著者
岸田 孝弥 武井 昭 大島 登志彦 久宗 周二
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

企業の意思決定過程における組織エラー防止のための組織人間工学的研究として、以下のような研究に取り組んだ。(1)雪印乳業(株)大阪工場における低脂肪乳による食中毒事件、(2)三菱自動車工業(株)製の大型車タイヤ脱落事故及びトラックハウジング破損事故に関わる情報操作、(3)明石市花火大会歩道橋事故、(4)日本フード食肉偽装事件と日本ハムグループの組織改革及び食品安全委員会の組織心理学的研究、(5)京福電鉄過去30年の事故分析、(6)JR西日本救急隊員列車接触事故、(7)韓国大邱市の地下鉄「中央路」駅車両火災事故、(9)美浜原発高温蒸気噴出死傷事故、(9)新宿歌舞伎町雑居ビル火災と経営者の役割等である。雪印乳業低脂肪乳食中毒事故では、昭和30年に起きた北海道八雲工場の製品による食中毒事故を、企業風土の中に生かしきれなかったケースである。このことは雪印乳業で育まれた安全文化が継承されなかったことが原因と考えられる。三菱自動車工業(株)製の大型車タイヤ脱落事故の例では、企業風土に基づく組織事故であり、組織文化的接近が必要である。三菱自動車では、自分より職位が上の者に対して意見を言うことの困難さが感じられた。社内の階層権威の勾配が大きかったことが原因の一つとして示唆されていた。明石市の歩道橋事故では、主催者、警備会社、警察の三者が花火大会の警備について、一つの方向性を見出すことなくバラバラに取り組んでおり、組織としての対応がなかった点に組織事故としての要素が大きい。この3事例を始めとして、3年間に取り組んだ全ての事件・事故で企業の意思決定過程における組織エラーが認められ、企業の安全文化の確立が必要であることが示唆された。そのための解決策として参加型人間工学の導入が強く望まれる。今後は企業倫理を確立し、企業の行動基準を従業員に示し、従業員が安心して企業活動に取り組めるような、コンプライアンスに基づく活動が企業に定着することが望まれる。
著者
大月 隆寛 岡田 顕宏 坂梨 夏代 武井 昭也 横田 久貴 飯田 俊郎 菊地 暁 赤川 智保 吉岡 精一
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

メディアコンテンツと「地域」の関係について、従来の人文社会系諸領域からのアプローチを方法的に概括し、激変しつつある現在の情報環境において有効な新たな視角を学際的・領域横断的に模索する考察を行った。文化資源としてのメディアコンテンツの視点から、富良野市および近郊にある「文化資源(文化財資産)」の調査を行い、富良野が持つ文化資源の掘り起こしと、それが町の活性化-町おこしにどう利用されているのかを歴史的に捉え現在の問題点の抽出を試みた。官民連携についての住民の意識についての調査も行い、『北の国から』がどのように記憶されているのか、当時実際に関わった人たちなどへの聞き書き取材もできる限り行った。
著者
岸田 孝弥 久宗 周二 石井 満 武井 昭
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究における自動券売機調査の操作時間については、押しボタン式でも高年齢者は、中年層や青年層よりも時間がかかっていた。タッチパネル式にになると、中・高年齢層の操作時間は、青年層や子供らの年齢層との間で有意差が認められた。中・高年齢層はタッチパネル式の操作に手こずっている様子がうかがわれた。中途視覚障害者の自動券売機の利用状況についての調査では、87名の中途視覚障害者と56名の晴眼者に同一の質問を行い問題点を明らかにした。タッチパネル式自動券売機の障害者対応機器として設置されている音声ガイドは、使用経験のある障害者は58.1%に過ぎず、利用できない障害者が16.3%いた。テンキー入力装置については使用経験者は、52.3%に留まっており、利用できなかった人も23.3%いた。実際に切符を購入する際に、タッチパネル式の券売機を利用すると答えた視覚障害者は25.3%に過ぎず、62.7%がボタン式の券売機を利用していた事実をしると、タッチパネル式自動券売機の使いにくさをうかがい知ることができた。なお、視覚障害者が利用する頻度の多い現行のボタン式自動券売機でも料金表示の大きさについては82.0%の障害者が悪いと評価していた。障害者にやさしい自動券売機を設計することの必要性が分かった。この調査結果をもとに、弱視者12名について、タッチパネル式自動券売機の利用時の行動分析について実験的研究を行った。弱視者によると、タッチパネルの背景色は、橙、ボタンの色は黒の組み合わせが最も良い評価された。ボタンの形については、弱視者の立場から考えると、大きいものが明らかに良いとされていたが、実用性や社会的な適応性から考えると、余り大きさだけにこだわるわけにはいかない。となるとボタンごとの間隔や文字の間隔を工夫することが必要であろう。最後に男女大学生10名、弱視者8名により、ATMのユーザビリティについて実験を行った。タッチパネル式ATMの電話型および計算機型の入力方式について検討したところ、数字の1にオレンジの色を着色した色付にすると操作性が上することがわかった。しかし、この程度では弱視に対してはそれほどのサポートにはならないことも確められた。自動販売機のレベルに、自動券売機やATMが近づくために、現場、現物、現実をベースとした地道な調査による開発のための資料の収集が必要となろう。