- 著者
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水野 剛
- 出版者
- JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
- 雑誌
- 紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.7, pp.726-733, 2014
電力供給状況の変化が見込まれる昨今において,製造工場における回転機械の消費電力削減の意義は大きい。しかしながら,多くの回転機械において現状の消費電力値や効率が最適値であるかどうかを判断する方法はほとんど存在しない。そこで英国Corrocoat社及びコロコートジャパン株式会社は,水ポンプに特化して,現状のポンプ効率を定量化するための計測装置ならびに演算処理方法を確立した。これにより現状の消費電力やポンプ効率が可視化され,製造時と比較した際の現状の劣化レベルを定量化することができるようになった。ユーザーは定量化された劣化レベルから,補修対象や適切な補修処理を判断することができるようになった。また補修処理のための投資に対する補修による効果の事前検証も可能となった。<BR>次なる命題は,劣化した水ポンプをどのように補修し,どのように高効率化するかである。従来の水ポンプの補修は,タールエポキシに代表される部分補修であったが,耐久性に乏しく,水ポンプの高効率化実現に直接つながることはなかった。その状況を鑑み,1986年にCorrocoat社は水ポンプの高効率化を実現するフルグライドコーティングの開発に成功した。同コーティングの適用により,製造時に比べ10%近く低下したポンプ効率は製造時と同等か,それ以上まで回復した。ポンプ効率の上昇は消費電力の削減につながるために,フルグライドコーティング施工で年間数百万円の損失を回避することができた事例が数多く出てきた。<BR>本稿においては,海外・国内における性能計測やコーティング適用事例や統計データを紹介し,ポンプ効率低下の傾向や,フルグライドコーティングの確度を実証する。