壌は全Cr,CuとAs含量がそれぞれ3450, 2310と830 mg kg<SUP>-1</SUP>と極めて高い値であった。この土壌について塩酸浸出並びに逐次抽出を行った結果,Asの約14%が可溶性画分に,また約50%が可動性画分に存在し,溶出しやすいことが示唆された。Cuは可溶性と可動性画分にそれぞれ4.1%と66%が測定され,土壌のpHや酸化還元電位の変化によって溶出しやすいことが考えられた。CrはAsとCuと比べると可動性が低く,全含量の95.5%が残渣画分に存在した。一方,廃材焼却跡地で採取した植物2個体は三元素ともBowenが提示した陸上植物のCr,CuおよびAs含有率の最大値を上回った。これらの結果から,CCA処理廃材の積み置きや焼却などの非適切な扱いは土壌,植物や水系など周辺環境に影響を及ぼす可能性が示された。
著者
康 峪梅 川本 純 金田 幸 有留 究 櫻井 克年
出版者
DEEP OCEAN WATER APPLICATION SOCIETY
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.43-52, 2004-10-29 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20

海洋深層水は新しい機能性資源として注目を集めている.今では, 水産物の養殖, 食品製造, 化粧品開発, 医療・健康や農業など様々な分野で利用されるようになり, 多くの成果が報告されている.しかし, その機能メカニズムは必ずしも十分に解明されていない.その原因の一つは微量元素を含む海洋深層水の基礎的性質の解明が欠如していることである.それゆえ, 本研究では生体中で過酸化を防止し, 免疫能力を高める微量元素セレンを取り上げ, 室戸海洋深層水のセレン特性にっいて検討を行なった.室戸海洋深層水の全セレン含量 (2.3±0.19nM) は表層水 (1.6±0.31nM) や河川水 (1.0-1.3nM) に比べて顕著に高いことが判った.溶存形態別にみると, 表層水や河川水でセレン酸イオンの割合 (>50%) が高いのに対して, 深層水ではセレン酸イオン, 亜セレン酸イオンと有機態セレンの割合がほぼ同レベルであった.表層水や河川水と比較して, 深層水の亜セレン酸イオンと有機態セレンの割合が高かった.海洋表層では亜セレン酸イオンが生物に選択的に吸収されるとの報告があり, そのために深層水で亜セレン酸イオン濃度が相対的に高くなっているのではないかと考えられる.また, 有機態セレンは分解されずに深層に沈降してくる生物遺体などに由来するものと推察される.1年間の変動を調べたところ, 深層水の全セレン濃度の変動 (変動係数, 8.6%) は表層水 (19.7%) より小さく, 比較的安定であった.深層水のセレンを粒径別にみると, 溶存態セレンが最も多く (64%), 続いて粒径>0.45μm (24%) と0.22-0.45μmの懸濁態 (12%) の順となり, 懸濁態の割合がかなり高いことが分かった.また, 粒径が大きくなるにつれて有機態画分のセレン含量が高くなるのに対し, セレン酸と亜セレン酸イオン含量はほとんど変化が認められなかった.これは深層水のpHが7.8と高いために, 無機態セレンが粒子に吸着されることなく, 溶存態で存在するためと考えられた.懸濁態の内訳は生物破片に含まれるセレンが55%, 無機粒子に含まれるセレンが45%を占め, いずれも細かい粒子に多く含まれていた.また, 溶存有機態セレンの約70%が遊離アミノ酸あるいはペプチドに含まれることが明らかになった.以上の結果より, 室戸海洋深層水のセレン特性は表層水や河川水と大きく異なることが明らかとなった.しかし, 他の海域の深層水と比較すると, セレンの濃度と形態は同様な傾向を示した.
著者
櫻井 克年
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-40, 1999 (Released:2009-02-28)
参考文献数
24
被引用文献数
9 10

ボルネオ島は世界で3 番目に大きな島である。ボルネオ島は熱帯雨林機構下にあり,その大部分は低地フタバガキ林で覆われている。土境の性質は主に母材(第3 紀の砂岩・頁岩)と地形で、決まっている。丘陵地の土壊はその大部分がマレーシアの土壊分類では赤黄色ポドソル性土である(FAO/UNESCO の分類ではAcrisols ,アメリカ農務省の分類ではUltisols に相当)。一方,低地には泥炭土壌や沖積土壌が分布する。丘陵地と低地の境界には,石英に富む粗砂を主体としたケランガス(ヒース林しか成立しない)が分布する。熱帯土壌の特徴としてしばしば取り上げられる,表層での養分の遍在は,ボルネオ島の森林土壌には必ずしも当てはまらない。地表から5cm までと70cm までに存在する交換性陽イオンの比は,温帯である日本の森林土壊の比と変わらない。土地利用可能性指標は,主に傾斜によって分級され,土壌酸性の強さによって細分化されている。焼畑は,ボルネオ島の伝統的な農業形態である。油ヤシ園やコショウ畑と比較すると,傾斜地において無耕起で行う陸稲栽培は,土壌侵食が小さく持続的な農法といえる。しかし地域住民にとっては換金作物の栽培も重要な側面であることから,土壌侵食対策を十分に考慮に入れたアグロフォレストリーシステムの構築が不可欠であろう。
著者
飯国 芳明 岩崎 貢三 櫻井 克年
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.山地酪農の「塾畑化」の経営学的考察:経営の立ち上げ期にはシバ草地の「熟畑化」が伴わないため,濃厚飼料(購入飼料)に大きく依存した経営を強いられる。しかも この時期には牛の馴化の遅れによって搾乳量や乳脂肪の低下が起こるために収入が低下する。また,借入金返済の資金繰り等の問題も重複して現れる。このため,造成後3年から4年目までは通常の経営主体では維持できない水準にまで収益が低下することが明らかとなった。今後一層の普及をはかるためには「芝草地活用肉用牛放牧促進事業」型の数年にわたるシバ草地に対する政策的支援(補助体系)が不可欠である。また,今回の研究を通じて家畜を扱う有機農業の場合には「熟畑化」ばかりでなく,家畜の「馴化」の重要性も明らかになった。今後は「馴化」のプロセスについても学際的な研究を行う必要があると考えられた。2.山地酪農の「熟畑化」の土壌学的考察:高知県南国市の斉藤牧場において,造成10年後の新しい草地と25年後の古い草地を比較することによって以下の知見を得た。古い草地では表層・下層ともに,肥沃度および団粒構造の発達による保水性・透水性の向上が顕著であった。一方,新しい草地の表層での肥沃度の向上は下層にまでは及んでいないことに加えて,牛糞由来の有機物添加の履歴が短く表層での排水性がやや不良であった。低分子有機酸の蓄積量は排水性の不良な新しい草地の表層で最も多かった。新しい造成地の荷電ゼロ点が低いのは,非晶物質が少なく有機物や酸性の強い粘土が多いためであることがわかった。ただし,数十年後には低肥沃度でもバランスのとれた安定した草地へと変化するものと考えられた。また,草地内・外の水を分析した結果,系外よりも系内が,また古い草地よりも新しい草地のほうが溶存イオンの量が多くpHも高かった。しかしながら新しい草地においても,日本シバ利用の山地酪農は水系の富栄養化を引き起こしておらず,環境保全型畜産業であるといえよう。