著者
水野 惠司 元村 直靖 廣瀬 隆一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.187-200, 2009-09

子どもへの犯罪と交通事故被害の空間的な分布傾向を,土地利用と関連させて分析した.大阪府警察がWeb上で公表する地図を元に,歩行中と自転車乗車中の交通事故と,家庭学校外で発生した暴行,痴漢,声かけ,公然わいせつの犯罪被害を対象とした。国土地理院発行の土地利用図と発生地点とを比較して,13種類の土地利用種ごとの発生割合を比較した。住宅地,商業業務地,道路では期待値より高い頻度で,森林,農地,公共地,工業用地では低い頻度で発生する。学校,鉄道駅,幹線道路に近い場所に高い発生密度が認められた。面積あたりの住宅地割合,商業業務地割合を見ると,住宅地と商業業務地の混在した環境で,発生密度が高いことが示された。交通事故と犯罪発生には車両交通量,子どもの行動範囲,犯罪企図者にとっての接近しやすさなどが背景の環境的要因として存在する.これらの結果から地域の子どもの安全対策の方法について議論した。This study aims to show relationships between land-use and spatial distribution patterns of child victims in traffic accident and crime, and discuss usefulness of using land-use data as a measure of preventing children from traffic accident and crime. Land-use data are collected using digital maps 5000 published by Geographical Survey Institute. Spatial data of child victims of traffic accidents and crime are obtained from Web-GIS map offered by Osaka Prefectural Police Department. In the areas of residence and commerce and on road, higher percentages of occurrences of victim occur, to the other hand, lower percentages are shown in forest, agricultural, industrial and open areas. Proximities to school, station and major road give higher density of occurrences of victims. An area of mixture of residence and commerce also shows higher density of occurrences of victims than an area exclusively covered with residence or commerce.
著者
大西 宏治 寺本 潔 田部 俊充 志村 喬 水野 惠司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

子どもの地域安全マップの作成カリキュラムと防犯教材の開発に地理教育の視点から取り組んだ。日本では景観から犯罪危険性を読み取る教育として地域安全マップづくりが行われている。英語圏の取り組みを見る限り、このような防犯学習は少なくとも地理教育の観点からは日本のユニークな取り組みであることがわかった。カリキュラムは小学3年生程度で実施するまち探検を利用して、景観に危険を読み取る技能の育成から始める。次に、交通事故やその他の危険を地図から読み取る学習、最後に地形図などから地域の防災を取り上げる。このように景観や地図を読み取る技能を段階的に身につけていくことが、地域の安全や危険を読み取る技能の育成にもつながるであろう。
著者
水野 惠司 元村 直靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1)一般に普及する29の安全地図事例を収集し、その特徴を分析した。主に学校単位で保護者や生徒により作成される安全地図は、犯罪や交通事故の危険想定箇所について原因や周辺環境についての説明がある。主に警察で作成される安全地図は、府県単位の範囲の、犯罪や交通事故の正確な発生箇所と内容を示すが、原因や環境については説明されない。前者は保護者や生徒が犯罪事故を地図化し原因や環境を考える中で、防犯防事故技能の向上が期待できるが、情報が主観的で経験的であること、地図の範囲が狭く、視野が限定される特徴がある。後者は広い範囲の客観的情報を広範囲に伝えることができるが、原因と周辺環境の説明を欠くために、地図の具体的活用方法に不十分さがある。2)安全地図に対する保繊者の意見を参考に、計二版の安全地図が作成された。さらに、小学3年社会科授業においての授業が行われ、そこで、安全地図に描かれた不審者の分布、子ども110番の家分布図が利用された。3)大阪北部、兵庫県東部の11市区町を対象に、犯罪と交通事故の空間分析を行った結果、犯罪と交通事故は、地域内の複数箇所に集中するが,その分布は大人と異なる場合が多い。中学校校区単位での子ども人口と犯罪・交通事故件数とは正の相関がある一方で、校区間には有意な発生率の差異が見られ、校区内に発生地点の粗密が見られた。道路や土地利用図との重ね合わせ分析の結果、犯罪の場合、住宅地域特に中高層住宅に多く発生する。また商業地の周辺地域や商業地と住宅地との混在地域に発生が多くなる。このような場所は、通行量の多い場所から、少し住宅地内に入り、人の監視が少なくなる場所に相当する。交通事故の場合、幹線道路上とその近辺に大半が分布する。また住宅地と商業地に多く発生している。子どもの行動が地域の経済社会活動と関連し、交通事故の集中する場所となっていることを示している。