著者
一瀬 邦弘
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.396-407, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
49
被引用文献数
1 4

全身性エリテマトーデスは自己抗体産生を背景に多臓器病変を呈する自己免疫疾患である.全身性エリテマトーデスでは多彩な臓器病変を認め,ループス腎炎および精神神経ループスなどが生命予後に関連する代表的な合併症として知られている.ここ30年でステロイドや免疫抑制剤により全身性エリテマトーデス患者の生命予後は改善し,5年生存率は90%を超えた.しかしながら,いまだに全身性エリテマトーデスの治療はこれらに依存することが大きく,合併症による副次的な要因で死に至らしめることもある.近年,生物学的製剤や低分子化合物などの治療標的に対してより効果的に機能する治療薬が開発され,治療抵抗性のループス腎炎や神経精神ループスに対する効果が期待されている.SLEの診断には1997年に改訂され米国リウマチ学会(ACR)によって提唱された分類基準や2012年発表のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準が用いられているが,診断を目的として作成されたものではなく,早期診断には必ずしも有効ではない.このような観点から全身性エリテマトーデスを早期に診断するための新しいバイオマーカーが必要である.本稿では全身性エリテマトーデスのunmet needs,特にループス腎炎と神経精神ループスについて自験例のデータを交えて概説する.
著者
川尻 真也 川上 純 岩本 直樹 藤川 敬太 荒牧 俊幸 一瀬 邦弘 蒲池 誠 玉井 慎美 中村 英樹 井田 弘明 折口 智樹 江口 勝美
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.190-194, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
12

症例は56歳,女性.主訴は多発関節痛.1999年に拇趾MTP関節の痛風発作を発症した.その後,痛風発作を繰り返すもコルヒチン内服にて症状は軽快していた.しかし,2006年頃より関節痛は全身の多関節におよび,持続性となった.2007年4月,多発関節炎の精査加療目的にて当科紹介入院となった.入院時,著明な高尿酸血症を認めた.入院中,関節炎発作による全身の関節痛および高熱を認めた.関節液所見にて白血球に貪食された尿酸ナトリウム針状結晶を認め,痛風と診断した.デキサメタゾン4 mg筋注およびコルヒチン投与により症状は改善した.
著者
大山 要 曽良 一郎 小澤 寛樹 竹林 実 今村 明 上野 雄文 岩永 竜一郎 福嶋 翔 酒井 智弥 植木 優夫 川尻 真也 一瀬 邦弘 山口 拓 縄田 陽子 中尾 理恵子 小川 さやか
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

ゲーム依存はゲームへの没頭で不登校、家庭内の暴言・暴力、昼夜逆転や引きこもりなどの健康・社会生活障害をきたす状態である。ネットとゲームの利活用は今後も拡大するため、脳への影響を多角的・統合的に評価し、健康使用から依存症となる境界線を知る指標が必要である。本研究では、患者脳画像情報・患者情報、そして患者検体から得られるタンパク質変動情報からなる多次元情報を人工知能解析することで依存バイオマーカーの特定を目指す。本研究の進展でゲーム依存の実効的な対策研究を進められる世界でも例を見ない研究基盤が形成される。
著者
鮫島 達夫 前田 岳 土井 永史 中村 満 一瀬 邦弘 米良 仁志 武山 静夫 小倉 美津雄 諏訪 浩 松浦 礼子
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.126-133, 2000

神経ブロック, 各種薬物療法などの効果なく, 反応性にうつ状態を呈した帯状疱疹後神経痛 (PHN) 10例に対し電気けいれん療法 (ECT) を施行し, その長期観察を行なった. 全例で持続性疼痛, 発作性疼痛, allodynia がみられ, 意欲低下, 食思不振など日常生活に支障をきたし, 抑うつ症状がみられた. 第1クールでこれらは改善したが, 7例に2~26カ月で疼痛, allodynia の再発がみられた. Allodynia の再発は, 知覚障害のある一定部位にみられ, 徐々に拡大した. しかし, 抑うつ症状の増悪はなかった. ECT第2クールは, 第1クール後5~26カ月後に施行し, より少ない回数で同様の効果を得ることができたことから, ECTの鎮痛効果に耐性を生じにくいことが示唆された. 以上より, ECT鎮痛効果は永続的ではないが, 1クール後数週間に1回施行する維持療法的ECT (continuation ECT: ECT-Cまたは maintenance ECT: ECT-M) を施行することで, 緩解維持できる可能性が示された. 対象に認めた抑うつ症状は疼痛の遷延化による2次的なものであり, 抑うつ症状の改善もECTの鎮痛効果による2次的産物であることが示唆された.<br>ECTは「痛み知覚」と「苦悩」の階層に働きかけるものであり,「侵害受容」,「痛み行動」には直接効果を示さないことから, その適応には痛みの多面的病態把握, すなわち生物-心理-社会的側面からの病態評価が必要となる.

1 0 0 0 OA RS3PE症候群

著者
折口 智樹 有馬 和彦 梅田 雅孝 川㞍 真也 古賀 智裕 岩本 直樹 一瀬 邦弘 玉井 慎美 中村 英樹 川上 純 塚田 敏昭 宮下 賜一郎 溝上 明成 岩永 希 古山 雅子 中島 好一 庄村 史子 荒武 弘一朗 荒牧 俊幸 植木 幸孝 江口 勝美 福田 孝昭
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-54, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
16

概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.
著者
梅田 雅孝 古賀 智裕 一瀬 邦弘 來留島 章太 高谷 亜由子 清水 俊匡 福井 翔一 西野 文子 川尻 慎也 岩本 直樹 平井 康子 玉井 慎美 中村 英樹 折口 智樹 川上 純
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.401a-401a, 2016

<p>  【症例】68歳女性.【主訴】呼吸困難.【現病歴】2014年12月より労作時呼吸困難あり4月上旬に間質性肺炎を指摘され前医入院.ステロイドパルス,経口プレドニゾロン(PSL)30mg/日,シクロスポリン(CyA)150mg/日で加療行うも呼吸不全が進行し6月上旬に当院転院となった.筋症状を欠くがGottron徴候,Vネックサイン,ショールサインを認めClinically amyopathic dermatomyositis(CADM)と診断した.胸部CTでは短期間で進行する非特異性間質性肺炎パターンを呈し,急速進行性間質性肺炎(RPILD)の合併を認めた.抗MDA5抗体陽性,フェリチン1556ng/mlと予後不良因子を有したため,シクロフォスファミド静注療法,ステロイドパルス,CyA200mg/日行うも転院19日目に肺胞出血が出現し,人工呼吸器管理となった.転院24日目には貧血,血小板低下,Cr上昇の進行に加え,ハプトグロビン低下,破砕赤血球出現あり血栓性微小血管障害(TMA)と診断した.TMAに対し,血漿交換療法を追加し多臓器不全に対して集学的加療行うも呼吸不全が進行し転院36日目に死亡退院となった.【考察】肺胞出血やTMAはまれながら皮膚筋炎に合併することが報告されている.本症例は血清フェリチン高値に加えトロンボモジュリン高値を認めており,自然免疫異常を介した血管内皮障害が肺胞出血やTMAの病態形成に関与した可能性が示唆された.CADM合併のRPILDにおいては加療中の肺胞出血やTMAにも注意を払う必要があると考えられた.</p>
著者
大蔵 健義 一瀬 邦弘 渡部 秀樹 瀬川 裕史 三ツ矢 和弘 榎本 英夫 林 雅敏 矢追 良正 Takeyoshi OHKURA Kunihiro ISSE Hideki WATABE Yushi SEGAWA Kazuhiro MITSUYA Hideo ENOMOTO Masatoshi HAYASHI Yoshimasa YAOI 獨協医科大学越谷病院産婦人科 東京都多摩老人医療センター精神科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Psychiatry Tokyo Metropolitan Tama Geriatric Hospital Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 = Acta obstetrica et gynaecologica Japonica (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.271-276, 1994-03-01
被引用文献数
4

更年期以後の婦人は, 種々な程度の物忘れを訴える。エストロゲンが女性の記憶機能に影響を与えるという報告がある。しかし, 女性の更年期に関連して年齢層別に記憶検査を行って, 記憶力低下があるかどうかを報告した文献はない。本研究は, 次の二つを主な目的とした。更年期及びその周辺婦人に関して, 1) 記憶力低下があるかどうか。2) もし記憶力低下があるとすると, それは, 卵巣からのエストロゲン分泌が減少する更年期開始の年齢層やエストロゲン分泌が消失する閉経期の年齢層と関係があるかどうか。1), 2) を明らかにするために, 獨協医科大学越谷病院産婦人科外来受診中でかつ通常の日常生活を送っている, 31~65歳の婦人200名について三宅式記銘力検査を行って検討した。200名を5歳ごとに年齢層で区分して, A~G群に分けた。A~F群は各群30名で, G群は20名であった。各群の記憶力は, 無関係対語3回目の正答数を代表値として, 分散分析後多重比較した。A群 (31~35歳) とB群 (36~40歳) の正答数 (平均±SD) は, それぞれ8.0±2.0, 8.2±1.7で, 有意差は認められなかった。この両群は, 残りのいずれの群よりも高値であった (p<0.01)。C群 (41~45歳) とD群 (46~50歳) の正答数は, それぞれ5.9±2.1, 5.6±2.4で, 両群間に有意差はなかった。E (51~55歳), F (56~60歳), G (61~65歳) の各群の正答数は,それぞれ4.5±2.4, 4.2±2.2, 3.3±1.6であった。C群は, E~Gの各群より有意に高かった (p<0.05)。D群は, F, Gの両群より有意に高かった (p<0.05)。E群はG群より有意に高かった (p<0.01)。以上をまとめると次のようになる。B群からC群に移行するところで記憶力低下は最大であった。更年期には, C群とE群で記憶力低下が認められた。前者は, 血中エストロゲンの周期的変化が減少ないし停止して, 更年期が開始する年齢層に一致していた。後者は, 閉経期の年齢層に一致していた。更年期以後も緩徐に記憶力低下が進行した。This study was designed to investigate memory function in climacteric and periclimacteric women who lived a normal, ordinary life. Two hundred women treated at the gynecological outpatient clinic of Koshigaya Hospital were divided into 7 groups: groups A (31~35yr), B (36~40yr), C (41~45yr), D (46~50yr), E (51~55yr), F (56~60yr) and G (61~65yr). Each group consisted of 30 women except group G (n=20). The memory function of each group was determined and the mean scores for 10 paired hard-associates after three trials of presentation were compared. The mean scores (±SD) for groups A and B were 8.0±2.0 and 8.2±1.7, respectively, which were not statistically different. The scores for both groups were significantly higher than those for the other groups (p<0.01). The mean scores for groups C and D were 5.9±2.1 and 5.6±2.4, respectively, which were not statistically different. The score for group C was significantly higher than those for groups E (4.5±2.4), F (4.2±2.2), and G (3.3±1.6) (p<0.05). The score for group D was significantly higher than those for groups F and G (p<0.05). The score for group E was significantly higher than that for group G (p<0.01). The decrease in memory function was the greatest in group C. In the climacterium, memory impairment was also observdd in group E. The former corresponds to the climacteric commencement age group where cyclic changes in serum estrogen levels decrease or cease, and the latter corresponds to the age group for menopause. Memory impairment progressed gradually in postclimacteric women.