著者
勝又 里織 松岡 恵 関根 憲治
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.317-326, 2007
被引用文献数
1

人工妊娠中絶術(以下「中絶」とする)を受けた女性が,中絶後に精神的に安定するためには,看護者のケアが必要とされている.しかし,一般に,女性に対する理解不足から,精神的な看護ケアは十分に行われていない.そこで本研究は,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情を明らかにすることを目的とした.対象は,都内産婦人科診療所で妊娠初期に中絶を受けた女性のうち,同意の得られた者とした.方法は,半構造化面接法と自己記入式質問紙調査とした.面接時期は,中絶後1週間を目安に1回60分程度行い,さらに同意の得られた者には,中絶後1カ月を目安に2回目の面接を実施した.分析法として,グラウンデッドセオリー法を参考に継続的比較分析を用いた.対象者は,未婚で子供のいない20-23歳の女性6名(そのうち4名は1回のみ)であった.分析の結果,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情として,中絶の重さの自覚,ちゃんとしていなかった自分,これからの自分,二人の中絶,親への思いの5つのカテゴリーが抽出された.カテゴリーの経時的な流れは,手術後,【中絶の重さの自覚】をし,その後,内省を始めた.その中で,【ちゃんとしていなかった自分】を自覚し,同時に,相手だけでなく二人で一緒に考えようと,【二人の中絶】と思うようになった.そして,落ち込んでいるだけでは何も変わらないと,【これからの自分】のあり方を考えた.さらに,中絶後1カ月の時期には,【親への思い】を持っていた.中絶を受けた女性は,命を殺した重みから,それを隠したい経験と考えており,孤立しがちな状況にあると推察された.孤立は,自分の内面を統合させられないとされており,看護者は,女性が孤立することがないようにする必要があると考えられた.
著者
勝又 里織 松岡 恵 関根 憲治
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1-2, pp.317-326, 2007-04-30 (Released:2017-01-26)

人工妊娠中絶術(以下「中絶」とする)を受けた女性が,中絶後に精神的に安定するためには,看護者のケアが必要とされている.しかし,一般に,女性に対する理解不足から,精神的な看護ケアは十分に行われていない.そこで本研究は,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情を明らかにすることを目的とした.対象は,都内産婦人科診療所で妊娠初期に中絶を受けた女性のうち,同意の得られた者とした.方法は,半構造化面接法と自己記入式質問紙調査とした.面接時期は,中絶後1週間を目安に1回60分程度行い,さらに同意の得られた者には,中絶後1カ月を目安に2回目の面接を実施した.分析法として,グラウンデッドセオリー法を参考に継続的比較分析を用いた.対象者は,未婚で子供のいない20-23歳の女性6名(そのうち4名は1回のみ)であった.分析の結果,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情として,中絶の重さの自覚,ちゃんとしていなかった自分,これからの自分,二人の中絶,親への思いの5つのカテゴリーが抽出された.カテゴリーの経時的な流れは,手術後,【中絶の重さの自覚】をし,その後,内省を始めた.その中で,【ちゃんとしていなかった自分】を自覚し,同時に,相手だけでなく二人で一緒に考えようと,【二人の中絶】と思うようになった.そして,落ち込んでいるだけでは何も変わらないと,【これからの自分】のあり方を考えた.さらに,中絶後1カ月の時期には,【親への思い】を持っていた.中絶を受けた女性は,命を殺した重みから,それを隠したい経験と考えており,孤立しがちな状況にあると推察された.孤立は,自分の内面を統合させられないとされており,看護者は,女性が孤立することがないようにする必要があると考えられた.
著者
矢野 桂司 磯田 弦 中谷 友樹 河角 龍典 松岡 恵悟 高瀬 裕 河原 大 河原 典史 井上 学 塚本 章宏 桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.12-21, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
30
被引用文献数
10

本研究では,地理情報システム(GIS)とバーチャル・リアリティ(VR)技術を駆使して,仮想的に時・空間上での移動を可能とする,歴史都市京都の4D-GIS「京都バーチャル時・空間」を構築する.この京都バーチャル時・空間は,京都特有の高度で繊細な芸術・文化表現を世界に向けて公開・発信するための基盤として,京都をめぐるデジタル・アーカイブ化された多様なコンテンツを時間・空間的に位置づけるものである.京都の景観要素を構成する様々な事物をデータベース化し,それらの位置を2D-GIS上で精確に特定した上で,3D-GIS/VRによって景観要素の3次元的モデル化および視覚化を行う.複数の時間断面ごとのGISデータベース作成を通して,最終的に4D-GISとしての「京都バーチャル時・空間」が形作られる.さらにその成果は,3Dモデルを扱う新しいWebGISの技術を用いて,インターネットを介し公開される.
著者
矢野 桂司 中谷 友樹 磯田 弦 高瀬 裕 河角 龍典 松岡 恵悟 瀬戸 寿一 河原 大 塚本 章宏 井上 学 桐村 喬
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.464-478, 2008-04-25
被引用文献数
2 19

バーチャル京都は,歴史都市京都の過去,現在,未来を探求することを目的に,コンピュータ上に構築されたバーチャル時・空間である。本研究では,最先端のGISとVR技術を用いて,複数の時間スライスの3次元GISからなる4次元GISとしてのバーチャル京都を構築する。本研究は,まず,現在の京都の都市景観を構築し,過去にさかのぼる形で,昭和期,明治・大正期,江戸期,そして,京都に都ができた平安期までの都市景観を復原する。<br> バーチャル京都を構築するためには以下のようなプロジェクトが行われた。a)京都にかかわる,現在のデジタル地図,旧版地形図,地籍図,空中写真,絵図,景観写真,絵画,考古学資料,歴史資料など位置参照可能な史・資料のGIS データの作成,b)京町家,近代建築,文化遺産を含む社寺など,現存するすべての建築物のデータベースおよびGISデータの作成,c)上記建築物の3次元VRモデルの構築,d)上記GISデータを用いた対象期間を通しての土地利用や都市景観の復原やシミュレーション。<br> バーチャル京都は,京都に関連する様々なデジタル・アーカイブされたデータを配置したり,京都の繊細で洗練された文化・芸術を世界に発信したりするためのインフラストラクチャーである。そして,Webでのバーチャル京都は,歴史的な景観をもつ京都の地理学的文脈の中で,文化・芸術の歴史的データを探求するためのインターフェイスを提供する。さらに,バーチャル京都は,京都の景観計画を支援し,インターネットを介して世界に向けての京都の豊富な情報を配信するといった重要な役割を担うことになる。
著者
小笹 由香 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_37-1_47, 2006 (Released:2008-04-25)
参考文献数
23

目 的羊水検査を受ける女性の意思決定に影響を及ぼした価値判断とその根底にある価値体系(慣例規範・維持欲求,期待規範・適応欲求,統合規範・調和欲求の3段階)を明らかにすることを目的とした。対象と方法対象は,羊水検査の結果に異常がなかった女性16名で,研究デザインはインタビューガイドに基づく半構成面接による,質的後方視的記述研究とした。結 果義兄がダウン症であるもの以外の15名は,35歳以上であった。慣例規範・維持欲求の低次の段階を優先していた者は16名中12名だった。慣例規範は,精神的に弱く,高齢のため一生介護責任は持てず,障害児の養育は困難というもので,維持欲求は安定した生活の維持というものだった。夫婦の慣例規範・維持欲求の相違がある場合は,夫の期待に応え,受け入れられるという期待規範・適応欲求が得られず,心理的葛藤が起こっていた。また,羊水検査の受否を決めた,同じ立場の女性が,何を悩み,どう判断したかを知ることにより,自分の決定した行動を正当化し,心に調和を感じていたいという,統合規範・調和欲求があった。結 論羊水検査を受けることについての価値体系には,慣例規範・維持欲求,期待規範・適応欲求,統合規範・調和欲求の3段階があった。本研究の対象の多くは,十分に考慮できずに低次の慣例規範・維持欲求を優先させ,検査を受ける価値について判断していた。
著者
植村 善太郎 松岡 恵子
出版者
福岡教育大学
雑誌
福岡教育大学紀要. 第四分冊, 教職科編 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka. Part IV, Education and psychology (ISSN:02863235)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.9-15, 2020-03-10

In recent years, there has been an increase in social interest in maltreatment for children, but there are not many studies on maltreatment in facilities such as kindergartens and nurseries. The purpose of this study was to explore organizational factors related to maltreatment in early childhood education and care facilities. We conducted an online survey of 200 kindergartens or nurseries workers (56 men, 144 women, average age 41.84 years) regarding “maltreatment”, “teamwork” that meant harmony in the organization, and “openness of the organization”. As a result of analysis of variance with “teamwork” and “openness” as independent variables, and “maltreatment” as a dependent variable, a significant main effect of “teamwork” was detected. It suggested that higher teamwork produced lower maltreatment. Based on the results, discussions were made on the mechanism by which maltreatment occurs in the facility and future research issues.
著者
松岡 恵悟
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.174, 2005

仙台市の都心部では、1990年代末に大規模な賃貸オフィスビルが相次いで開発された。それらを含め1996年から2000年の間に竣工した賃貸オフィスビルの合計床面積は約35万m<SUP>2</SUP>のぼり、1995年までの都心部全体のストック(約151万m<SUP>2</SUP>)の4分の1に近い床面積が短期間に新たに供給された。そして、それらの新たなビル立地は、都心業務地域の核心的な地区よりもむしろ、仙台駅北部の戦後区画整理が行われず再開発の必要性が高い地区や、東部の1980年代に基盤整備が進められた地区に多く見られた(図1)。この研究では、これらの新規ビル立地がテナント・オフィスの入居を通じて都心空間の構造にどのような影響を与えたのかを明らかにすることを目的とした。<BR> 近年、仙台市の都心部においても、他の多くの主要都市と同様に賃貸オフィスビルの空室率が高く、とくに1999年以降は10%を超える水準にある。仙台市は東北地方の地方中枢都市であり「支店経済」を基盤として発展してきたが、長引く不況のなかで支店の新規立地は少なく、既設支店の縮小・統合・撤退もみられるなど、オフィス空間の需要増が見込める状況にはない。しかしながら、その一方で設備の整った新しく大規模なビルは相対的に人気が高く、おおむね95%以上の入居率を維持している。<BR> オフィスビルは一般に竣工後時間を経るにしたがって陳腐化が進み、魅力を減じてゆく。とくにここ数年はオフィスのIT対応が強く求められたため、これに設備面で対応できない古いオフィスビルは市場での競争力を弱め、新しいビルの優位性が際立つようになった。そのため、新しく大規模なビルや設備のより優れたビルは、周辺の既存支店の借り換え需要に支えられ、テナントを集めることが相対的に容易であると言える。<BR> 上述の新しい大規模ビルのうち1998年と99年に竣工した7棟について、入居オフィスの企業概要や以前の立地場所を調査したところ、各ビルとも大企業オフィスが多数含まれ70%前後が借り換えによるものであることが判った。なお、この調査は企業のホームページや会社年鑑、電話帳や住宅地図を資料として行った。また、移転前の入居ビルにおける空室の充てん状況についても調査を行った。その結果、相対的に新しいビルや規模の大きいビルでは、より古く小規模なビルなどからの借り換えにより、充てんが進みやすい傾向を見てとることができた。そして一方で古いビルのなかにはテナント転出後の充てんが進まず、空室率が60%を超えるものも見られた。<BR> 以上のようなテナント・オフィスの移動を通じて、新たに大規模ビルが立地した仙台駅北部や東部地区は業務空間としての性格を強め、一方で古いビルの比率が高い核心的な地区ではオフィス立地数や従業者数が減少し空室率が上昇するという、都心空間の再編成が起こっていることを確認できた。
著者
平澤 美恵子 新道 幸恵 内藤 洋子 佐々木 和子 熊沢 美奈好 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-31, 1988

助産婦の新卒者が助産婦としての能力に習熟する過程と, その過程に影響する要因を明らかにする目的で, 国立および公的助産婦学校3校の卒業生92名を対象に, 妊産婦へのケア能力を中心に, 1年間追跡調査した。<BR>対象の平均年齢は23.5歳, 看護婦歴のあるものは34.7%, その平均職歴は2.6年, 200~999床の病産院に勤務したものが過半数である。対象者の大半が妊産婦ケア能力の到達状況がよくなるのは就後1年時である。新生児の仮死蘇生術やハイリスク新生児の看護は、1年時になっても未経験者が多い。<BR>仕事ぶりに満足という意識をもつ人の割合は経時的に増加し, それとともに, その意識に相関する妊産婦ケア能力の項目が増加している。職場の人間関係に関する意識にも能力の到達状況と相関が認められた。その意識のうち, ケア能力の到達項目の多くと相関がみられたのは, 1か月時には職場の雰囲気がよい, 6か月時には職員の意見交換が多い, である。
著者
松岡 恵 小山 真理子 近藤 潤子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.33-41, 1988
被引用文献数
1

日本の母性領域における看護の研究の数, テーマ, 研究方法, 結果の分析方法の動向を明らかにする目的で1952年から1985年までに発表された論文356件を規準に従って分類し分析した. <BR>その結果, 研究数は増加し, 特に教育機関と臨床看護者との共同研究が多いことが明らかになった. 研究の焦点はどの年次も妊産褥婦の身体に関するものが最も多いが1980年以降, 父親, 思春期, 妊産褥婦の心理など様々なテーマを取り上げるようになった. 研究方法は, 1960年までは事例に関する報告が60%以上であったが, 1980年以降は調査研究が60%以上を占めるようになった. データ収集方法はどの年次も既存の記録によるものが最も多く, ついで質問紙によるものが多かった. <BR>今後改善が望まれる点は, 研究課題に関する充分な文献検索, 考察の論理的な記述, 統計的手法の活用などであった.
著者
木村 千里 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-30, 1995

分娩期に助産婦が産婦と共に過ごす共有率, 産婦への助産婦の発語回数, 夫以外の家族の立ち会いと産婦の主観的体験との関係を明らかにする目的で, 初産婦16名に分娩時ビデオ録画, 産褥3日に自己記入式質問紙法を行った。<BR>その結果, 娩出期の共有率の平均値は極期よりも有意に高かった (P<0.05)。さらに, 娩出期の共有率と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めたが (r=0.51, P<0.05), 極期の共有率との間には有意な相関関係を認めなかった。また, 極期から娩出期にかけての単位時間当たりの助産婦の発語回数と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めた (r=0.68, P<0.01)。また, 夫以外の家族の立ち会いがあった群は, なかった群に比較して有意に陣痛・出産時の対処・達成感の自己評価得点が低かった (P<0.01)。<BR>これらの結果から, 極期における助産婦の選択的存在, 極期・娩出期における夫以外の家族の存在について検討し, さらに分娩時, 出産に集中する産婦を妨害しないように, 産婦が必要とするときに効果的に言葉かけを行う必要性が示唆された。
著者
石濱 裕規 井出 大 渡邊 要一 八木 朋代 松岡 恵 荒尾 雅文 小林 正法 高橋 修司 安藤 高夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E2Se2076-E2Se2076, 2010

【目的】都内介護保険施設・病床を利用されている認知症を持った要介護高齢者の家族・病院職員を対象とし、介護状況・福祉用具利用状況を調査すること。特に、認知症が問題となる方における身体拘束・行動制限の要因を明らかにし、その改善のために必要な取り組みや福祉用具を検討すること。<BR><BR>【方法】東京都内の72介護保険施設(介護療養型病床(以下、介護療養)・老健・特養)を対象とし、認知症をもった要介護高齢者の介護状況に関する調査を、職員・家族・施設責任者に実施した(平成21年1月10日~平成21年3月10日)。対象者は、認知症高齢者の日常生活自立度(介護認定調査)の評価が自立・I以外の方とし、全対象者調査と無作為抽出方式を併用した。職員調査の内容は、介護認定調査票項目による対象者の心身状況の評価と福祉用具利用・介護状況調査からなるものであった。本報告は、厚生労働省平成20年度老人保健健康増進等補助事業として東京都療養型病院研究会が実施した調査に基づくのである。<BR><BR>【説明と同意】職員調査は、施設責任者に目的等を説明し、ご了解頂いた施設責任者には、調査協力承諾書に署名・提出頂いた。調査責任者からの指示を通じ、各調査担当者には調査にあたり利用者様への同意を協力依頼文書または口頭で得た。本調査は、個人情報保護法に準拠し実施した。回収は郵送方式とした。<BR><BR>【結果】1)回収状況および基本集計 回収数は、職員調査2733件(介護療養2015件、老健369件、特養349件)であった(自立、I、不明を除く2583名を分析対象とした)。主診断名は、脳血管疾患(39%)、認知症(32%)が2/3を占め、平均年齢83.5才、性別は女性74%、要介護度5が約半数(49%)となり、介護療養は要介護度5が最も多く、老健は要介護度3、特養は介護度4が最も多かった。<BR>2)行動制限につながる福祉用具利用の要因の分析 行動制限につながる福祉用具利用の有無と介護認定調査における心身状況、および利用者に感じる行動上の不安、転倒等の危険度との関連を検討した。「柵・介助バー等で四方を囲む」、「抑制帯(Y字型安全ベルト)」、「車いす用テーブル(食事時のみ使用以外)」をそれぞれ使用の有無で区分した2群に対して、年齢、要介護度、介護保険認定調査票の各項目(2.移動、3.複雑な動作、4.特別な介護、6.コミュニケーション等、7.問題行動、10.廃用の程度)、行動上の不安(5段階)、危険度(転倒・ベッドからの転落・車いすからのずり落ち)(各3段階)を説明変数として選定し、有意差があるかをMann-WhitneyのU検定を使い分析した。認定調査票の各項目は、認定調査員テキスト2006に示される順序尺度による得点化方法を用い、統計処理には、SPSS.Ver17.0を用いた。その結果、各3項目において、有意差(p< 0.05)がみられた説明変数を用い、変数減少法を用いたロジスティック回帰分析により、さらに変数選択を行った。その結果、「柵・介助バーで四方囲む」「抑制帯」「車いす用テーブル」の各物品利用の有無を説明するうえでの判別的中率の高い予測式が導かれた。すなわち、「柵・介助バーで四方囲む」物品利用の有無に関しては、起き上がり、立ち上がりといった移動関連項目と問題行動関連項目、そしてベッドからの転落が説明変数として選択された(8変数、判別的中率72.8%)。「抑制帯」利用の有無に関しては、じょくそう等の皮膚疾患、排尿、といった体動、移動の要因となりうる項目と目的もなく動き回る、転倒、車いすからのずり落ちの危険度が選択された(5変数、判別的中率92.0%)。「車いす用テーブル」利用の有無に関しては、暴言や暴行、ひどい物忘れと行動上の不安が説明変数として選択された(3変数、判別的中率98.1%)。すなわち、3種の物品利用の説明変数として、認知症の問題行動に関連する項目が共通に説明変数として選択され、危険度も「柵・介助バーで四方囲む」および「抑制帯」利用の有無の説明変数として選択された。<BR><BR>【考察】身体拘束・行動制限につながりうる物品利用を減らすには、転倒・転落・ずり落ち予防、認知症の行動障害面への対応を含めた身体拘束・行動制限のための取組みと生活環境整備が必要であることが示唆された。柵・サイドレールの利用が却って転落時の危険度を高めるという報告もあり(Catchen, 1983 等)、利用群/非利用群間での危険度の差の追跡的・継続的検討など今後の課題である。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】認知症の行動障害面への対応、転倒等の予防、アクシデント時の骨折等の危険度軽減のため、リハ職種の取組が求められている。また、本調査事業において、座位能力に適した車いすが用いられていないという福祉用具の不適合が抑制帯使用に影響しているという結果も出ており、福祉用具適合技術の向上も求められている。
著者
岡本 美和子 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.85-92, 2003
被引用文献数
4

本研究は,出産後1〜2ヵ月において子どもの持続する泣きに直面した初産婦が危機状態に至る経緯と,危機状態に陥る条件となる母親の背景を明らかにすることを目的として行った.危機状態までの過程は,母親が習慣的対処や試行錯誤的対処を行った後も子どもが泣き止まず,さらに追い込む要因が働き危機状態に至るとした.調査は,出産後2ヵ月まで母子ともに重篤な問題がなく経過した初産婦30名を対象に,1ヵ月健診後に体験した子どもの持続する泣きと母親の気持ちについての半構成的面接を行った.得られたデータを内容分析した結果,対象者全員が出産後1ヵ月以降に子どもの持続する泣きに直面しており,19名が危機状態あり群として認められた.危機状態に追い込む要因については,状況認知と支援内容において危機状態あり群なし群の両群間に有意差を認めた.状況認知では「何をやっても泣き止まない泣き」と捉え,対処時周囲からの支援が得られなかった母親が危機状態あり群では高率であった.さらに危機状態に陥った母親の背景として,必要な育児情報へのアクセスができない母親は『先の見えない不安』を,情報から迷いが生じた母親は『母親としての自信の揺らぎ』を,そして,必要な情報を選択できない母親は『泣き止まないことへの苛立ち』を感じていることが明らかになった.本研究の結果より,出産後2ヵ月頃までの子どもの持続する泣きに直面した初産婦の背景と育児情報に関わる問題の特徴が明らかになり,この時期の初産婦への支援の必要性と支援の具体的方向性が示唆された.
著者
榎本 美香 岡本 雅史 串田 秀也 山川 百合子 松嶋 健 高梨 克也 松岡 恵子 小谷 泉
出版者
東京工科大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、統合失調症や高次脳機能障害という病名が与えられた人々(the Communication Handicapped; CH)が個々に持つ社会的・個人的属性や会話の個々の構成物(発話や身振り)の相互作用が作り出すコミュニケーションシステムにおいて、コミュニケーションギャップが検出され、排除/吸収されていく過程のメカニズムを解明した。
著者
岡本 美和子 松岡 恵 時本 久美子
出版者
日本体育大学女子短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

養育者による虐待要因の1つである子どもの泣きは、出産後早期の母親のEmotionaldistressを引き起こすといわれている。母親のEmotionaldistressへの予防的看護介入として妊娠後期に開催される両親学級で、"子どもの泣きへの対応プログラム"を導入することにした。出産後3週及び3ヵ月の母親への介入効果を検討した結果、母親のEmotionaldistressについて効果がみられた。子どもの泣きに関する正しい知識と適切な対応が母親の自信回復に繋がり、Emotionaldistressによって引き起こされる虐待予防に役立つと考えられた。