著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03-25

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。
著者
水谷 聡秀 雨宮 俊彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.102-110, 2015-06-30 (Released:2015-08-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 2

いじめ被害経験は心身状態に長期的な影響を及ぼす。従来の研究は, 子どもの頃のいじめ被害経験が後年における自尊感情や特性不安, 抑鬱, 孤独などに影響を与えることを示している。本研究では, いじめの発生状況をとらえ, 小学校と中学校, 高等学校のうちどの時期のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を与えるか, また自尊感情を媒介したWell-beingへの影響があるのかを検討する。そこで, 自尊感情, 主観的幸福感, 特性怒り, 特性不安, 各時期にいじめられた頻度について尋ねる質問紙を用いて大学生に調査を実施した。その結果, いじめ経験の頻度は高等学校よりも小中学校で高かった。パス解析により, 中学校や高等学校の頃のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を及ぼしていることを明らかにした。また, いじめ被害経験がWell-beingに直接的にも, 自尊感情を介して間接的にも影響を与えていることを見出した。これらの結果はいじめ被害経験が長期的に心的状態に影響を及ぼすことを支持するものである。
著者
小杉 考司 藤沢 隆史 水谷 聡秀 石盛 真徳
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-25, 2001
被引用文献数
1

本研究は, ダイナミック社会的インパクト理論の一連の研究における, 空間的収束という結果をうみだす要因を特定することを目的としている。そのため, ダイナミックインパクト理論で用いられている, シミュレーションモデルに含まれている変数の効果を検証するべく四つのモデルを作った。派閥サイズモデルや累積的影響モデルでは二種類の連続変数をもち, 影響力の強さに個人差が付与されていたが, 本研究のモデルAおよびBは一種類の強度変数しか持たせず, さらにモデルCは影響力の個人差をなくした。モデルDは距離を離散的に表した, 近傍という変数を持つモデルである。結果は, いずれのモデルにおいても空間的収束が見られるというものであり, 影響力の数や個人差, 人数という変数は空間的収束の必要条件ではないことが明らかにされた。このことから, 結果をバイナリ変数に変換する関数と局所的相互作用という特徴が, 空間的収束に必要な条件であると考えられた。また, ダイナミック社会的インパクト理論を展開する方向性が示唆され, この理論から得られるシミュレーションの結果の, 誤解や拡大解釈という問題点が指摘された。<BR>最後に, コンピュータシミュレーション一般における, モデル構築の容易さが引き起こす問題点と, 今後の展望が示された。
著者
小杉 考司 藤沢 隆史 水谷 聡秀 石盛 真徳
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-25, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

本研究は, ダイナミック社会的インパクト理論の一連の研究における, 空間的収束という結果をうみだす要因を特定することを目的としている。そのため, ダイナミックインパクト理論で用いられている, シミュレーションモデルに含まれている変数の効果を検証するべく四つのモデルを作った。派閥サイズモデルや累積的影響モデルでは二種類の連続変数をもち, 影響力の強さに個人差が付与されていたが, 本研究のモデルAおよびBは一種類の強度変数しか持たせず, さらにモデルCは影響力の個人差をなくした。モデルDは距離を離散的に表した, 近傍という変数を持つモデルである。結果は, いずれのモデルにおいても空間的収束が見られるというものであり, 影響力の数や個人差, 人数という変数は空間的収束の必要条件ではないことが明らかにされた。このことから, 結果をバイナリ変数に変換する関数と局所的相互作用という特徴が, 空間的収束に必要な条件であると考えられた。また, ダイナミック社会的インパクト理論を展開する方向性が示唆され, この理論から得られるシミュレーションの結果の, 誤解や拡大解釈という問題点が指摘された。最後に, コンピュータシミュレーション一般における, モデル構築の容易さが引き起こす問題点と, 今後の展望が示された。
著者
水谷 聡秀 雨宮 俊彦
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.102-110, 2015
被引用文献数
2

いじめ被害経験は心身状態に長期的な影響を及ぼす。従来の研究は, 子どもの頃のいじめ被害経験が後年における自尊感情や特性不安, 抑鬱, 孤独などに影響を与えることを示している。本研究では, いじめの発生状況をとらえ, 小学校と中学校, 高等学校のうちどの時期のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を与えるか, また自尊感情を媒介したWell-beingへの影響があるのかを検討する。そこで, 自尊感情, 主観的幸福感, 特性怒り, 特性不安, 各時期にいじめられた頻度について尋ねる質問紙を用いて大学生に調査を実施した。その結果, いじめ経験の頻度は高等学校よりも小中学校で高かった。パス解析により, 中学校や高等学校の頃のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を及ぼしていることを明らかにした。また, いじめ被害経験がWell-beingに直接的にも, 自尊感情を介して間接的にも影響を与えていることを見出した。これらの結果はいじめ被害経験が長期的に心的状態に影響を及ぼすことを支持するものである。
著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03
被引用文献数
2

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。<特集>感情科学の展開