著者
見舘 好隆 永井 正洋 北澤 武 上野 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-196, 2008
被引用文献数
4

学生の「学習意欲」や「大学生活の満足度」は,どのような要因が押し上げているのか.想定される様々な要因を探るアンケートを公立S大学の学生に実施し,その結果から因子分析によって「学習意欲」「大学生活の満足度」に影響を与えていると想定される因子を抽出した.そして抽出された因子間の因果関係を共分散構造分析にて分析した結果,「教員とのコミュニケーション」は「学習意欲」を高め,さらに「大学生活の満足度」にも影響を与えていた.また,「友人とのコミュニケーション」は「大学生活の満足度」にあまり影響を与えておらず,「学習意欲」には関連がないことが示唆された.
著者
大嶺 謙 永井 正
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

BCR/ABLキナーゼ阻害薬imatinibは慢性骨髄性白血病に対する有用な分子標的薬であるが、同剤の耐性機序の解明と有効な克服法の開発は重要な課題である。1.DNAマイクロアレイ法による、BCR/ABL陽性白血病細胞株KCL22とimatinib耐性株KCL22/SRとの遺伝子発現プロフィールの比較から、情報伝達系関連分子RhoAの耐性株における高発現が明らかとなった。新たなimatinib耐性株K562/SRとKU812/SRにおけるRhoAの発現をWesternblot法を解析し、特にKU812/SRで発現がきわめて増強していることを見いだした。2.新規Chk1阻害薬UCN-01をimatinibに併用することによりimatinibの耐性克服が可能であるか検討した。imatinib耐性BCR/ABL陽性細胞株は両剤の併用によってもアポトーシスの誘導がみられず、一方でG_0G_1期にある細胞比率の増加を認めた。さらにisobologramで細胞増殖に対する効果を検討した結果、何れの耐性細胞株でも相乗的増殖抑制効果は認められず、一部の細胞株ではむしろ拮抗的に作用した。従って、細胞周期に抑制的に作用する分子標的薬はimatinibの作用を阻害する可能性がある。3.様々な細胞内因子の機能調節に関与しているヘムのimatnib感受性への影響について検討した。hemin存在下で、KCL22細胞に対するimatinibのIC_<50>値は3.17倍に増加し、アポトーシスが誘導され、アポトーシス関連分子の増加が抑制された。heminはimatinibによるリン酸化BCR/ABL量の低下を阻害しなかったことから、BCR/ABLキナーゼ活性非依存的に作用しているものと推察された。更に、KCL22細胞にheminを添加することでYGCS遺伝子プロモーター活性の上昇および細胞内グルタチオン(GSH)濃度の増加を認めた。以上からヘムはimatinib感受性の調節に重要であり、その機序の一端はGSH合成系を介しているものと推察された。
著者
永井 正 大嶺 謙
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.Imatinibに対する耐性機序の解析-CML由来細胞株KCL22にheminを添加すると、imatinibに対するIC_<50>値が増加した。Hemin存在下では、imatinib添加後でもリン酸化Bcl2、BclXL、cleaved caspase 3、7,9、PARP等の量的変化が抑制されたことから、hemeはimatinibによるアポトーシスの誘導を阻害するものと考えられた。Heminの添加により、(1)AREを有する_-glutamylcystein synthetase(γ-GCS)軽鎖のプロモーター活性が増加し、(2)γ-GCSが律速酵素であるglutahioneの合成量の増加を認めた。さらに(3)γ-GCS阻害薬Buthionine sulfoximineを添加すると、heminによるimatinib感受性低下が部分的に回復した。この結果は、hemeによるNrf2活性の変化がimatinib感受性調節機序の一端を担っていることを示唆している。2.ImatinibとFarnesyltransferase阻害薬であるTipifarnibとの併用により、imatinib耐性株および親株で相乗的に細胞増殖が抑制された。この場合、細胞株によってアポトーシスの誘導と細胞周期阻害のそれぞれの重要性が異なっていた。次にTipifaarnibに対する耐性獲得機序を明らかにする目的で、ヒトCML急性転化由来細胞株K562を親株としてTipifarnibに対する耐性細胞株K562/RRを新たにクローン化した。K562/RRにTipifarnibを添加すると、K562と同程度にHDJ-2蛋白のfarnesylationが阻害された。従って、K562/RRにおけるTipifarnib耐性は、標的分子であるfarnesyltransferaseに非依存性の機序によるものと推察された。K562では、Tipifarnib添加によりアポトーシス関連分子の発現量が変化しAnnexin V陽性細胞数の増加を認めたが、同量のTipifarnibをK562/RRに添加してもこれらの変化を認めなかった。次に、DNAマイクロアレイ法によりK562とK562/RRにおける遺伝子発現プロフィールの差異について検討した。その結果、K562/RRでは細胞周期関連分子の他にβ-globinの発現増強が認められた。さらに、それぞれの細胞株におけるTipifarnib添加前後での遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイ法で検討したところ、β-globinの発現量がK562ではTipifarnib添加により増加するのに対し、K562/RRでは低下することが明らかとなった。この結果は、分化形質の発現と耐性獲得との関連を示唆している。