著者
蒲池 あずさ 武用 百子 川田 美和 山岡 由実
出版者
一般社団法人 日本専門看護師協議会
雑誌
日本CNS看護学会誌 (ISSN:21895090)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-10, 2022-04-12 (Released:2022-04-12)
参考文献数
15

目的:大学教員を兼務する精神看護専門看護師におけるCNS活動の実際と認識,兼務しながらCNS活動する上での課題を明らかにすることである.方法:日本看護協会および専門看護師教育を行っている大学院のホームページで氏名が公開されている大学所属の精神看護専門看護師29名を対象に,独自で作成した質問紙調査を実施し,単純集計ならびに質的分析を行った.結果:21名の回収が得られた(回収率72.4%).教員になるまでのCNS活動年数は,5年目未満の者は9名(42.9%),教員をしながらCNS活動をしている者は16名(76.2%)であった.大学教員を兼務するCNSの経験年数が短いこと,CNSの役割はコンサルテーションが中心となるなどの課題が明らかになった.考察:大学教員を兼務するCNSのキャリアパスを描くなど,大学院教育からの継続教育が必要であることが示唆された.さらに大学教員であるCNSが担える重要な役割は,社会的ニーズに応じられる実践や教育,政策提言できるような研究活動を推進していくことである,と考えられた.
著者
青木 裕見 木下 康仁 瀬戸屋 希 岩本 操 船越 明子 武用 百子 松枝 美智子 片岡 三佳 安保 寛明 萱間 真美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.21-30, 2022 (Released:2022-06-22)
参考文献数
14

目的:COVID-19パンデミックに対応した福祉施設管理者の体験を明らかにすることを目的とした.方法:7施設の福祉施設管理者8名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的分析を行った.結果:36のカテゴリと109のサブカテゴリが抽出された.研究参加者は,人的・物的な医療資源のない自施設で未曽有の感染症に果敢に対処していた.不安・緊張を抱える中,組織内のスタッフと情報共有を密にし,勤務体制の再編成を行い,支援の優先度を見極めつつ障害特性に応じた対応を工夫しながら,本人・家族への支援を続けていた.そこでは,従前からの組織内の関係性や対策,さらに一般社会との相互作用も影響しており,とくに地域の医療との協力は必須であった.結論:緊急時でも支援を継続させるためには,平時から組織内で情報共有を密にし,業務の優先順位を整理しておくことが重要であると示唆された.またパンデミックを乗り越えるには医療との協働は不可欠であり,看護支援のニーズが高いことが示唆された.
著者
志波 充 奥村 匡敏 山本 耕平 坂口 守男 武用 百子 山本 明弘
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-42, 2004-03

近年,人格の分類においてCloningerの理論が注目を集めている。この理論の特徴は,従来の類型論と異なり,人格は遺伝規定性の強い「気質Temperament」と,自己概念について洞察学習することによって成人期に成熟する「性格Character」から成ると考え,さらに気質を4次元,性格を3次元に分け,気質の4次元のうち3次元にはそれぞれ脳内神経伝達物質であるドーパミン,セロトニン,ノルアドレナリンの対応を仮定したことである。今回我々は看護学生に特徴的な人格傾向について検討する目的で,Cloningerの作成した「気質と性格の7次元モデル」の質問紙Temperament and Character Inventory(TCI)日本語版を用いて,W医大看護短期大学部学生(W看護短大生)およびW医大医学部学生(W医大生)の人格傾向を調査した。その結果を一般健常対照者(対照者)と比較した。W看護短大生と対照者との比較では,W看護短大生でHarm Avoidance(HA:「損害回避」)のスコアが有意に高く,Self-Directedness(SD:「自己志向」)が有意に低かった。W医大生と対照者との比較では,W医大生でSDが有意に高く,Reward Dependence(RD:「報酬依存」), Self-Transcendence(ST:「自己超越」)が有意に低かった。W看護短大生の人格傾向として,やや不安傾向が強いものの,暖かな社交的友好関係や社会的契機に対する共鳴・感受性が高く,人としての成熟度は高いが,自己による意志決定の力は弱い傾向がみえる。一方W医大生では,意志の力は強いが,社交的友好関係を保つことは苦手で,科学は万能ではないことに気づかない傾向が伺える。