著者
大西 宏治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-33, 2007 (Released:2010-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

近年,児童が被害者となる凶悪な犯罪が増加しつつある.子どもたちにこれらの犯罪が降りかかる危険性を減らすために,全国各地で「地域安全マップ」づくりが盛んになっている.様々な地域安全マップが全国各地で作成されている.地域安全マップのねらいは,犯罪が発生しやすい景観の特徴や犯罪の発生する空間的要因を子どもに理解してもらうことにあり,そのためにフィールド調査を行い地図の作成をする.そこで,地理学がこれまで培ってきた地理学の研究成果を応用したり,Web-GISを活用した地域情報の共有をサポートするなどを行って「地域安全マップ」づくりをサポートしていくことで,これまで以上に有益な「地域安全マップ」が作成されることになるであろう.
著者
大西 宏治
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.149-172, 2000-04-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
167
被引用文献数
7 2

The aim of this paper is to systematize the study of children from a geographical viewpoint and to identify new perspectives in children's geography or the geography of children.From the 1960s to the 1970s, studies of children in geography began with the progress of behavioral geography. Summing up 1960s-1970s findings, the area perceived by children and the action space of children increases as children grow older.In the 1970s, time geography appeared and some geographers thought that constraints could explain human activities. Children's life space was re-interpreted from the viewpoint of constraints.From the 1980s to the 1990s, gender and postmodern geography developed. Gender geography's concern with children is that children are born and brought up by women, and that gender roles determined children's spatial activity range. Postmodern geography's concern is with children as "others" and the objection to the image of childhood made by modern society. Gender and postmodern geography's concerns have produced more articles on children's geography than ever before.Until the 1990s, children's geography explained and interpreted children from an individual perspective. From the 1990s, children's behavior has been explained in relation to their socioeconomic context in geographical studies (a contextual approach).The future directions of these studies are summarized as follows: 1) more consideration should be given to children's lived experience in places; 2) we should explain children's life space from a socioeconomic context; and 3) we should consider the process of how the image of childhood creates children's life space. It would be especially useful to use an institutional approach.
著者
西村 雄一郎 森田 匡俊 大西 宏治 廣内 大助
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100321, 2014 (Released:2014-03-31)

1.はじめに 東日本大震災以降、携帯電話やカーナビゲーションシステムのGPSログ、ソーシャルネットワークサービスなどにおける位置情報がついた書き込み、災害情報報道などを含むいわゆる「震災ビッグデータ」の分析が進んでおり、特にそれらに含まれる位置情報を活用したGISによるビジュアライゼーション・空間分析が行われている(渡邉 2012)。これらは、「マスメディア・カバレッジ・マップ」「報道カバレッジマップ」と名付けられており、音声の書き起こしテキストから地名を抽出し、地域区分に基づいて集計されたデータを地図化することによって、報道の地域的な偏りや報道空白地域を明らかにするものであった。 一方、これらの分析で権利処理の関係などから利用されなかったのが震災発生時の放送映像である(村上 2013)。しかし、放送映像には、多くの地理的な情報が含まれており、被災地域のフィールドワークと組み合わせることによって、被災当時の状況や変化を復元することの可能な資料として、また報道と実際の被災状況のギャップを相互に検証することの可能なデータとして利用することが可能である。そこで、本発表では、2012年度に実施された「NHKアーカイブス学術利用トライアル研究Ⅱ」において、2000年9月東海豪雨のニュース映像の閲覧に基づくデータ化・地図化を行うとともに、ニュース映像に基づくデータと被災地域における地理学的なフィールドワークの結果をオーバーレイすることで比較を行い、こうした災害映像の被災状況復元のための利用可能性や限界、また報道内容と実際の被災状況の間にどのようなギャップや齟齬が発生したのかについて検討した。2.NHKアーカイブス災害映像からの地理的情報の抽出 今回東海豪雨を対象として取り上げた主な理由としては、映像が数多く存在し、また報告者らがこれまでに複数回調査を行うなど、被災地域の地理的な環境や詳細な地理的情報を熟知しているためことによる。東海豪雨に関する映像資料の検索・閲覧は、NHKアーカイブズ(川口)で報告者自身が行った。ここでは、全国放送のニュース映像・並びに取材VTR素材の閲覧が可能であり、保存VTRの検索を行うことが可能なデータベースを利用して、東海豪雨に関連する映像の検索を行った。データベース・放送された映像のほとんどには、映像の撮影地点を特定する情報が入っていなかったため、検索された映像にみられるさまざまな地理的要素(交差点名の標識・店舗名を示す看板や広告、また道路・鉄道・街路樹等の形状や起伏、空撮の場合は道路網の形状、建物や堤防等の形状、被害状況など)を既存の地図情報や被災地域でフィールドワークによる景観的な特徴と照合し、撮影地点の特定を行った。3.報道マッピングとフィールドワークによるデータの比較分析 このようにして作成した位置つきの撮影地点情報についてGISを用いてマッピングを行った。当日の発表では、特に名古屋市や周辺地域を含むマッピングの結果ならびに、フィールドワークや実際の被災状況と比較した結果を報告する。文献 渡邉英徳:散在データ間の地理的・時間的関連性を提示するマッシュアップコンテンツの Web アクティビティによる制作,2012.https://sites.google.com/site/prj311/event/presentation-session/presentation-session3#TOC-Web- 村上圭子「震災ビッグデータ」をどう生かすか−災害情報の今後を展望する−,放送研究と調査,pp. 2-25,2012.
著者
吉永 真理 野井 真吾 鹿野 晶子 大西 宏治 そとあそびプロジェクト・せたがやのメンバーと世田谷区子ども若者部児童課のみなさん
出版者
昭和薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

自然環境に恵まれた都心部で1776組の親子を対象にした質問紙調査を行なった。子どもたちが放課後を過ごす場は低学年では学校や公園で、高学年は塾や習い事の頻度が高く、外遊びが少ない実態が明らかになった。体を動かして遊ぶ、自然環境で遊ぶ、水辺で遊ぶ時間が多いほどSDQの情緒、仲間関係、向社会性は良好だった。ゲーム時間は多動に関連していた。DSM-5/ADHDでは、からだを動かして遊ぶ時間が30分以上であると不注意傾向が少なくなることが示された。まち探検&遊び活動のアクション・リサーチでは活動量の個人間のばらつきが大きく、最後の30分間に活発に活動している群は不活発群より有意に覚醒度が上昇した。
著者
大西 宏治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

地形図を読図し、地形図上の事象と眼前の景観を対照させて地域を観察することができる技能を育てることは重要である。しかしながら、地形図を読図することは教室の中でできても、景観と対照させる機会をもつことは難しい。また、地形図と景観を対照させる題材をみつけ、生徒を景観の広がるところに連れ出しても、一斉授業で行おうとすると次のような問題が生じる。眼前の景観と地形図とを対照させることを教示することがそれほど容易ではないことである。教室内の読図では地域の状態がそれなりに理解されているにもかかわらず、目の前に広がる風景と地形図がすぐには比べられず、その指導に多くの時間がとられてしまう。このような問題を解決することができるのがAR(拡張現実)を用いた地形図読図の授業である。今回用いたソフトウエアJunaioはスマートフォンやタブレット上で動作するものである。GISとGPS機能と連動し、あらかじめデジタル地図上に緯度経度で地点を登録すると、スマートフォンなどを景観に向けるとエアタグで登録した地点を景観上に示してくれる。この機能を活用することで、生徒に地形図の読図結果を景観上に確認する指導が容易になる。この機能が授業でどの程度有効で、どのような活用が可能なのかを実験授業を通じて検討することが本報告のねらいである。実験授業は富山高等専門学校商船学科および国際ビジネス学科の1年生(商船学科41名、国際ビジネス学科52名)を対象に実施した。高等専門学校1年生は学齢的には高等学校1年生と同等である。授業は必ずしも学習指導要領に縛られるものではないが、高等学校地理Bの教科書を利用しながら「地理」の授業を行っている。1授業が90分間である。授業テーマは放生津潟の開発と土地利用変化と設定した。放生津潟の大規模開発による富山新港設置について検討する授業を実施する。地形的な特徴と土地利用の変化を考えるためにAR技術を援用する。特に地盤高をARで確認し、大規模改変の詳細を考える授業を実施した。授業は次のように実施した。授業は連続して3時間ではなく、前期に1、2回、後期の3回目を実施した。<br>第1回:海岸地形に関する授業、第2回:放生津潟周辺の地形図の新旧比較、第3回:ARを用いた景観と地形図の比較、である。射水キャンパスは富山新港に近く、学校周辺の土地利用変化やその意味を考えることにつながる授業である。このキャンパスには商船学科があり、展望塔が設置されている。そのため、北陸の冬季の悪天候の中でも屋内から景観と地形図を比較する授業が実施できる。特に第3回の授業について記述する。授業の冒頭10分でAR技術とJunaioの使い方を説明した。次に端末数が限られるため、各クラスとも14名ずつに分け、展望塔に移動し、そこで地図と景観を比較する授業を実施した。教室に残る生徒には、本授業に関するワークシートの作業をさせた。<br>(1)新旧地形図上にエアタグの位置を記入、(2)新旧地形図から新たに造成した地域を確認、(3)工場の立地地点の特色の検討。授業を実施した結果から、生徒たちは地図とARでわかる情報を組み合わせることが容易にでき、地域の理解が進んだという感想が多く見られた。また、ARを利用したのち、地形図の理解が進んだというものも見られる。授業にAR技術を活用することで景観を利用した地理授業が一定程度効果的に実施することができることがわかった。しかしながら、機器の利用についていくつかの課題がある。たとえばデジタルコンパスはあらかじめ十分に準備しないと利用できない。また、景観と地図を対応させる十分に効果的な課題を授業で設定できるのかという点である。これらについてさらに検討が必要である。<br>
著者
大西 宏治 寺本 潔 田部 俊充 志村 喬 水野 惠司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

子どもの地域安全マップの作成カリキュラムと防犯教材の開発に地理教育の視点から取り組んだ。日本では景観から犯罪危険性を読み取る教育として地域安全マップづくりが行われている。英語圏の取り組みを見る限り、このような防犯学習は少なくとも地理教育の観点からは日本のユニークな取り組みであることがわかった。カリキュラムは小学3年生程度で実施するまち探検を利用して、景観に危険を読み取る技能の育成から始める。次に、交通事故やその他の危険を地図から読み取る学習、最後に地形図などから地域の防災を取り上げる。このように景観や地図を読み取る技能を段階的に身につけていくことが、地域の安全や危険を読み取る技能の育成にもつながるであろう。
著者
若林 芳樹 岡本 耕平 今井 修 山下 潤 大西 宏治 西村 雄一郎 池口 明子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,日本で本格的にPPGIS(参加型GIS)を実践していくための方法論的基礎を確立することを目的として,内外での既存の実践例を調査した上で,日本の実情に即したPPGIS の応用の仕方を検討した。研究にあたっては,課題を次の四つのサブテーマに分けて取り組んだ:(1) PPGISの理論的・方法論的枠組み(2) PPGIS のための技術開発(3) PPGIS の実践例の調査(4) PPGISの実践的応用。