著者
伊原 奈帆 瀧野 陽子 大岸 美和子 竹内 麻理 阿部 晃子 金子 健 櫻井 洋臣 藤田 幸子 長田 大雅 橋口 さおり 森﨑 浩
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.301-306, 2021 (Released:2021-11-24)
参考文献数
20

【緒言】呼吸困難に対するフェンタニルの有効性はモルヒネに比してエビデンスが乏しく確立されていない.COVID-19肺炎の呼吸困難に対し,高用量静注フェンタニルから低用量静注モルヒネ投与へのスイッチングが有効であった症例を報告する.【症例】85歳男性.COVID-19肺炎のため気管挿管,人工呼吸管理となり,疼痛緩和のためフェンタニル持続投与が開始された.呼吸困難の訴えが顕著となりフェンタニルを増量したが,効果不十分なため緩和ケアチームが介入し,フェンタニル2400 µg/日からモルヒネ76.8 mg/日に変更したところ呼吸困難は消失した.一方,呼吸抑制が顕著となりモルヒネを10 mg/日まで漸減し,呼吸抑制は改善し呼吸困難も認めなかった.【考察】フェンタニルよりも低用量のモルヒネで呼吸困難を緩和できたのは,フェンタニルの耐性形成や呼吸困難緩和に対するモルヒネの優位性が一因と考えられる.
著者
櫻井 洋一
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.85-91, 2020 (Released:2020-05-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1

L‐カルニチン (L‐carnitine;以下LCARと略) はエネルギー代謝に深く関わる重要な栄養素であり, 日本人の食事摂取基準では必須栄養素として列挙されてはいないがLCAR欠乏症となると重篤な臨床症状を呈し, 極度のQOLの低下をきたす. LCARは生体内にて生合成されるが, LCARプールの大部分は食事由来であるため経口摂取不可能な患者では容易にLCAR欠乏症となる. 経口摂取が不可能な患者で長期的に栄養管理が必要な場合にはLCAR含有栄養剤を使用する必要がある. 高齢者において栄養不良やサルコペニアとなると生体内LCARプールが不足しやすくカルニチン欠乏に陥ることからカルニチン欠乏症予防や骨格筋に対する筋肉痛などのストレス軽減の観点からも栄養管理に用いるTPN製剤・医薬品扱いの経腸栄養剤にもカルニチンを含有した製品を積極的に使用することが望ましい. またLCAR不足のない健常者に対してもLCAR投与することにより脂肪酸化を促進しエネルギー代謝を改善することからアスレティックパーフォーマンス向上効果や骨格筋保護効果を認めることからその有用性が期待される.
著者
櫻井 洋一 長谷川 由美 難波 秀行 王堂 哲
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.753-762, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
37
被引用文献数
1

【目的】サルコペニア防止のための基礎的研究としてL-カルニチン(以下、LCARと略)と分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acids;以下、BCAAと略)を投与後に運動負荷を行い、エネルギー基質代謝、身体組成、運動後の筋肉痛に対する効果を検討した。【方法】若年健常女性12名を対象に、LCAR+BCAA投与群(n=6)と非投与群(対照群、n=6)の無作為に2群に分け、運動負荷(VO2 max 50 %、60分)前後における血清エネルギー基質濃度、身体組成、筋肉痛の程度を検討した。運動負荷前にLCAR1000 mg/dayを14日間経口投与、運動負荷2時間前にBCAA7.2 gを経口投与した。【結果】LCAR+BCAA投与群の血清遊離・アシル・総LCAR値は対照群に比較して差を認めずBCAA投与後の運動負荷前後におけるLCAR+BCAA投与群の血清BCAA値は対照群に比較し有意に高値であった(P<0.0001)が、遊離脂肪酸値は低下した。運動負荷後の体組成は両群間に差を認めなかったが、LCAR+BCAA投与群の運動負荷24、48、72時間後の筋肉痛は有意差を認めなかった。【結語】運動負荷前のLCAR+BCAA投与は運動負荷後の体組成や筋肉痛には差を認めなかったが運動後の脂肪分解亢進を減弱する可能性が示された。
著者
櫻井 洋 藤田 広峰 水谷 孝明 相川 潔 澤田 典孝 藤本 克博 櫻井 恒久
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.639-647, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
23

ポリウレタン製AVGの開存成績とそれに関わる因子を後ろ向き検討した. 1次開存と2次開存の他に外科的修正術をアウトカムとした修正1次開存を定義した. 対象は2002年1月から2016年3月までの540例で, 1次開存率は1年35.7%, 2年20.0%, 5年7.5%, 修正1次開存率は1年78.8%, 2年70.4%, 5年55.7%, 2次開存率は1年92.6%, 2年86.0%, 5年74.3%であった. 次に年間平均PTA回数によりPTA未施行群215例, 低頻度群163例, 高頻度群162例に分けた. 低頻度群は高頻度群 (p=0.002) とPTA未施行群 (p=0.002) よりも2次開存率が有意に高かった. 多変量COX比例ハザードモデルで, 2次開存率のハザード比は吻合静脈径が大きいほど有意に低かった (HR=0.626, 95%CI: 0.482-0.813, p<0.001). 当院のポリウレタン製AVGの開存成績を報告したが, それはPTA回数やAVG作製の条件により異なる. 今後もより適正なAVG作製や管理方法の発展が望まれる.
著者
櫻井 洋一
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.277-282, 2015 (Released:2016-02-25)
参考文献数
3

欧米では医師以外の職種や基礎研究者が積極的に栄養関連の臨床研究の発表を行うなど代謝栄養学研究の層が厚いが,わが国では栄養関連の臨床医学に関わる職種の卒前・卒後教育が十分であるとはいえない. 代謝栄養学に関連する臨床に関わる研究者は"栄養治療は外科患者のアウトカムと密接に関連する"という事実をまず理解する必要がある.この概念を出発点とし臨床的疑問を解決するための研究課題を自身で見いだして研究を行うことが大切である.そのためには教育セミナーや栄養関連の研究会・学会に積極的に参加することによる代謝栄養学研究に対するearly exposure が最も重要であると考える.職種を問わず大学生・大学院生である学生時代の早期からセミナーや研究会に参加するearly exposure により,できるだけ早くから代謝栄養学の研究に触れさせ,リサーチマインドを育成することが重要と考える.