著者
髙谷 新 安保 寛明 佐藤 大輔 新宮 洋之
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.28-37, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
29

本研究は,看護師長のリーダーシップと看護職員の心身のストレス反応の関連において,仕事のストレス要因の高低による看護職員のワーク・エンゲイジメントの媒介効果の影響を明らかにすることを目的とする.16病院の看護職員1,213人を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,マルチレベル相関分析および調整媒介分析を行った.有効回答は403部であった.マルチレベル相関分析では,個人レベルでワーク・エンゲイジメントと看護師長のリーダーシップに正の相関が,職業性ストレスとは負の相関が認められた.また,集団レベルでは看護師長の人間関係志向のリーダーシップと職業性ストレスに負の相関が認められた.調整媒介分析では,高ストレス状況下での変数間の関連について推定を行い,結果として課題志向,人間関係志向両方のリーダーシップの発揮が看護職員のワーク・エンゲイジメントを媒介し,心身のストレス反応に影響を与えていたことが明らかとなった.
著者
新宮 洋之 安保 寛明
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.270-277, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
27
被引用文献数
5

目的:看護師を対象に,構造的エンパワメントと情動的コミットメント,ワーク・エンゲイジメントの関係を明らかにする.方法:東北地方のA県ならびに政令指定都市B市内の病院に勤務する看護師を対象に,質問紙調査を行った.結果:構造的エンパワメントから情動的コミットメントならびにワーク・エンゲイジメントには,それぞれ有意な正のパスがあった.また,構造的エンパワメントからワーク・エンゲイジメントを介した情動的コミットメントには有意な正のパスがあったが,構造的エンパワメントから情動的コミットメントを介したワーク・エンゲイジメントへのパスは有意な関係になかった.結論:構造的エンパワメントは,看護師の情動的コミットメントならびにワーク・エンゲイジメントを高めることが示唆された.また,看護師における構造的エンパワメントと情動的コミットメント,ワーク・エンゲイジメントの関係には,方向性があることが示唆された.
著者
髙谷 新 安保 寛明 佐藤 大輔
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.375-384, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
35

目的:看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感の関連について,看護職員による所属部署の看護師長に対するリーダーシップの認識の媒介効果を明らかにすることを目的とする.方法:16医療機関の看護師長,看護職員を対象に看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感,リーダーシップについて質問紙調査を行った.看護職員269名を対象にマルチレベル媒介分析を行った.結果:看護職員による看護師長のリーダーシップの認識は看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントを完全に媒介していることが明らかとなった.看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントにおけるリーダーシップの認識の媒介効果は個人レベルでの効果であることが示唆された.結論:看護師長の自己効力感は看護職員によるリーダーシップの認識を介して,看護職員のワーク・エンゲイジメントに影響を及ぼしていることが明らかとなった.
著者
青木 裕見 木下 康仁 瀬戸屋 希 岩本 操 船越 明子 武用 百子 松枝 美智子 片岡 三佳 安保 寛明 萱間 真美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.21-30, 2022 (Released:2022-06-22)
参考文献数
14

目的:COVID-19パンデミックに対応した福祉施設管理者の体験を明らかにすることを目的とした.方法:7施設の福祉施設管理者8名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的分析を行った.結果:36のカテゴリと109のサブカテゴリが抽出された.研究参加者は,人的・物的な医療資源のない自施設で未曽有の感染症に果敢に対処していた.不安・緊張を抱える中,組織内のスタッフと情報共有を密にし,勤務体制の再編成を行い,支援の優先度を見極めつつ障害特性に応じた対応を工夫しながら,本人・家族への支援を続けていた.そこでは,従前からの組織内の関係性や対策,さらに一般社会との相互作用も影響しており,とくに地域の医療との協力は必須であった.結論:緊急時でも支援を継続させるためには,平時から組織内で情報共有を密にし,業務の優先順位を整理しておくことが重要であると示唆された.またパンデミックを乗り越えるには医療との協働は不可欠であり,看護支援のニーズが高いことが示唆された.
著者
瀬戸屋 希 萱間 真美 宮本 有紀 安保 寛明 林 亜希子 沢田 秋 船越 明子 小市 理恵子 木村 美枝子 矢内 里英 瀬尾 智美 瀬尾 千晶 高橋 恵子 秋山 美紀 長澤 利枝 立石 彩美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_41-1_51, 2008-03-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
16 10

精神障害者に対する地域ケア施策において,精神科訪問看護は重要な役割を担っている.その効果については,精神科病棟への再入院の防止と在院日数の減少に影響を与えることが報告されているものの,提供されているケアの具体的な内容については十分に検討されていない.本研究は,精神科訪問看護で提供されているケア内容を網羅するケアリストを作成することを目的に,精神科訪問看護師18名を対象に,行った看護ケア内容についてインタビュー調査を行った.得られた援助内容について質的に分析し,「日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大」「対人関係の維持・構築」「家族関係の調整」「精神症状の悪化や増悪を防ぐ」「身体症状の発症や進行を防ぐ」「ケアの連携」「社会資源の活用」「対象者のエンパワメント」の8つのケアの焦点と,それぞれの焦点について合計58のケア領域と222のケアコンテンツからなるリストを作成した.今後は,このリストを用いてケアの内容と量を測定していくことが期待される.
著者
佐藤 大輔 安保 寛明
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.42-50, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
21

目的:本研究の目的は,うつ病等による休職者が休職前に感じた症状や変化を診療録や活動記録より抽出し,休職を予期する警告サインを明らかにすることである.方法:職場を休職し,精神科医療機関で復職支援プログラムを受け,復職した方30名を対象とした.対象者の診療録およびプログラム中の活動記録より,休職前に感じた症状や変化に関する語句を収集した.収集した語句は内容分析法により類似した表現を集積し,カテゴリ化を行った.また,最も大きな分類の単位について,全体に対しての割合を算出した.結果:911語を内容類似に応じてカテゴライズした結果,休職前に生じた症状や変化としては,【気分・覚醒度への影響】は全体の33.8%(以下同様に全体割合),【身体面への影響】は20.1%,【行動への影響】は12.8%,【業務への影響】は10.5%,【認知への影響】は9.1%,【自己悲嘆による影響】は7.6%,【業務環境による影響】は5.7%,【症状の否認】は0.1%であった.結語:うつ病等による休職者の休職前に生じた警告サインが具体的に明らかになった.職場において早期介入に資する視点として活用が可能である.
著者
安保 寛明
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学看護学部紀要 (ISSN:13449745)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.135-143, 2004-03
被引用文献数
2

近年,わが国でも精神障害者に村する治療的介入の評価指標として生活の質 (Quality of Life: QOL) が注目されている.本論文は,本邦におけるQOL介入研究の傾向を概観すると共に,地域に暮らす精神障害者のQOL向上を評価対象とした海外の研究動向を概観し,QOLに対する介入研究の一助となる事を目的とするものである.精神障害者に対する地域での支援体制は国によって大きな違いがあるため,系統的レビューではなく介入方法などにより研究結果を分類し俯瞰した.結果,地域に暮らす精神障害者のQOLの向上には,支援サービスへの満足度と生活への不安 (陰性症状と関連) が強く影響することが示唆された.また,生活技能訓練などの心理社会的支援が精神障害者のQOL向上に寄与することが示唆された.一方で, QOLの向上は必ずしも再入院の抑止には関連しかいことも示唆された.今後は,地域に暮らす精神障害者支援のアウトカム尺度として再入院率とQOLを重視し,サービス満足度や不安とともに調査することが望ましいと考えられる.