著者
阿南 あゆみ 竹山 ゆみ子 永松 有紀 金山 正子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.385-393, 2005-12-01
被引用文献数
3

本研究は, 児の主たる養育者である母親の対児感情に影響をおよぼす要因を明らかにすることを目的として, 産後入院中の母親185名に妊娠中の出産に対する希望の有無や, 出産時の「嬉しかった事」「嫌だった事」や出産時に感じた事などと対児感情との関連を, 無記名自記式質問紙調査として行った.データの統計的解析にはSPSS 12.0J for Windowsを使用し, 対児感情得点と設問項目の関連をマン・ホイットニーのU検定およびクラスカル・ワーリスの検定を行い解析した.その結果, 対児感情に影響をおよぼす要因は, キーパーソンの存在がいること, 妊娠中に具体的なバースプランを持つこと, 望まれた妊娠であること, 母親が納得のいく出産であることなどが明らかになった.今回の結果より, 思春期教育や受胎調節指導の重要性や, 母親を支えるサポート体制の確立, 出産をする場である医療機関における妊娠中から産後にかけての一貫した支援が重要であると考える.
著者
藤井 勝也 永松 浩 永松 有紀 小園 凱夫
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4.5, pp.112-123, 2006-12-01 (Released:2017-12-11)
参考文献数
44
被引用文献数
2

チタンは,優れた生体適合性および耐食性を有するため,歯科用インプラントとして幅広く用いられるようになった.しかし,インプラントの上部構造をはじめ,ブリッジ,クラウン,インレーのような金属修復物にはチタン以外の合金を用いることが多い.電解液中で接触する異種合金間にはガルバニック反応に起因する電気化学的腐食が生じて電気化学的に卑な金属の腐食がさらに助長されることはよく知られている.したがって,歯科修復物を作製する際には,ガルバニック反応を避けるため,同一口腔内における異種合金の接触が起きないように設計するよう提唱されている.一方,異種合金が非接触状態で共存した場合についての腐食挙動は,まだ明らかにはなっていない.本研究においては,純チタンと異種合金が接触あるいは非接触状態で1.0%乳酸水溶液中に36週間共存した場合の電気化学的腐食について調べた.純チタンと陶材焼付用金合金の共存においては,接触,非接触に関わらず,これらの合金からの成分元素の溶出量にほとんど変化はみられなかった.共存により,金合金からのCu溶出量のわずかな増加および純チタンからのTiの溶出量の増加がみられた.金銀パラジウム合金については,Agの溶出抑制,Cuの溶出促進および純チタンからのTiの溶出促進がみられた.銀合金は単独浸漬においても,成分元素の溶出が顕著であった.純チタンと接触して共存した場合,Inの溶出促進傾向が認められたが,AgおよびTiの溶出は抑制された.それらを接触させない場合も同様の傾向を示した.純チタンとの共存により,コバルトクロム合金からのCoの溶出は促進された.接触および非接触のいずれでも,純チタンからのTiの溶出は増加する傾向にあった.本実験結果から,チタンおよび異種合金試験片を組み合わせた場合,陶材焼付用金合金を除くいずれの合金においても,非接触の状態でも接触した場合と同様に腐食が起こり得ることがわかった.チタンインプラントの設計に当たっては,口腔内に存在する金属修復物からのアレルギーあるいは毒性成分の溶出が促進されることを避けるために,口腔内の総合的な生体適合性を十分に考慮すべきであることが示唆された.
著者
野本 ひさ 河野 保子 永松 有紀 平澤 明子 吉村 裕之 中島 紀子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男性で在宅介護を行っている人の実態を調査した。男性介護者は女性に比べて強い意志決定の元に介護を担っていることが判明した。介護を経験する前の夫婦を対象にした夫婦間介護意識調査を実施した。配偶者の介護をしようと考える気持ちは夫婦の関係性、夫の家事参加、夫婦間トラブルの頻度に依拠していることが判明した。夫婦間介護意識は、実際に介護を行っている者も介護を行う以前も夫と妻で違いがあり、特に夫の介護意志決定には男性特有の意地・遠慮やそれまでの夫婦の関係を償おうという思いが反映していた。
著者
永松 有紀
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.515-531, 1996-06-25
被引用文献数
13 1

B型肝炎ならびにエイズの知識が広まるに伴って, 院内感染対策に大きな関心がもたれるようになった.印象は血液あるいは唾液の混入による感染の危険性が高いため確実に滅菌する必要があるが, 消毒・滅菌方法の中には, 印象および模型の寸法ならびに表面性状に影響をおよぼすものがある.本実験では, 顕著な殺菌効果であり, 歯科臨床においても広く用いられるようになった電解酸性水のアルジネートおよびシリコーンゴム印象に対する適切な滅菌方法を考察するために, 種々の処理を施した場合の殺菌効果を調べた.印象採得時に, プラスチック原板(1.0×10^6個の生菌を塗布)からアルジネート印象に4.0×10^5個(40.0%), シリコーンゴム印象表面には2.1×10^5個(21.0%)の生菌が付着した.蒸留水によりこれらを処理した場合に, シリコーンゴム印象では物理的作用により4.5×10^2個(0.2%)まで除菌可能であった.電解酸性水は, アルジネート印象に対して浸漬・超音波洗浄あるいは洗浄後浸漬の処理で, シリコーンゴム印象ではこれらに洗浄・スプレー噴霧およびガーゼによる拭き取りを加えたすべての処理により100個以下に生菌数は低下しており, 顕著な殺菌効果を示した.電解酸性水によるアルジネート印象材の練和を行った場合には殺菌効果はまったくみられなかった.印象の採得時に, ほとんどの菌はアルジネート印象の表面から1mm深さまで浸入しており, 1∿3mm深さではわずかな菌が点在しているだけであった.一方, シリコーンゴム印象では菌の浸入は認められなかった.電解酸性水への単純な浸漬はわずか1分間で被検菌を数個までに減少させており, 超音波洗浄の物理的効果を付加した場合と比較して有意差はみられなかった.浸漬処理を行う前に洗浄による前処理を行うことで, いずれの印象でも菌は検出されず, この組合わせ処理により印象表面を無菌状態にできた.以上の結果より, 電解酸性水はアルジネートおよびシリコーンゴム印象に高い殺菌効果を示すことが示唆された.
著者
永松 有紀
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.515-531, 1996
参考文献数
34
被引用文献数
13 8

B型肝炎ならびにエイズの知識が広まるに伴って, 院内感染対策に大きな関心がもたれるようになった.印象は血液あるいは唾液の混入による感染の危険性が高いため確実に滅菌する必要があるが, 消毒・滅菌方法の中には, 印象および模型の寸法ならびに表面性状に影響をおよぼすものがある.本実験では, 顕著な殺菌効果であり, 歯科臨床においても広く用いられるようになった電解酸性水のアルジネートおよびシリコーンゴム印象に対する適切な滅菌方法を考察するために, 種々の処理を施した場合の殺菌効果を調べた.印象採得時に, プラスチック原板(1.0×10^6個の生菌を塗布)からアルジネート印象に4.0×10^5個(40.0%), シリコーンゴム印象表面には2.1×10^5個(21.0%)の生菌が付着した.蒸留水によりこれらを処理した場合に, シリコーンゴム印象では物理的作用により4.5×10^2個(0.2%)まで除菌可能であった.電解酸性水は, アルジネート印象に対して浸漬・超音波洗浄あるいは洗浄後浸漬の処理で, シリコーンゴム印象ではこれらに洗浄・スプレー噴霧およびガーゼによる拭き取りを加えたすべての処理により100個以下に生菌数は低下しており, 顕著な殺菌効果を示した.電解酸性水によるアルジネート印象材の練和を行った場合には殺菌効果はまったくみられなかった.印象の採得時に, ほとんどの菌はアルジネート印象の表面から1mm深さまで浸入しており, 1∿3mm深さではわずかな菌が点在しているだけであった.一方, シリコーンゴム印象では菌の浸入は認められなかった.電解酸性水への単純な浸漬はわずか1分間で被検菌を数個までに減少させており, 超音波洗浄の物理的効果を付加した場合と比較して有意差はみられなかった.浸漬処理を行う前に洗浄による前処理を行うことで, いずれの印象でも菌は検出されず, この組合わせ処理により印象表面を無菌状態にできた.以上の結果より, 電解酸性水はアルジネートおよびシリコーンゴム印象に高い殺菌効果を示すことが示唆された.