著者
寺本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.43-48, 2012 (Released:2012-04-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

地図は子どもの空間認知形成にとって重要な役割を果たしている.子どもたちは地名に関する知識や知的好奇心を伴って描写する技能に長けている.地図や地球儀は,ローカルから地球規模までのスケールを扱うことができ,私たちの基礎的な地理的世界の形成に大きく寄与しているが,地理に関係する学習指導要領は子どもに地理的な原理や世界を学ばせる上で十分ではない.
著者
寺本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.276, 2011

小学校からの地図、地球儀学習の必要性を提案する。とりわけ地球儀学習は重要である。地球儀には、多くの印字も見られ、アームやリングにも目盛が付けられている。これらの数字にいきなり入るのは、児童にとって難しい印象を与えるので避けたいが、見慣れている世界全図と地球儀を比べさせることから始めたい。そうすれば、描かれている大陸や海洋の形や大きさが違う、縦と横にいろいろな線が引いてあるが地球儀の線は曲がっている、地球儀だと回転できるので面白いなどと言った意見が出てくる。これらを丁寧に注視させたり、経線や緯線を指でなぞらせたりしながら、地球儀に親しんでもらうことが先決である。特に緯線は、「日本と同じ緯度にある国々はどんな国ですか?」「地球儀で眺めると暖かい土地や寒い土地、中ぐらいの気温の土地などがよくわかります。」「わたしたちの住む日本は、どの州に属していますか?自然の条件で呼ぶ『大陸』ごと、で分けるやり方と違って人間が住む土地の様子で呼び分ける『州』という呼び方で世界を分ける方法もあります。」などと解説して指導したい。州で世界を区分する内容は、教科書には載っていないが、現行の『地図帳』には掲載されている。世界の大陸名が記入してある地図と合わせて、アジアを中心にした西半球図とアメリカを中心にした東半球図という平面の地球図も用いながら、大陸や海洋の広がり、5つの州の名前、経線や緯線を扱うと良い。北回帰線や南回帰線という見慣れない用語も『地図帳』で目にするが、深入りは避けたい。もし児童が質問をしてきたら、「回帰線という線の真上に太陽が見える日があり、その日には真上から光が差すので立っている人の陰ができないのです。夏至の日には北回帰線に、冬至には南回帰線の真上から太陽の光が注ぐのです。」と説明する。地図や地球儀を扱える技能を明確に学力として位置づけるべきであろう。
著者
寺本 潔
雑誌
論叢:玉川大学教育学部紀要 (ISSN:13483331)
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.73-85, 2015-03-31

小学校における観光をテーマとした授業と教材開発が沖縄県の公立小学校を舞台に行なわれた。既成の社会科単元を組み替えて実験的に実施された。加えて,筆者自身による出前授業と自作したカード教材の有効性も確認できた。観光の授業は自県のよさを子どもが見直すだけでなく,観光客が楽しむプログラムを立案したり,身近に存在する世界遺産を観光客の目で捉え直したりできる機会になる。子どもたち自身が「観光のまなざし」を理解し,自らも確かな観光者として成長できるきっかけとなる。
著者
寺本 潔 田本 由美子
出版者
玉川大学教育学部
雑誌
論叢 : 玉川大学教育学部紀要 (ISSN:13483331)
巻号頁・発行日
pp.115-132, 2015

244年前,沖縄県八重山地域を襲った大災害,明和大津波を研究した故・牧野清の独自の研究方法や研究成果の今日的意義に関して,地元に残されている資料をもとに考察した。その結果,当時としては広い視野から科学的見地に立ち丹念な地域調査に基づく推論を展開し,実証的に大津波被害の解明に挑んだことが改めて浮き彫りとなった。その意義は,中央の科学者との積極的な交流,測量も加味した綿密な実地踏査と地図化,丁寧な古文書解読,さらに古老からの聞き取り,私費を投じた慰霊碑の建設等,多岐にわたっている。研究者としてだけでなく人格者としても優れた足跡を残した「八重山学の偉人」として位置付けることができる。
著者
寺本 潔
雑誌
玉川大学教育学部紀要 (ISSN:13483331)
巻号頁・発行日
no.2016, pp.101-116, 2017-03-31

観光という事象を総合的学習や社会系科目に学習課題として導入することの意義について実証的に出前授業を通して明らかにすることが,本稿の目的である。観光は,沖縄県においてとりわけ重要な産業になっており,那覇市に位置する高校においては普通科の内容としても扱うに相応しい内容と思われる。折しも,スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)の指定を受けている高校において提案性に富む実験的な授業が実施できた。今回,マーケティング基礎の内容を含む教材や地域ストーリーづくりの演習問題の開発により,観光教育は今後の沖縄県における人材育成としても大切なテーマであることが確認できた。
著者
寺本 潔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.89-109, 1984
被引用文献数
7

本研究は,子どもの知覚環境の発達とそのメカニズムを明らかにするために,熊本県阿蘇カルデラ内に居住する小学校2・3・5年生,および中学校1年生,計1,432名を被験者としてなされたものである.<br> 調査方法としては,身近な地域を描いた手描き地図から読み取る方法と,周辺の地物を撮影したスライド画像に対する反応を分析する方法を用いた.前者により描かれた空間は,発達段階に従って外延的拡大を示すが,著しく動線に影響されることが明らかとなった.また,子どもにとって「意味のある空間」として, (1) 近道,抜け道 (2)「秘密基地」,「隠れ家」(3) こわい場所,「幽霊屋敷」を検出した.後者により,可視領域に位置する目立つ地物は,知覚環境を構成する重要な目印として作用していることが推察された.<br> このような子どもの知覚環境の発達に関する基礎的な研究は,子どもの発達を内発力とする新しい地理教育のカリキュラム開発に寄与しうるものと考えられる.
著者
寺本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.89-109, 1984-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
38
被引用文献数
9

本研究は,子どもの知覚環境の発達とそのメカニズムを明らかにするために,熊本県阿蘇カルデラ内に居住する小学校2・3・5年生,および中学校1年生,計1,432名を被験者としてなされたものである. 調査方法としては,身近な地域を描いた手描き地図から読み取る方法と,周辺の地物を撮影したスライド画像に対する反応を分析する方法を用いた.前者により描かれた空間は,発達段階に従って外延的拡大を示すが,著しく動線に影響されることが明らかとなった.また,子どもにとって「意味のある空間」として, (1) 近道,抜け道 (2)「秘密基地」,「隠れ家」(3) こわい場所,「幽霊屋敷」を検出した.後者により,可視領域に位置する目立つ地物は,知覚環境を構成する重要な目印として作用していることが推察された. このような子どもの知覚環境の発達に関する基礎的な研究は,子どもの発達を内発力とする新しい地理教育のカリキュラム開発に寄与しうるものと考えられる.
著者
大西 宏治 寺本 潔 田部 俊充 志村 喬 水野 惠司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

子どもの地域安全マップの作成カリキュラムと防犯教材の開発に地理教育の視点から取り組んだ。日本では景観から犯罪危険性を読み取る教育として地域安全マップづくりが行われている。英語圏の取り組みを見る限り、このような防犯学習は少なくとも地理教育の観点からは日本のユニークな取り組みであることがわかった。カリキュラムは小学3年生程度で実施するまち探検を利用して、景観に危険を読み取る技能の育成から始める。次に、交通事故やその他の危険を地図から読み取る学習、最後に地形図などから地域の防災を取り上げる。このように景観や地図を読み取る技能を段階的に身につけていくことが、地域の安全や危険を読み取る技能の育成にもつながるであろう。