著者
山口 奈保美 金田 幸司 木本 美由起 末永 裕子 大野 絵梨 内田 英司 福長 直也 柴田 洋孝
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.465-470, 2021 (Released:2021-09-28)
参考文献数
16

症例は65歳男性.糖尿病性腎症による末期腎不全に対して腹膜透析を導入した.導入から半年後にESA(erythropoiesis stimulating agent)低反応性貧血を呈するようになり,精査にて胃に生じたangiodysplasiaからの出血を認めた.内視鏡的止血術後,貧血コントロールは改善していたが,加療から8か月後に再度胃のangiodysplasiaからの出血を生じ貧血の進行を認めた.内視鏡的止血術を行い,数日後のフォローアップにて,胃の他部位にangiodysplasiaからの出血を認め再度止血術を要した.それから4か月後に真菌感染が疑われた難治性腹膜炎を発症し血液透析へ移行したところ,以降は消化管出血を起こさずに経過している.末期腎不全患者において,消化管のangiodysplasiaからの出血は療法別では腹膜透析より血液透析症例の割合のほうが多いが,本症例においては腹膜透析から血液透析へ移行したことがangiodysplasiaからの再出血を防ぐことに繋がった可能性がある.
著者
康 峪梅 川本 純 金田 幸 有留 究 櫻井 克年
出版者
DEEP OCEAN WATER APPLICATION SOCIETY
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.43-52, 2004-10-29 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20

海洋深層水は新しい機能性資源として注目を集めている.今では, 水産物の養殖, 食品製造, 化粧品開発, 医療・健康や農業など様々な分野で利用されるようになり, 多くの成果が報告されている.しかし, その機能メカニズムは必ずしも十分に解明されていない.その原因の一つは微量元素を含む海洋深層水の基礎的性質の解明が欠如していることである.それゆえ, 本研究では生体中で過酸化を防止し, 免疫能力を高める微量元素セレンを取り上げ, 室戸海洋深層水のセレン特性にっいて検討を行なった.室戸海洋深層水の全セレン含量 (2.3±0.19nM) は表層水 (1.6±0.31nM) や河川水 (1.0-1.3nM) に比べて顕著に高いことが判った.溶存形態別にみると, 表層水や河川水でセレン酸イオンの割合 (>50%) が高いのに対して, 深層水ではセレン酸イオン, 亜セレン酸イオンと有機態セレンの割合がほぼ同レベルであった.表層水や河川水と比較して, 深層水の亜セレン酸イオンと有機態セレンの割合が高かった.海洋表層では亜セレン酸イオンが生物に選択的に吸収されるとの報告があり, そのために深層水で亜セレン酸イオン濃度が相対的に高くなっているのではないかと考えられる.また, 有機態セレンは分解されずに深層に沈降してくる生物遺体などに由来するものと推察される.1年間の変動を調べたところ, 深層水の全セレン濃度の変動 (変動係数, 8.6%) は表層水 (19.7%) より小さく, 比較的安定であった.深層水のセレンを粒径別にみると, 溶存態セレンが最も多く (64%), 続いて粒径>0.45μm (24%) と0.22-0.45μmの懸濁態 (12%) の順となり, 懸濁態の割合がかなり高いことが分かった.また, 粒径が大きくなるにつれて有機態画分のセレン含量が高くなるのに対し, セレン酸と亜セレン酸イオン含量はほとんど変化が認められなかった.これは深層水のpHが7.8と高いために, 無機態セレンが粒子に吸着されることなく, 溶存態で存在するためと考えられた.懸濁態の内訳は生物破片に含まれるセレンが55%, 無機粒子に含まれるセレンが45%を占め, いずれも細かい粒子に多く含まれていた.また, 溶存有機態セレンの約70%が遊離アミノ酸あるいはペプチドに含まれることが明らかになった.以上の結果より, 室戸海洋深層水のセレン特性は表層水や河川水と大きく異なることが明らかとなった.しかし, 他の海域の深層水と比較すると, セレンの濃度と形態は同様な傾向を示した.
著者
大野 森太郎 金田 幸裕 原田 利宣
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.6_61-6_68, 2016

近年のタブレット端末の普及により,様々なアイコンを目にする機会が増えている.しかし,ユーザの認知過程や嗜好性の違いによりアイコンの理解度や魅力度は異なる.そこで,本研究では,ラフ集合理論を用いたアイコンの魅力度および分かりやすさの分析を目的とした.具体的には,まず,既存アイコンの魅力度と分かりやすさについて調査実験を行い,アイコンを構成する形態要素(属性値)を抽出した.次に,その属性値がどのように魅力度や分かりやすさに影響しているかを明らかにするため,ラフ集合理論を用いて各被験者の決定ルールを求めた.また,決定ルールから各被験者間の共起率を算出し,クラスター分析を用いて被験者を分類した.さらに,各クラスターが魅力的,もしくは分かりやすいと感じる属性値を抽出した.さらに,各クラスターに対応したサンプルアイコンを制作し,その属性値の有効性の検証を行った.
著者
金田 幸恵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

雲や降水を直接計算し、より現実的な台風の内部構造を表現する極めて高解像度の雲解像モデルを用いて、極端に強い台風の急激な中心気圧低下メカニズムを調査した。まず最低中心気圧877hPaに達した歴史的顕著台風・1958年9月狩野川台風の24時間当たり90hPaを上回る急激な中心気圧低下の再現に成功した。水平解像度を変えた感度実験から、発達に伴う内部構造やプロセスの解像度依存性と対応する中心気圧低下量(発達率)を明らかにした。さらに温暖化実験を実施し、将来温暖化気候下で極端に強い台風がより急激な中心気圧低下を経て、より強い台風に発達する可能性を示唆した。
著者
金田 幸恵 耿 驃 吉本 直弘 藤吉 康志 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.135-154, 1999-02-25
被引用文献数
1

1993年7月25日未明に台風9304が紀伊半島南端に最接近し、その後四国に上陸したことに伴い、半島南東斜面に多量の降水が観測された。この台風に伴い形成された対流性降水雲の地形による変質過程が、2台のドップラーレーダを用いた観測により調べられた。7月24日1900LSTから25日0000LSTにかけてのドップラーレーダ観測期間中、多くの対流性降水雲が上陸した。それらのレーダエコーは、様々な発達段階で海岸に達したにもかかわらず、海岸の10-20km手前で強まり、海岸線付近でいったん弱まった後、上陸後に再び強化されるか、あるいは広がるという共通の特徴を示した。また、対流性エコーは、海上で強まる前、海岸から30-40km沖付近で後面上部で強まり、その後、海岸に近づくにしたがって、進行方向前面のエコーが強まるという特徴も見出された。2台のドップラーレーダの観測データから導出された海上の水平風を時間平均したところ、平均風速は海岸に近づくにつれ減衰すること、海岸から約10km海上に10^<-4>s^<-1>以上の水平収束域が存在することが見いだされた。以上の観測事実にもとづき、また一般風に対する半島の地形効果に関する数値実験の結果も考慮して、対流性降水雲の地形による変質過程と効率的な降水形成過程が議論された。海上から接近、上陸する対流雲に対するこのような地形効果の総合的な結果として、紀伊半島南東斜面に多量の降水がもたらされたと考えられる。